JUBEEはヒップホップもロックも超越した“みんなの歌”を追い求める The BONEZとAge Factory迎えた3マンを観て
「DJで、楽しい、お酒も美味しいっていうのはよくありますよね。でも爆発的な感情になってしまうのは、僕、バンドでしか味わったことないんですよ。3人や4人も人間がいて、生で音を鳴らして、さらに歌も乗る。そこで感情が爆発するのはよくわかる。DJで曲をかけるだけでそこまで持っていけるか、そのテーマは自分の中にありますね」
かつてDJ BAKUから聞いた言葉である(※1)。そのBAKUがまずは登場し、きわめて楽器的にターンテーブルを扱うところからライブは始まった。ばんばん飛び出すのは歪んだギターや激しいドラムの音で、登場したJUBEEも怒号に近い高速ラップを勢いよく叩きつける。非常にロック的な音像だ。ただ、私が驚いたのはそのことではなくて、JUBEEが後半のMCで、BAKUとまったく同じことを言い出したことだった。
「バンドの世界に入ってみて、俺ライブで泣いたの初めてだった。Age Factoryのフロアの美しさ、みんな昂まりきって、もう自分の歌みたいになってて、そのシーンに一番感動した。ヒップホップは生まれ育ちや成り上がり、自分のストーリーを語るけど、バンドは“みんなの歌”なんだって思った」
ロックへの共振、というのは少し違う。様式ならすでにマシン・ガン・ケリーや(sic)boyなどが取り入れているが、JUBEEとDJ BAKUが言っているのは「ひとりでは起こりえない爆発的感情」のことだ。人々がクールに踊り続けるクラブにはない、もっと剥き出しの表現。ダイブやモッシュ、汗だか涙だかわからない水分の輝き、笑っているのに泣いているように見える大合唱。そういうものに触れ続けていたい。これが『CROSSOVER』のコンセプトなのだろう。
前置きが長くなった。JUBEEが温めてきた企画『CROSSOVER』の第一回は、The BONEZ、Age Factoryを迎えて行われた。異種交流系のイベントは人を集めにくく、スリーマンはツーマンよりも敬遠されやすい。それなのに恵比寿LIQUIDROOMの下方フロアには人がパンパンに入っている。大型連休直前の平日であることを考えれば、これは、ものすごい快挙と言っていいくらいだ。
一発目のThe BONEZがベテランとは思えぬ熱量で駆け抜ける。最初にドラムの前に集まったメンバーが拳を合わせるところも、ザ・ロックバンドの見本のよう。声のデカさ、ドラムのやかましさ、「かかってこい!」などのMCも過剰なくらいアグレッシブなのだが、どれも高圧的ではない。これが彼らの人間性と直結しているのがよくわかる。ヒップホップ×ロックのイベントを意識したとおぼしきHouse Of Pain「Jump Around」のカバーが、ザックザクのリフで駆け抜けるハードロックになっていたのには大爆笑。常に全開、ヒネりやスカしを知らないエネルギーこそが最大の魅力なのだ。ラストの「SUNTOWN」ではJUBEEも乱入し、5人組バンドよろしく肩を組んでの大団円となった。
続くAge Factoryはより洗練されたバンドスタイルの理想を見せる。かなりの爆音なのに熱苦しさを感じないのは、流線的に回転するドラミング、また随所でファルセットを使う歌唱法が抜けのよさに繋がっているからだ。The BONEZが腕力勝負のロックなら、こちらは圧倒的な色気のロック。もちろん怒りの歌や郷愁の歌も多数あるが、歌う清水英介の顔とあえて切り離しているのもよかった。メンバーそれぞれの表情は特に照らさず、ストロボや逆光をメインに「バンドというシルエットのかっこよさ」だけを魅せる照明がずば抜けてクール。ダイバーとシンガロングが絶え間なく湧き出る、感情大爆発のフロアとなったのは言うまでもない。