Crossfaith、ニューアルバム『AЯK』を経て第2章開幕へ 現在地と“バンド史上最大のミッション”を語る

Crossfaith、新フェーズで放つ『AЯK』

SiM・MAH、WARGASM、Bobby Wolfgangとのコラボレーションが生んだ化学反応

Crossfaith(撮影=林将平)

――このアルバムから最初に配信されたのが、「ZERO」。オープニングSE「The Final Call」に続いてこの曲からアルバムはスタートするわけですが、この曲を最初に聴いた時は「これを待っていた! こういうCrossfaithが聴きたかった!」と興奮しました。

Teru:ありがとうございます。大阪の堺にある地元のスタジオで、初めてDaikiと曲作りのセッションをした初日にできたのが「ZERO」。いざアルバムを作り始めると、1曲目のトラックって結構難しいんですよ。意識的に1曲目っぽい曲を作ろうと考えたりすることが多いんですけど、今回の「ZERO」に関してはセッション初日に自然とできあがって。

Daiki:合宿が始まっていろいろ弾いていたんですけど、そうしたらメンバーが「そのリフかっこいい!」「それそれ!」みたいな感じで喜んでくれて。「ZERO」もそんな感じだったよね?

Kazuki:うんうん。

Daiki:最近はパソコンと向かい合って曲を作る期間が長かったんですけど、こうやってセッションで曲を作ること自体、それこそバンドを始めたての頃以来で、本当に原始的な作り方だったんです。

Crossfaith - 'ZERO'

Teru:俺らもセッションで曲を作っていくこと自体がすごく久しぶりやったんで、あらためてロックバンドとしてめちゃくちゃ理にかなってるなと。

Daiki:そう。理にかなってるし、みんなが向かい合って演奏してひとつになる、その勢いがすごく新鮮で。

Teru:怒涛の流れで形になったよな。

Kazuki:セッションの前日、コイちゃんと飲みながら「ジャージークラブのビートを取り入れた曲作りたいね」なんていう話をしてたんですけど、「そこにメタルリフを乗せたらいいやん、明日スタジオで試してみよう」ってことになって。

Daiki:で、俺が試してみたら「それ!」って言われて。それからどんどん「次、こういうのがよくない?」と曲が完成に近づいていったんです。

Teru:しかも、そのスタジオにLed Zeppelinのポスターが貼ってあって、「この曲、イントロに『移民の歌(Immigrant Song)』みたいなのがあっても合いそうやな、もうひとエッセンス加えたいな」ということになり、試しにそれっぽい感じで歌ってみたらめっちゃハマったという。いろいろ導かれましたね。

Tatsuya:でも、この曲のドラムはここに行き着くまでに結構悩んで、いろいろ試したんですよ。実際にスタジオで合わせながら展開させていったんですけど、この疾走感の強い曲調に今までのCrossfaithになかったようなビート感も入れたいということで、最終的にこのスピード感とハードな感じがミックスしたドラムが完成しました。

Teru:サビのリズムをどうするか、かなり悩んだもんな。

Tatsuya:レコーディングギリギリまでね。

Daiki:サビが一瞬縦ノリになりそうになったことがあって。ちょうどヨーロッパツアーのバスの中で「こういうバージョンどう?」みたいなデモを受け取ったんですけど、暗いバスのなかで「これはこれでいいけど、ダメだ! 絶対“疾走”だ!」って(笑)。

Koie:そういう選択の連続で、ここまで勢いのある作品になったわけです。

――なるほど。新生Crossfaithの1曲目として、非常に説得力のある仕上がりだと思います。今作はラウドでメタリック、かつダンサブルな楽曲を軸にしつつも、アルバム後半では異色のスローナンバーも用意されており、全体を通しての緩急がしっかりつけられている。そこが聴きやすさにつながっているのかなと思いました。

Teru:そうかもしれないですね。アルバムを本格的に作り出したのが2023年の8月くらいなんですけど、それ以前にも各々曲を作ったりはしていて。やっぱり活動休止中だったこともあってか、その時期に書いたものって結構暗い曲が多くて。

