Crossfaith、ニューアルバム『AЯK』を経て第2章開幕へ 現在地と“バンド史上最大のミッション”を語る

Crossfaith、新フェーズで放つ『AЯK』

 Crossfaithが、新体制初となるニューアルバム『AЯK』をリリースした。今作は、2018年リリースの『EX_MACHINA』以来約6年ぶりのアルバム。バンドの活動休止、メンバーの脱退、そして新メンバーの加入――まさにこの数年で進化を遂げたCrossfaithの新たなチャプターを告げる作品だ。この6年の歩み、新体制への変動、そして来年2月に行われる“バンド史上最大のミッション”である幕張メッセでのワンマンライブ&主催フェスについて、メンバー全員にじっくり語ってもらった。(編集部)

Daikiの加入、6年ぶりアルバム――Crossfaithに吹き込んだ新たな風と第2章の開幕

Crossfaith(撮影=林将平)

――最初にちょっと余談になりますが、Tatsuyaさんがドラムを叩く姿をまさか『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)で目にする日が来るとは思いませんでした。

Koie(Vo):ほんまですよ。

Tatsuya(Dr):まさか出られる日が来るなんて、自分でもびっくりしました。すべてYOASOBIのおかげです。

Kazuki(Gt):『コーチェラ』(『Coachella Valley Music and Arts Festival 2024』)にも行ったもんな(TatsuyaはYOASOBIのサポートメンバーとして出演)。

Teru(Program/Vision):完全に先越されてます(笑)。

Tatsuya:今後Crossfaithが出るための偵察ということで、先に行ってきました(笑)。

――ジャンルの異なるアーティストのもとでドラムを叩くことで、Crossfaithに持ち帰ることのできたものも多かったのではないでしょうか。

Tatsuya:それはめちゃくちゃ大きくて。YOASOBIをはじめいろんなアーティストと一緒にできることとかもそうだし、それこそ音楽番組だったり、いろんな経験を踏むことで、サポートしたアーティストごとにベストを尽くしていくと、気づけば自分に今までなかったスキルが身についていたりして、そういうことが自然と自分のバンドでも出せるようになっていたし。今回のCrossfaithのアルバムでも、曲作りの段階からこれまでとは違った角度からアプローチしていくとか、そういう引き出しとか視野が広がっていることを実感できたので、すごくいい経験になったと思います。

――『紅白』も『コーチェラ』の生中継も、すごく誇らしい気持ちで観ていましたよ。さて、Crossfaithのニューアルバム『AЯK』が完成したわけですが、前作『EX_MACHINA』(2018年)から約6年ぶりという事実にまず驚かされます。

Teru:そうですよね、U2ばりのインターバルや。

――もちろん、2020年以降はコロナ禍で足止めされたところもあったと思いますが、バンドとしてはそれと前後して自主レーベル・Species Inc.の立ち上げやライブ活動休止と再始動、そしてメンバーチェンジなどさまざまな出来事がありました。なかでもいちばん大きかったのは、2023年6月にDaikiさんをサポートメンバーに迎えてライブ活動を再開させたことではないでしょうか。

Teru:そうですね。2022年9月にワールドツアーをキャンセルして、活動休止を発表して、各々いろんな時間を過ごしていくなかで「もう一度やるでしょ?」となった時に、ベースがいない状態でライブをするという不安もありました。でも、やっぱりライブを目標に置くことによってメンタルもフィジカルも、自然にそこに合わせて日々過ごしていくような状態になっていって。実際、SHIBUYA CYCLONEでの復活ライブの半年近く前には「もうやろうか」って動き出してました。

Koie:そのタイミングを逃したらもう一生やらないんじゃないかなと、ふわっとよぎったりもして。それぐらいの極限状態にいたので、「ライブをすることによってよくなっていくって信じよう」「ライブに助けてもらおう」みたいな感覚でしたね。で、実際その日からさらに前向きにもなったし。大きな決断だったけど、今となっては正解だったと思います。

Kazuki:ライブを目標にしつつも、実際は当日になってみないとわからないことも多いじゃないですか。だから、蓋を開けるまではこの先どうなるかわからなかったし、だからこそこのメンバーで一丸となって当日を迎えようという気持ちでした。

