JUBEE × AA= 上田剛士、世代を超えたクロスオーバー 自由な刺激を混ぜ合ったコラボの背景

JUBEE × AA= 上田剛士 対談

 ロックのフィーリングを大胆に取り入れ、サウンドや共演相手も含めて「現代のミクスチャー」を標榜するラッパー JUBEE。彼のニューシングルは、敬愛するAA=の名曲「PICK UP THE PIECES」のカバー&サンプリングである。トラックは上田剛士本人の手によるもので、半分は直球のカバー、もう半分は猛烈にハードなリアレンジ。そこに自作のラップをかますJUBEEの、愛に溢れたオマージュも実に強烈。今の時代だから生まれた、この二人にしか作り得ない、非常に力強い楽曲が誕生している。YouTubeで公開された二人の対談を、リアルサウンドでは未公開トークも含めて文章化。ここでしか読めないオリジナルクロスオーバー談義もお楽しみください。(石井恵梨子)

JUBEE × TAKESHI UEDA (AA=) - PICK UP THE PIECES (Mass Infection Mix) CROSS TALK

「僕の音楽性を剛士さんが作ってくれた」(JUBEE)

――まずお二人の出会いからお聞きします。JUBEEさんは、上田剛士という存在をどのように見ていたんですか?

JUBEE:もう僕からしたら神みたいな感じなんですけど(笑)。最初は大学生の時に、ステーキ屋でバイトしてて。

上田剛士(以下、上田):ステーキ屋?

JUBEE:はい、地元のステーキ屋。個人店だから有線とかも自由にかけられるんですよ。営業の時はメキシコの民謡が流れてるんですけど、店終わってシャッター閉めて、賄いを食うってなったら急にMAD(THE MAD CAPSULE MARKETS)が流れる感じで。The Prodigyとか(Hed) P.E.とかが好きな店長だったから。「この曲なんすか?」みたいな感じで最初教えてもらって。

上田:その人に教えてもらったんだ。ステーキ屋さんの店長、ありがたいな。

JUBEE:そこからガバってジャンルを知ったり、どんどん掘ってハードコアな感じが好きになっていって。だから僕の音楽性を剛士さんが作ってくれた。そういう存在です。

JUBEE

――剛士さんから見たラッパー JUBEEは、どう見えました?

上田:俺は最初、仕事で知り合った。他の人の曲を作る時に、ラップパートがあって。詞を作ってくれたのはJUN INAGAWA(『魔法少女マジカルデストロイヤーズ』原案。アニメ主題歌を上田が作曲・編曲・プロデュースした)なんだけど、彼と仲良いんだよね?

JUBEE:はい。

上田:それで「いいラッパーがいる。MAD好きなヤツがいるんです」みたいな感じで紹介されて。だったらその彼にお願いしてみようって。

JUBEE:あぁ、JUNからのお薦めだったんですね。JUNとはMADつながりで仲良くなって、二人で中野ブロードウェイに遊びに行ったんですよね。中野駅で待ち合わせしたら、いきなり「剛士さんの曲で僕のアニメやることになった」って言われて。その時はまさか僕も誘ってもらえると思ってなかったから「うわ、すごいね、ヤバいね!」って話をしてたの、今思い出しました。

上田:中野ブロードウェイで。アツいね(笑)。でも知り合ったのはそういう感じ。最初に出会った時から一緒に制作してる。

JUBEE:あの時はただただ緊張したっすね。やっぱりかなり影響受けてるんで、「自分の書いたこの歌詞で大丈夫かな、乗せ方も大丈夫かな?」とか思って。それで提出させてもらったんですけど、でも全然……。

上田:一発OKです。

――そこから、去年の9月には恵比寿LIQUIDROOMで初の共演がありました。

JUBEE:そう。僕はAFJBってバンドをやりだして、『REDLINE TOUR 2023』ってイベントで、Crystal LakeとAA=と僕らだったんです。剛士さんと同じステージに立つの、夢のひとつ、目標のひとつだったから。あのLIQUIDROOMはすごく思い出に残ってる。ずっと興奮してましたね。

上田剛士

――ラッパーでこれだけ剛士さんの影響を受けているって、珍しいですよね。

上田:不思議だよね。あんまりラッパーとかヒップホップの世界の人って感じがしない。バンドの、一番そっち側寄りにいる人間、みたいな感じで自分は捉えてる。まぁヒップホップの世界でこっち側寄り、なのかもしれないけど。一緒にライブやった時も、JUBEEがバンドをやってるの、全然違和感なかったし。

JUBEE:最初にAFJBやりだした時、周りからはバンドにラッパーが参加してる感じに見えてたっぽくて。最初はまずラッパーとして見られてた。だんだんやっていくうちに「やっとバンドマンになったね」って、みんなに認めてもらえるようになってきました。

上田:普段1MC、1DJでやってるんだもんね。そういう意味でもたまにバンドでやると、たまらんよね?

JUBEE:全然違いますね。楽しい。今結構そこにハマって、バンドのライブの中毒みたいになってる。

上田:そういう意味では自分も、彼に曲を作る時にはあんまり遠慮なくこっちのノリが出せる。

「この世代間がないと出せないもの」(上田)

――JUBEEの新曲「PICK UP THE PIECES (Mass Infection Mix)」ですね。コラボが決まったのはどんな経緯ですか?