Koie:あと、怖い曲とかね(笑)。

Teru:そうそう。もちろんかっこいいんやけどね。でも、Daikiと一緒にスタジオに入って「ZERO」が完成した。以降は1日に一曲、何かしらデモができるくらいの勢いが出てきて。活動休止中に書いた曲と「ZERO」以降に作った曲を比べると、持っている空気感とかエネルギーが全然違うんですよ。だから、自ずと「ZERO」以前に作った曲を中心にアルバムは構成されることになったんですけど、意図していろんな曲入れようとは思っていなくて。Daikiも言っていたように、バンドでもう一回曲を作れるみたいな喜びが、Crossfaithとしての未来が見えない状況を経たからこそ俺たちにもあった。そういったエネルギーが放出された結果、いろんなタイプの曲が揃い、かつ各々の気持ちが一緒だったからこそ自然とアルバムとしての統一感が生まれたのかなと思います。

――意図して「こういう曲がほしい」というものを起点にした作り方じゃなくて、どんどん湧き出てくるものを形にして、結果として並べてみたらこういうアルバムになったと。

Teru:そうですね。そういう意味では、SiMのMAHくんをフィーチャーした「Warriors feat. MAH」は「こういう曲がほしい!」という意思のもとに作った曲かもしれないです。活動を再開してすぐ、SiMに『DEAD POP FESTiVAL 2023 - 解 -』に誘ってもらったんですけど、あの時は会場にいるバンドや仲間たちがすごく心強い言葉をかけてくれて。そこでふと、「MAHくんは付き合いが長いけど、“Crossfaith feat. MAH”名義で曲を作ったことがなかったな」と思って、『DEAD POP FESTiVAL』の翌日に「Warriors feat. MAH」の雛形となるデモを作って、「これは絶対にMAHくんに歌ってほしい」と送ったんです。そうしたら、間違いないボーカルを乗っけてきてくれて。嬉しかったですね。これはちょっとした目標なんですけど、今年の『DEAD POP FESTiVAL 2024』でこの曲をMAHくんと一緒にやることが、この「Warriors feat. MAH」にとってのゴールです。

Crossfaith -Warriors feat. MAH from SiM (Official Lyric Video)

――MAHさん以外にも、本作にはCrossfaithらしい国際色豊かなゲストアーティストが複数参加しています。「God Speed feat. WARGASM」ではイギリスのロックデュオ WARGASMとのコラボも実現。彼らが今年1月に来日した際には、「Bang Ya Head」でKoieさんとTeruさんが共演したばかりですが、それがコラボへの伏線だったわけですね。

Koie:そうです。WARGASMは最初に聴いた時から、通ってきたルーツもそうやし、やりたいこともわりと共通する部分が多いなと思っていて、いつか一緒にやりたいなとずっと言っていたんです。実は、あの1月のライブの前日にMVを撮影したんですよ。朝の4時、5時から撮影を始めたんですけど、サム(・マトロック)もミルキー(・ウェイ)も嫌な顔をひとつせず楽しんでくれて。撮影の待ち時間にはアレンジやミックスについても話し合うことができて、すごく充実したコラボができたなと。

Teru:サムと一緒に曲のプログラミングどうするとか、作曲の部分に関しても楽屋で話ができたのもすごく良かったし。

Koie:ちなみに、俺らはその前日に「ZERO」のMVも撮影したので、2日連続だったんですよ(笑)。

Tatsuya:なかなかタフでした(笑)。

Koie:でも、みんなで和気藹々と過ごせましたよ。

Crossfaith - God Speed feat. WARGASM

――この曲はミルキーの声がいいアクセントになっていますよね。

Koie:そうですね。最初はイントロの部分なんかはTeruが歌っていて。

Teru:高いほうな。

Koie:そうそう。ミルキーも「あの声に近づけたい」って言って頑張ってくれて。ミルキーはパンキッシュな声なので、絶対に合うやろなと思ってました。あと、アレンジもあえてブレイクダウンを入れずにギターソロに行くっていう。誰かがYouTubeのコメントにも書いてたけど、「ブレイクダウンだけじゃないよな」って。

