muque、レトロリロン、yubiori、まんぷく……リアルサウンド編集部がいま気になるバンドをピックアップ

KOHAKU

KOHAKU - 恋人たち(Official Lyric Video)

 2021年結成、北海道・札幌を拠点とするスリーピース。全体的にシンプルなギターロックバンドという印象だが、それゆえに歌声とメロディの良さが際立つ。バンドの名前を広げるきっかけとなった「恋人たち」は、彼らの魅力を知るには最適な曲だろう。

 瞬発的に体を揺らすサウンド、共感しやすい歌詞……という類のものではないが、素朴で美しいギターのアルペジオも、温かく響く飾り気のない歌声も、じんわりと身体に染み込む優しさと親しみやすさがある。過度に装飾をしない、愚直な雰囲気も好感がもてる。美メロ好き、特徴のある声が好き、そんな趣向を持った人におすすめしたい。

 サブスクで配信されている楽曲は現時点で6曲のみ。周回するには物足りないが、それも次の作品への楽しみに繋がるというもの。シーンの中で徐々に認知を高めている今、ふとしたきっかけで2024年にさらなる飛躍を遂げるのではないか。(泉)

炙りなタウン

炙りなタウン - 馬鹿 - Music Video

 自分が1998年生まれだから、その理由だけで「1998」という曲を聴いたのが個人的な炙りなタウンとの出会いだったのですが、一秒目からとにかく青臭い! というか、自分たちでそれを認識したうえで、それでも溢れ出てくる何かがある感じ。衝撃がありました。特に「馬鹿」という曲。早くて短い曲なのに、聴けば聴くほど優しさが沁みてくる。過ぎる日々への優しさ、遠くにいる人への優しさ、青春のなかにいることを認める優しさ、聴く人がいると信じて差し伸べる優しさ。敵を作らない歌を歌うロックバンドって実はすごく貴重なんだよなあ、とあらためて思います。ガールズバンドがこうやって元気いっぱいなのも、すごく嬉しい。(林)

Khaki

Khaki - お祝い / 萌芽 (Official Music Video)

 EP『頭痛』を聴いた瞬間、度肝を抜かれた。ソングライティング、演奏ともに類まれな才能。定義や線引きといった堅苦しい枠組みからスルリと抜け落ちていくような、シニカルで抽象度の高い楽曲。中塩博斗(Gt/Vo)、平川直人(Gt/Vo)の紡ぐリリックは曖昧で、確かなものなんて何もない世の中における“形のなさ”や“不完全性”にこそ美を見出しているかのようだ。そしてそれは時に、凝り固まった慣習/思考への反骨や問題提起となって鳴り響く。飄々とステージに立つ彼らの姿は、分断の要因となりかねない正解の押しつけや、欺瞞・偽善・差別……などあらゆる世間の毒に対する拒絶の意志とも受け取れる。音楽性においても同様で、不穏な冷ややかさは通底しているものの、ロックを逸脱した幅広さを持ち、一般的にロックバンドと聞いて連想するような熱い団結感からも一定の距離を取っている感じだ。そんなKhakiの佇まいを映した最新シングル曲「お祝い / 萌芽」のMVが美しい。客のいない席に向かって、バラバラの方を向きながら離れて立つ5人が没入感満載の演奏を披露する。決して同じ方を向くことだけが集団のあるべき姿ではない。別々の視点が交差する瞬間こそが最もスリリングであることを、Khakiという無二の存在が物語っている。(信太)

luv

Lee Un Vile / luv (luvideo) PV

 歌ものとあわせてダンスミュージックを奏でるバンドが好きな自分が最近気になっているのが、2023年に始動したばかりの5人組バンド、luv。ボーカル、DJ、ベース、キーボード、ドラムの5人編成でファンク、ソウル、R&B、ヒップホップなどの音楽性を融合させたフロアライクなサウンドを奏でている。先のパート紹介でボーカルの次にDJと表記したくなるように、彼らの楽曲の中ではDJプレイがリードギターのような役割を果たしているのも特徴的。先日特集の対談企画で出演してもらったHALLEYが出ていたイベントで初めてライブを観て、生演奏でのグルーヴもしっかり体感した上で推薦したいバンドである(洗練された音楽性とMCの関西ノリのギャップもいい味出してました)。個人的なフェイバリットは「Lee Un Vile」。ここから先どのような楽曲が増えていくのかとても楽しみな存在。(久蔵)

Japanese Football

Locked Out

 名前に惹かれて聴き始めたバンド。もちろんメンバー全員の共通言語はAmerican Footballとのこと(※1)。4人ともメタルやエモなどが下地にあり、特にtoeの影響を受けたというKen Ohashi(Dr)のプレイスタイルが良い味を出している。作品のリリース数はまだ多くはないが、昨年4月発売の『Reflections Of You EP』はテクニカルな演奏とJack Chambers(Gt/Vo)の優しい歌声を堪能できる良作。サウンドや演奏の端々にはメタル~エモ、ロックを感じる(それがとてもツボ)一方で、ボーカルはあくまでも柔らかい印象なので幅広いリスナーが抵抗なく聴けるはず。それぞれソロや他のバンドでの活動もあり、ジャパフトとしての活動は決してハイペースではないが、ぜひライブで生のステージを観たい。映像を見る限り演奏力は間違いないだろう。(村上)

ネオンに恋して

ネオンに恋してMV「 好 -hao- 」

 大阪発、男女ツインボーカル編成の4️人組バンド。結成後すぐリリースされた楽曲から“レトロ感”を意識したような楽曲になっていたが、今年2月にリリースされた最新EP『LOVE DRIVE』ではその個性が一歩進み、ポップさとゆるさのバランスがちょうど良い。実は竜斗(Vo)・しっぽ(Vo/syn)は甥・叔母の関係性なのだが、言われてみると確かにどちらがメインの楽曲でも声の相性が良いように感じる。(佐々木)

※1:https://sensa.jp/interview/20230407-jf.html

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