THE YELLOW MONKEYはさらに新たな物語を進んでいく 3年半ぶりの東京ドーム公演で刻み込んだ“今”

THE YELLOW MONKEY、東京ドームレポ

 彼らのステージには欠かせない「SUCK OF LIFE」のスタートとともに、ライブは佳境に突入。コロナ禍は抑え気味だった吉井とEMMAの“絡み”も大々的にフィーチャーされ、続く「LOVE LOVE SHOW」では吉井やEMMA、HEESEYがステージ両サイドやアリーナ中央のミニステージに移動して、ファンを喜ばせる。そして、吉井が声を枯らしながら「50年すぎるといろんなことがあるし、ますます想像しにくい世のなかになっていっているような気がしています。でも、こうやってまたステージに立てて、皆さんとこうやってTHE YELLOW MONKEYのロックンロールを楽しむことができて、ありがたく思っています」と感謝の気持ちを伝えると、会場中に盛大な拍手が鳴り響く。続けて「みんな同じように年齢を重ねるし、自分だけがとは思わないし、それぞれ大変なことがあると思います」「(5月29日にリリースされる)アルバムに入っている曲のなかに〈人生の7割は予告編で/残りの命 数えた時に本編が始まる〉という歌詞がありますが、本当にそう思って作りました」と口にすると、再終結後のバンド第2章の始まりを告げる一曲「ホテルニュートリノ」で、約2時間におよぶライブ本編を締め括った。

 ライブの構成といい、感情の起伏といい、まるでジェットコースターに乗っているかのような刺激の続く本公演。アンコールは意外にも東京ドームで初演奏となる「アバンギャルドで行こうよ」からスタートし、会場は再びハッピーモードに包まれていく。吉井がアリーナ通路を練り歩く「ALRIGHT」では〈何よりもここでこうしてることが奇跡だと思うんだ〉が今まで以上に強く響き、彼らのライブには欠かせない「悲しきASIAN BOY」では派手なパイロ演出を交えながらクライマックスを迎える。そして「アルバムができたということは、きっと……ごめんね。まだ完璧な声になってないけど、少しずつちゃんと治していくから。何の保証もないまま、確信のないまま東京ドームやっちゃって申し訳ないけど、皆さんの歓声があるからできると思った」と本音を吐露したあとに、吉井は「願えば絶対に叶うと信じて、これからもTHE YELLOW MONKEYと人生をともにしてください。サンキュー、グッナイ!」と告げると、印象的なハイハットが鳴り響き「JAM」がスタート。一緒に歌えなかったことで「次こそは……」と未来に思いを馳せていた前回の東京ドーム時点では、まさかこんな未来が訪れるとは想像もしていなかった。しかし、どんな状態であれ再びこの曲を一緒に歌い、共有することができた2024年4月27日は間違いなく我々が待ち望んだ未来でもあった。そんな彼らは、当初予定していなかった「WELCOME TO MY DOGHOUSE」を最後の最後に演奏。過去の東京ドーム公演でこの曲がライブの最後に演奏されたのは、初回となった2001年1月以来のこと。あの当時は先の見えない未来に不安を覚えたが、今回はどんなにボロボロになろうとも前進することを選んだバンドの覚悟が伝わった……こうして約3時間におよぶ壮絶なステージは大団円を迎えた。

 世界でいちばん美しい歌声=観客の合唱が響きわたるなか、THE YELLOW MONKEYは丸裸でバンドの“今”を見せつけ、我々もその現実を全身で受け止めた。お互いにパワーを送り合うことで、THE YELLOW MONKEYはさらに新たな物語を生み出していくことになる。その第一歩として届けられる、彼らが魂を込めて作り上げたニューアルバム『Sparkle X』を、今は楽しみに待ちたい。

※1:https://realsound.jp/2023/10/post-1457690.html

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