Kazuki:狙い通りやな。

Daiki:間違いない。

――Bobby Wolfgangが参加した「L.A.M.N feat. Bobby Wolfgang」は歌詞がすごく印象的でした。

Koie:これはほんまに愚痴じゃないですけど……〈Look at me now〉っていうフレーズがまず最初にあって(タイトルの「L.A.M.N」は「Look At Me Now」を意味する)。で、フックには絶対〈Look at me now〉を使いたいと思って、そこから広げていきました。最近はルッキズムとかポリコレとかへの論争がエグい感じになっていて、SNSとか見ると本当にトゥーマッチだなとずっと思っていて。実際にそういう状況下にある人たちのことを考えていないから、そんなこと言えるんやろうなと思って、「うるさ!」って。もちろんポリコレはすごく大事だと思うんですけど、それを関係ない人が武器にして、誰かを攻撃することは決して許されない。それやったら「完璧な奴なんておらんのやし、もう自分が壊れている」ってことも認める、というような曲ですね。

Teru:最近多いよな、ネジが1本抜けてるような奴らが。

Koie:そうやんな。そんな曲で、ボビーはすごくいいバイブスのボーカルフローを披露してくれました。最初にイメージしていたところから、いい意味でガラッと変えてくれたというか。1番はゆっくり始まって、2番はスピーディーなところでしっかり展開をつけてくれた。彼はイギリスのアーティストということもあって、ベースミュージックからすごく影響を受けているので、アンダードッグ感というか、その雰囲気もしっかり出たんじゃないかなと思います。

Crossfaith - L.A.M.N feat. Bobby Wolfgang (Official Visualizer)

――この曲はギターもめちゃくちゃかっこいいですよね。

Daiki:ですよね。

全員:(笑)。

Daiki:ギャインってワーミー踏んだり曲のなかでキーをガッと下げたり、小ワザがてんこ盛りなので、ギタリストが聴いたらかなり楽しいと思いますよ。

――先ほどKoieさんが「全体的に前向きな歌詞が多い」とおっしゃっていましたが、そんななかでも「DV;MM¥ SY5T3M...」が放つダークさはアルバムのなかでも異彩を放っています。

Koie:そうですね、この曲の歌詞はほかの楽曲とは真逆というか。コロナ禍と活休を経ての状況を吐き出さずにはいられなかったし、「あんな経験をしておいて全部ポジティブなのはリアルなのか?」とも思ってしまったんです。最初はポジティブなものにしようと思って作っていたんですけど、どうしてもハマらなくて、自分のなかで視点を変えてみようと。で、俺たちは『エヴァ』(アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』)からも多大な影響を受けているので、そのエッセンスを入れて、タイトルも「DV;MM¥ SY5T3M...」(ダミー・システム)やし、だったらそこに登場するふたりのキャラクターを軸に曲のストーリーを展開させようと考えて。そうしたら自分が言いたいこともうまくハマったし、曲としての整合性も取れた。ようやくゴールに至った感じです。

――曲中、『エヴァ』に登場する印象的なセリフもフィーチャーされていますが、最初に聴いた時はドキッとしました。そして、終盤に登場するメロウなスローナンバー「Night Waves」と「Afterglow」。これもまた挑戦的ですよね。

Teru:そうですね。「Night Waves」は曲作りで合宿していた時に、コイちゃんが作ってきた曲で。

Koie:アコギをパーっと弾いてメロディを乗せたらいい感じだったので、デモでも自分で打ち込んでみたりして。それをTeruに聴かせたら「これいいやん」と言ってくれて。

Teru:今までにないボーカルの表現方法にもびっくりしたんですよ。こんなセクシーなコイちゃんは初めてやったので、これは曲に残したいなと。それで知り合いのトラックメーカーの方に協力してもらって、かなり凝ったアレンジになりました。Crossfaithとしてこういう曲ができたことで、今後の作曲の幅もどんどん広がっていくんじゃないかという気がします。

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