Tatsuya:活動休止に入ってから、いつまたライブをするかも一回も考えずに休憩を取ろうと考えていたんですけど、1カ月もしたら「やっぱりライブしたいよな?」と思うようになって。特にCrossfaithはライブでいちばん生を実感できるから、余計にそう思っちゃうわけです。さっきTeruも言っていたように不安要素もあったけれど、やっぱりやってみないとわからないわけで。それに加えて、音源もしっかり作ろうという目標もあったので、このアルバムには「じゃあライブで爆発する時はどういう曲がいいだろうか?」みたいなことを自分たちでイメージして作れた曲が多いのかな。

――DaikiさんはHER NAME IN BLOOD(以下、ハーネーム)が2021年に解散して以降、Knosisなどにも参加していましたが、なぜ声をかけたのでしょう?

Teru:Daikiのことはもちろんハーネームの頃から知っていましたし、10年以上前からともに戦ってきた仲間でしたし。それに、Daikiがどれだけ素晴らしいギタリストかということも昔から知っていたしね。ハーネームが解散してから、「まだまだギターやるっしょ!」というDaikiの強い意志もSNSを通じてひしひしと感じていたし、そのタイミングで俺たちもライブでギターを弾いてくれる人を探していた。これはもう必然というか、運命的なものを感じて、Daikiしかいないという思いで声をかけました。

Daiki(Gt):声がかかる前は「もちろんまたバンドをやりたいけど、なかなかやれない」という状況に結構モヤモヤしていて。でも、ギターは好きだし音楽を作るのも好きだから、たまにお仕事をもらってやっていたんですけど、それでもやっぱり「バンドをやりたい」っていう気持ちがずっと燻っていたんです。いつまでもこんな状況でいられないと思って、本当に音楽から離れようかと悩んだ時期もあったんですけど、そうやって葛藤している時期にCrossfaithでギターを弾いてくれないかと言われて。単純にめちゃめちゃ嬉しかったし、昔から知っている仲だからどういうサウンドを求めているかもわかっているし、何よりずっと一緒に戦ってきた仲間だったから、「よっしゃ任せろ!」みたいな気持ちで引き受けました。

――Daikiさんが参加すると知った時、僕は最適だと思いました。HER NAME IN BLOODでDaikiさんがどんなギターを弾いてきたかも知っていたし、何より近しいシーンから出発していろんな景色を一緒に見てきた盟友ですもんね。

Teru:ですよね! だから、そのシーンを知っている人からするとめちゃめちゃアツいと思うんですよ。

Kazuki:そうなんだよね。しかも、過去にCrossfaithとハーネームが対バンした時に、Daikiはんが「Jägerbomb」を一緒に弾いてくれたことがあって。

Daiki:ああ、あったね。

Kazuki:そのイメージも鮮明に残っていたので、「絶対Daikiはんが適任でしょ!」と思って、それで誘ったというのもあります。

――正式メンバーとして迎える決断をしたタイミングは?

Kazuki:やっぱり、曲作りにも参加してくれたことが大きくて。一緒に合宿して曲を作っていくなかで、フィーリングやグルーヴもばっちりハマって最高やったんで、「これは!」と。で、告った感じですね(笑)。

Daiki:完全に告られました(笑)。

Kazuki:人間性も含めてライブに関してはもう間違いなかったし、制作に参加してもらって曲作りのバイブスも完璧やったんで。むしろ、この人を今逃してしまったら、この先ここまでCrossfaithに適任なギタリストに出会えないんじゃないかと思ったくらい。自分もギタリストですけど、フィーリングがここまで合う人ってそうはいませんし。なので、俺からメンバーに「Daikiはんをメンバーに入れたい」と伝えて。そのあと、ごはんを食べている時にTeruがDaikiはんに「メンバーにならへん?」って言った感じですね。

