野田洋次郎、小田和正、幾田りら、Indigo la End、imase、乃紫……注目新譜6作をレビュー
毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回は野田洋次郎「PAIN KILLER」、小田和正「すべて去りがたき日々」、幾田りら「Sign」、Indigo la End「ラムネ」、imase「蜃気楼」、乃紫「踊れる街」の6作品をピックアップした。(編集部)
野田洋次郎「PAIN KILLER」
野田洋次郎(RADWIMPS)が、ソロ名義の初のオリジナルアルバム『WONDER BOY'S AKUMU CLUB』からの先行配信曲「PAIN KILLER」をリリース。奇妙な美しさをたたえたシンセ、柔らかい衝動と称したくなるキックを中心にしたトラックのなかで映し出されるのは、〈痛めた心で叫んでいる 歌が好きなのはもしかして〉という生々しい歌。彼自身の心情が描かれているはずなのだが、おそらくは野田自身もそれが何なのかわからない状態のままーー上手くまとめたり、整えたりせずーー曲になっているようなプリミティブさが伝わってくる。きれいに説明できなくても、それは確かに存在している。そんな“不確かな確信”こそがこの曲の核なのだろう。オリジナルキャラクター"AKUMU-KUN(アクムくん)"が自由に仮想空間を駆け巡るMVを含め、アルバムを象徴する楽曲だと思う。(森)
小田和正「すべて去りがたき日々」
小田和正の新曲「すべて去りがたき日々」は、明治安田企業のCMソングとして「風を待って」以来、約4年ぶりに書き下ろされた楽曲。美しく洗練されたギターのアンサンブル、クラシカルな弦楽器の響き、ふくよかな響きをたたえたハーモニーが溶け合うミディアムバラードだ。〈どんな時も 一人ではなかった/時はやさしく やさしく流れた〉というフレーズも心に残る。この4年間、我々はとても辛く、大変な時期を過ごした。でも、“君”がいてくれたおかげで、がんばって歩んでこられたーー。簡素な言葉で綴られた歌詞はいろいろな解釈が可能だが、これまでの日々をしっかりと肯定し、身近な人、大切な人との関係を見直させてくれる普遍的な歌だと思う。(森)
幾田りら「Sign」
YOASOBIの活動が世界的な規模に広がり、個人としても映画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』でanoとともに主役の声優を務めるなど、エンターテインメントのど真ん中で活躍し続けている幾田りら。幅広い才能を携えていることはとっくに証明済みだが、彼女の本質はやはり、リスナー一人ひとりの心に歌を届ける力なのだと、新曲「Sign」を聴いて改めて実感した。ABEMAのオリジナル連続ドラマ『透明なわたしたち』主題歌として彼女自身が書き下ろしたこの曲は、“居場所のなさ”や“孤独”をテーマにしたバラードナンバー。ゆっくりとしたリズムのなかで、触れた瞬間に壊れるようなメロディを丁寧に紡ぎ出し、未来への微かな希望をそっと差し出すーー。美しくも儚いボーカルにどっぷり浸ってほしい。(森)