JUBEE:あ、もうこれは完全に僕から、剛士さんに急に連絡した感じです。

上田:急に連絡きた(笑)。

JUBEE:ヒップホップのフィールドの中で、モッシュやダイブを起こしたり、シンガロングさせたりしたい。それは自分の中のひとつの目標としてあるんです。で、やっぱりAA=のライブを観てても「PICK UP THE PIECES」は曲としての力強さがすごく印象に残ってて。サビのメロディも気持ちいいし、これを僕の中に落とし込んでみたらどうなんだろうってずっと想像してて。で、「ワンチャン、カバーさせてもらえないかな?」って剛士さんに恐る恐るLINEして。直談判で聞いたら、快くOKしていただいて。

上田:いや、面白いこと考えるなと思った。「新しい曲を作ってくれ」とかはいろんな人に言われるけど、「この曲カバーしたい」って言われたこと、あんまりないんで。しかもそれを自分でアレンジするって、なかなかない機会だから。

JUBEE:そう、最初から「ビートもお願いします、踊れる感じにしてください」ってお伝えしたんですね。

――制作の分担はどんな感じですか?

JUBEE:まず剛士さんからラフのビートをいただいて。サビ自体はカバーだから、そのまま自分が歌い直して。途中の激しくなるラップのセクションは自分で新しく、原曲から得られたインスピレーションを元に歌詞を書いて。そういう感じで仕上げていきましたね。僕としては、あんまりバンドバンドしたものよりは、踊れる感じにできたら、ヒップホップのお客さんも聴きやすいし、受け入れてくれるかなと思ってたんで。

上田:ただ……踊れるかどうかは、ちょっとわからない。

JUBEE:あははは。

上田:新しくアレンジしたところは、前の世界観をぶっ壊すぐらいの勢いで行きたいなと思ってた。それこそさっき言ったように、ハードコア、テクノとかガバとかも好きだって聞いてたから「そういうノリを出したらこいつどうラップしてくんのかな?」って。それでちょっとぶつけてみた。

JUBEE:そうなんですね。ちゃんとそこを乗り越えられてよかった。

――ラップのセクションには過去へのオマージュがありますね。聴く人が聴けばわかる「GAGA LIFE.」の引用。

JUBEE:はい。僕そういうの好きで。ヒップホップでサンプリングは当然だし、二人の関係性を知ってる人が聴いてブチ上がってくれる箇所を絶対に作りたい。これは別ですけど、前にJESSE(RIZE/The BONEZ)さんとやった時も、JESSEさんの歌詞をあえて入れたり。そういう意味で、僕はMADでいうと「GAGA LIFE.」がめっちゃ好きだったんで、メロディを引用させてもらいましたね。

上田:「おや?」って感じだった。「GAGA LIFE.」だっていうのは最初そこまでわかんなくて。なんかどっかで聴いたことあるな、みたいな感じ。

JUBEE:はははは!

上田:まぁ、俺のこととかをリスペクトしてくれてこれをやってるんだろうな、っていうのはわかった。

JUBEE:僕はずっとあのディストーションに憧れてて。ディストーションのボーカルの感じ。普段ミックスしてもらうヒップホップの人たちに、リファレンスとして剛士さんの曲を聴かせて「これっぽくやってほしい」って言っても、あんまりそういう感じにはならないんですよ。でも今回は剛士さんに直接お願いできるから。「あの感じのディストーションをかけてほしいです」って言えて。個人的にアガりましたね。

上田:音歪ませるの、大好きなんで。

JUBEE:僕その歪みで育ってるんで。本物の歪みをかけてもらった、みたいな。

上田:なかなかあそこまでやんないもんね。普通のエンジニアさんだと。そこはね、自分がやり続けて、やり抜いて、ゲインが上がりまくっている感じ。

JUBEE:嬉しかったっす、あれは。

上田:他の人に曲を書く機会って、ちょこちょこあるけど、音の強さとか攻撃的な感じがそこまで求められていないものもあるから。それとはもう全然違うね、JUBEEのやつは。「JUBEEはやれるだろう!」っていう感じで、あんまり遠慮なく考えられる。やってて楽しい。気持ちいいし。

JUBEE:本当っすか? やったー! なんか、認めてもらったみたいな感じが今しました。嬉しいです、本当に。

――ジャンルの違いは二人とも気にしていないようですけど、見方が違うとか、世代が違うからこそ面白いと感じるところはあります?

上田:あ、やっぱりね、この世代間がないと出せないものはあると思います。たぶん(JUBEEが)同世代の子たちと作ったら、同じように攻撃的なものを作っても違うしね。だから、やりたくてもできない組み合わせなんじゃないかな。

JUBEE:そうかもしれない。僕の同世代にもこういう攻撃的な音楽作る人、いるにはいるけど、また違うというか。新世代感みたいなものがあるんで。

上田:こっちは老舗感がある(笑)。同じ歪みでも。

JUBEE:そう。あと同世代だと楽器じゃなくて、どちらかと言えばDTMだけで完結させるから。ギターもそのままサンプリングしちゃうのも今はよくあるので。そういう意味でも老舗ですね。

上田:そうね。そこはサウンドとしてもトラックとしても貴重なんじゃないかな。こういう世代を超えた組み合わせ。自分もすごく貴重な体験。2世代くらい開きがある中でのコラボだから。

JUBEE:僕は剛士さんの子供みたいなもんなので。お父さんから教えてもらった音楽かっけぇ、お父さんが見てるところは僕も好き、みたいな感じ。

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