Daiki:サポートとして何度も一緒のステージに立ってきたし、ライブのたびにメンバーたちのエネルギーや爆発力がめちゃめちゃ気持ちよく感じられて。曲作りに関しても、自分は今まで電子音が入ったバンドを経験したことがなかったので、それもすごく新鮮だったし、いろんな考え方を目の当たりにできたことがすごく楽しかった。だから、告られても断る理由がないし、「もっと一緒にやりたいな」と純粋に思いました。

Teru:去年の10月にDaikiに告ったんですけど、その次の次の日にはDaikiはKnosisでヨーロッパツアーに出てしまうし、ツアーから戻った翌日ぐらいにはCrossfaithのギターレコーディングをしないといけないスケジュールだったので、俺たちのなかで「レコーディングが始まるまでには絶対に言おうぜ」という思いがあったんです。そこがある種、けじめ――という言い方が合ってるかわからないですけど――そのへんをはっきりさせたかったというのが大きかったです。

――ライブではこれまでもギター2本という編成はありましたが、曲作りやレコーディングでギタリストがふたりいる形はこれが初めて。Kazukiさんは、今回臨んでみて手応えはいかがでしたか?

Kazuki:Daikiはんは昔からシーンの近いところにいたので、グルーヴとかフィーリングも1言ったら10わかるみたいな関係値も最初からすぐに築けて。制作の幅はかなり広がったと思うし、ゴールに行き着くまでの時間もめちゃくちゃ短縮された。セッションでもCrossfaithとしても成り立つようなギターを弾いてくれるので、ここ最近ではいちばんバンドとしてのグルーヴが作りやすかったですし、そういう生々しさはアルバムにもめちゃくちゃ反映されていると思います。

Teru:しかも、俺たちとシーンは近いところでやっていたけど、音楽的なバックボーンは近いようでちょっと違うところもあるので、そこがすごい新鮮だった。Crossfaithにも新たなエッセンスが加わったし、めちゃめちゃパワーアップしたなと素直に感じます。

Tatsuya:新しい風を呼び込んでくれたよね。

――実際、前作『EX_MACHINA』からの進化も十分に伝わりましたし、この6年間に発表してきた楽曲群での経験や実験がしっかりブラッシュアップされて、2024年のサウンドとして実を結んでいる。かつ、とてもコンパクトで無駄のない形に仕上がっていて、刺激的なんだけど聴きやすく、オープニングからラストまでがあっという間でした。

Teru:いやあ、嬉しいです。俺たち自身も最高傑作なんじゃないかなっていう手応えはありますし。

――実際のところ、この6年の間にアルバムを作ろうと思ったタイミングはほかにもあったのかなと思うんですが。

Kazuki:なくはなかったんですけど……。

Koie:うん。とはいえ、記憶するなかでは「ここ!」っていう絶対的な瞬間はなかったかな。『SPECIES EP』(2020年)以降はコロナに入ってしまったので、たとえば「RedZone」みたいにタイアップのために作った曲や、「Feel Alive」や「Slave of Chaos」みたいにコロナ禍において自分たちのなかで使命感を感じながら作った曲もありましたけど、今回の『AЯK』は「自分たちのために作った」という思いが強くて。書きたいこと、やりたいことが溜まりまくっていたので、それをいかに消化するかということしか考えていなかった。だから、こういうストレートな作品ができたのかなと思います。

――歌詞に関しても、現実世界で起きている事象を歌ったものや、バーチャルな世界を取り扱ったものなど、今回はテーマが多岐にわたっています。

Koie:曲ごとに舞台は違ったりするんですけど、基本的には自分たちが作り始めて、その時期に感じていたことをそのまま反映させた感じですかね。だから、その時点での今のCrossfaithの状況や自分の状況を歌ったというか。なかにはFPS(First person shooter)みたいな世界観を表現したものもありますけど、全体的に前向きな歌詞が多いなと自分でも思っていて。語感であったり、歌詞の単語選びには時間をかけたんですけど、内容はスッと出てきたものが多いですね。

Teru:「ZERO」なんて、コイちゃん(Koie)が言った「今のCrossfaithの状況や自分の状況」って部分がいちばん爆発していて、バンドの意思表明や声明という感覚があるし。今回のアルバムは、そういう自分たちの気持ちをポジティブな歌詞に乗っけているものが多いんじゃないかな。

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