SEKAI NO OWARI、Number_i、野田洋次郎、BREIMEN、Little Glee Monster、Eve……注目新譜6作をレビュー

 毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回はSEKAI NO OWARI「タイムマシン」、Number_i「FUJI」、野田洋次郎「なみしぐさ」、BREIMEN「ブレイクスルー」、Little Glee Monster「I Promise You」、Eve「インソムニア」の6作品をピックアップした。(編集部)

SEKAI NO OWARI「タイムマシン」

SEKAI NO OWARI「タイムマシン」

 “君”と出会ったことですべてが変わってしまった。こんなに苦しいんだったら、3年前のあの日に戻って、すべてなかったことにしたい。前作『scent of memory』以来、約2年半ぶりのオリジナルアルバム『Nautilus』(意味:オウムガイ)の先行配信曲「タイムマシン」は、聴き手によっていろいろな受け取り方ができる楽曲だ。おそらくもっともオーソドックスな解釈は、“好きすぎて苦しい恋愛から逃れたい”という切ないラブソング。だが、筆者としては、コロナと人との関係を強くイメージしてしまった。具体的で生々しい感情を反映させつつ、まるで神話のような雰囲気をまとった歌詞からは、Fukaseの表現が新たな領域に入ったことを感じ取ることができるはず。優しくて繊細なボーカルとクラシカルな手触りのピアノの響き合いにも注目してほしい。(森)

Number_i「FUJI」

Number_i「FUJI」

 1stシングル『GOAT』からの一曲。楽曲を手がけたのはPecori(ODD Foot Works)、SHUN(FIVE NEW OLD)、DJのNAKKIDだ。周囲のクリエイターが普段見せている先鋭性や遊び心もばっちりモノにする。そういうNumber_iのスタンスは最初の配信曲「GOAT」から感じられたが、日本一の山をタイトルに冠したこの曲はさらに攻めているし遊んでいる。〈てっぺんの景色 低い富士山〉とは、国内オンリーで満足する視座ではない、との意味だろう。連なる言葉のインパクト、ラップスキル、さらには〈I Feel 乗り込んだ飛行船の上から〉あたりで聴けるコミカルな歌い回しのヤバさ、最後のセリフの加え方など、どれも文句なし。カッコいい。(石井)

野田洋次郎「なみしぐさ」

野田洋次郎 - なみしぐさ [Audio]

 藤井道人監督のNetflix映画『パレード』の劇伴、主題歌「なみしぐさ」を野田洋次郎が担当。野田が藤井の作品に楽曲を提供するのは『余命10年』(音楽・主題歌「うるうびと」/RADWIMPS)に続いて2度目となる。楽曲の中心を担っているのは、野田をはじめとする人間の肉声。讃美歌やゴスペルを想起させるコーラスも相まって、人が人を思うことの強さ、切なさ、尊さを描いた映画『パレード』のテーマを美しく彩っている。特に心に残るのは〈君とならば どんな二人も 生きてみたい〉というフレーズ。“君”のすべてを肯定し、限りある生を共に過ごし、その先へと進んでいきたいーーそんな深くて大きな思いが、この一節には確かに宿っている。壮大なランドスケープを想起させるストリングス、楽曲の終盤で聴こえてくるハンドクラップの温かさも、この曲の普遍性につながっている。(森)

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