back number、ONE OK ROCK、野田洋次郎、いきものがかり、ゆず、ヨルシカ……注目新譜6作をレビュー
毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回はback number「新しい恋人達に」、ONE OK ROCK「Delusion:All」、野田洋次郎「LAST LOVE LETTER」、いきものがかり「Challenger」、ゆず「伏線回収」、ヨルシカ「忘れてください」の6作品をピックアップした。(編集部)
back number「新しい恋人達に」
やはりback numberは、心の底から信頼できるバンドだ。新曲「新しい恋人達に」を聴いて、率直にそう思った。家族の物語をテーマにしたドラマ『海のはじまり』(フジテレビ系)主題歌として制作されたこの曲で清水依与吏(Vo/Gt)は、驚くほど正直に自らの内側を表現しているように感じる。主人公は、誰にも言えない思いを抱えた〈僕〉。これまでに出会ってきた大切な人々、そして、未来に進もうとする〈君〉に思いを馳せる〈僕〉にはおそらく清水自身が投影されているようで、それを受け取った我々は、それぞれにとっての大事な人や人生を思い起こさずにはいられない。自分自身をさらけ出し、「俺はこうだよ。あなたはどう?」と問いかけられているような感覚こそがこの曲の強みであり、このバンドの求心力につながっているのだと思う。プロデュースは小林武史。生々しいバンドサウンドと深みのある弦とのコントラストも素晴らしい。(森)
ONE OK ROCK「Delusion:All」
映画『キングダム 大将軍の帰還』主題歌としての書き下ろし新曲。大人気シリーズとなった映画『キングダム』は、2019年公開の一作目もONE OK ROCKが主題歌を担当しており、壮大な戦いの物語とスケールの大きなメロディの相性のよさはすでに保証済みである。今回の「Delusion:All」はゴリゴリに歪んだギターから始まる久々のラウドロックで、彼らに爆発力を求めるファンが歓喜しそうな仕上がり。ただ、熱いバンドサウンドだけでゴリ押ししないところがアレンジの現代性で、イントロから後ろで静かに鳴っている同期のシンセが随所で“静”の世界を演出する。引くところは大胆に引き、爆発させるところで大爆発。バンドのダイナミズムを極めた一曲。(石井)
野田洋次郎「LAST LOVE LETTER」
ソロ名義として初のオリジナルアルバム『WONDER BOY'S AKUMU CLUB』からの先行シングル。映画などの他の作品とのコラボレーションも多いRADWIMPSとは違う場所で、他者のことを意識せず、どこまでも自由に音と言葉を紡いだとしたら、どんな音楽が生まれるのか? そんな試行錯誤のなかで制作されたアルバムを象徴する楽曲の一つが「LAST LOVE LETTER」なのだろう。シンプルで有機的なドラム、ベース、ギター、鍵盤によるトラックのなかでゆったりと泳ぐようにリリックを描くこの曲は、〈まだ知ることのない 君に唄う歌があるよ〉というラインから始まる。圧倒的な知名度と巨大なファンダムを持つ野田洋次郎は、今もなお、まだ出会ってない誰かに向かって歌を作り続けている。その根底には「まだ知らない自分と出会いたい」という切なる願いも込められているのだろう。(森)