『ヒプマイ』『ビバレン』『パラライ』……二次元コンテンツにおける“ファン投票/オーディション”システムの潮流
2017年9月に始動した音楽原作キャラクターラッププロジェクト『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』(以下、『ヒプマイ』)シリーズ初の映画化が発表された。その映画『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』は、2025年2月21日より全国の映画館にて公開される。
ラップバトルを題材とした音楽原作のメディアミックスプロジェクトである『ヒプマイ』は、「イケブクロ」「ヨコハマ」「シブヤ」「シンジュク」「オオサカ」「ナゴヤ」「中王区」の7つのディビジョンのチームがラップで激突する。そのキャラクターそれぞれがバックボーンを持ち、個性豊かなキャラクターたちも人気ながら、CVを担当する声優たちの驚愕のラップスキルがアニメ、ゲームファンだけでなく多くの人を圧倒するコンテンツでもある本コンテンツ。“ディビジョン・バトル”としてトーナメント方式のバトルが繰り広げられ、第1次LIVE投票、商品に付随する投票券を使った第2次CD投票、そしてVR BATTLEによる第3次VR投票を行い、第1回ディビジョン・ラップバトルではシンジュク・ディビジョンの麻天狼、第2回の開催ではシブヤ・ディビジョンのFling Posseが優勝した。
そんな投票で結果を出していくこの『ヒプマイ』の映画が話題になっている。なぜならこの映画は、劇場映画としては“日本初”の観客の投票によって物語が変わる“インタラクティブ映画”だからだ。上映中にスマホアプリを通じて観客によるリアルタイムでの投票が行われ、投票数の多かった選択肢に沿ってストーリーが展開していく。どのディビジョンが投票数を獲得するかによって、その日の、そのスクリーンの、その回の展開や結末が変わるのだ。そして、先述した映画がディビジョン・ラップバトルの第3回目のステージであることも明かされた。未来を勝ち取る『ヒプマイ』らしい展開の映画であり、自身の投票によって推しディビジョンの未来が決まるとあって、劇場に足を運ぶファンも気合いが入るだろう。
昨今“投票”で未来が決まるものに対して、熱心に投票をすることは“日常”となっているように思う。韓国発のリアルタイム投票型のオーディション番組は日本にも導入され、今や絶大な人気を誇るJO1やINIを生んだ『PRODUCE 101 JAPAN』シリーズをはじめ、海外で放送されるサバイバルオーディション番組でも日本からの投票は少なくないと聞く。最近では、このサバイバル番組のシステムを二次元プロジェクトへ取り入れるコンテンツも登場。それが『VS AMBIVALENZ』(バーサスアンビバレンツ/以下、『ビバレン』)だ。2021年9月に始まった二者択一の“密着型”アイドルオーディションプロジェクトである本作。伝説の芸能事務所・REISENプロダクションが7人組のアイドルグループ結成のためにオーディション・VS AMBIVALENZを開催。総勢13万人を超える志願者の中から選ばれた14人の候補生たちは1年間の共同生活を通じ、同じ担当カラーを託された2人が競い合いながら、ライバルよりも多くの支持を集めるべく切磋琢磨していく。
『ビバレン』は、公式YouTubeチャンネルで定期的に彼らのドキュメンタリードラマが更新され、彼らの日々の姿を見た後に24時間限定の投票時間がやってくるというシステム。“二者択一”を謳う本コンテンツということで、赤を担当するSUBARUとTAIYOのCVを担うのは土田玲央、また緑のJINTAROとCIONを小林千晃など、同じ色を担う2人のキャラクターを同一声優が演じて一人二役で表現し、各カラーの2人の内1人に投票していくことで、最終的に7人のアイドルグループが決定するという流れだ。2022年11月12日にデビューメンバーが決定し、XlamV(クランヴ)が発表となった3Dアニメーションによるライブも好評で、2025年5月には2ndライブが開催される。実際のサバイバル番組ではデビューを掴むことのできなかった人気メンバーがその後にグループを結成し、デビューすることも多々ある。REISENプロダクションからも、惜しくもXlamVになることのできなかったメンバーが4人組のfun4re、3人組のilluvistaとしてそれぞれデビューした。
リアルタイムの投票によって結果の責任を担う観衆の想い、自身の推しを輝ける未来へと導こうという熱意。サバイバル番組が持つ特徴と二次元アイドルコンテンツとを上手くリンクさせた本コンテンツは、 2ndシーズンとなる新たなオーディションを準備中とのこと。再び熱戦の火蓋が切られるのを、ファンは固唾を呑んで待ち構えている。