TM NETWORK、テクノロジーの発展で実現したライブ体験 “唯一無二”を追求し続けたキャリアを振り返る

TM NETWORK、“唯一無二”の追求

 TM NETWORKデビュー40周年を記念して11カ月連続の特集がWOWOWでオンエアされる。6月29日放送のメンバー3人が語る特集全体の予告番組「TM NETWORK 40th Anniversary WOWOW Special Year ~Prologue~」から始まり、7月27日には神奈川・Kアリーナ横浜で5月18日と19日に開催された『TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days ~YONMARU~』ツアーファイナルの模様がオンエアされる。

 1984年4月21日にデビューして以来、シンセサイザーを中心としたスタイリッシュな楽曲を次々と世に送り出してきたTM NETWORK。本特集の第1弾“プロローグ編”では、大型特集の概要をTM NETWORKのメンバー3人とともに先取りして見ていく。7月にWOWOWで独占放送・配信する『TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days ~YONMARU~』の神奈川・Kアリーナ横浜公演について、アニバーサリーライブを終えた彼らに感想を聞くほか、今後放送・配信する特集企画の内容を明らかにしていく。

 TM NETWORKは、2022年7月より7年ぶりのツアー『FANKS intelligence Days』をスタート。初日の公演には「Day1」のナンバーが銘打たれ、以降「Day2」、「Day3」とカウントアップしてきた。2023年からは『40th FANKS intelligence Days』と40周年を意識したタイトルへと進化、さらに2024年には「YONMARU」の文字が加わり、ギターに北島健二、ドラムに阿部薫という“盟友”も集結。そして、5月18、19日の神奈川・Kアリーナ横浜でのツアーファイナルには、約2年かけて積み重ねてきたDay39、Day40のナンバーが刻まれた。WOWOWでは、ツアーの集大成となった、このファイナル2日間を収録・編集し、独占放送・配信する。

 リアルサウンドでは、小室哲哉、宇都宮隆、木根尚登のメンバー3人にインタビュー。TM NETWORK再始動後の無観客配信ライブから最新ツアーに至るまで、テクノロジーの発展で実現できたライブ制作秘話、刷新を続ける三者三様の挑戦をじっくり語ってもらった。(編集部)

10年前は実現できなかった3人編成でのライブ

TM NETWORK
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ーー今回の再起動プロジェクトはまず無観客配信によるスタジオライブ『How Do You Crash It?』で始まりました。サポートメンバーを起用しない三人だけのステージングが鮮烈でしたが、三人だけのプレイにこだわった理由は?

小室哲哉(以下、小室):まずはコロナ禍があって……二人はそれぞれソロでライブをやってたのかな?

宇都宮隆(以下、宇都宮):うん、やってたね。

小室:それが大変だっていうのは聞いていたので。実際周囲に陽性者の方もいらっしゃったし、スタッフの提案もあって思いきって配信だけで、サポートメンバーも一人も入れないライブをやってみようと。その提案を受けて、当時の状況を俯瞰で見ているような、地球全体を見ている場所からメッセージを送るようなものにしたいよねって。音楽的にはもう一度改めて三人編成ということを、皆さんに知ってもらいたいというのがありました。当然三人の方が映像に映る時間も多いので、僕的には飽きちゃうかな? つまらなくならないのかな? って心配はちょっとありましたけど。

宇都宮:TMの初期から三人でビデオを撮っているので慣れているっていうか。うまくできたかどうかはわからないですけど、プロモーションビデオっぽい部分もあったので、そんなに大変だったことはなかったです。ただ、それをライブのように表現することがやっぱり難しいと思った。

小室:インサートする映像も何もないですから。

宇都宮:そうそう(笑)。

小室:お客さんがずっと観ているような体裁で、ずっと一つのステージを映しているだけという。

木根尚登(以下、木根):その後、40本あるツアーの最初という意味では手探りで始めましたね。三人だと楽器の負担も多くなるとわかっていたので、どんな風にしていこう? と考えました。僕的には最初っから観客がいてバーンと始まるツアーではなくて、始まるためのイントロダクションのような、ゆっくり考える時間が多少あったのは良かったと思います。

ーーその後の『FANKS intelligence Days』ツアーも一部でサポートメンバーを起用しつつも、基本的に三人のプレイを貫いたところが個人的に痺れたのですが、そもそも三人だけでやるツアーはほぼ初めてですよね。

小室:他のものとシンクロする、という部分で確実にテクノロジーの進化があるので。カラオケに乗せて僕たちが演奏するということではなく、データと一緒に全員が演奏して歌うことは、10年前の30周年の頃でも三人だけでやるのは無理だったと思います。

ーーそうなんですね。

小室:うん。DJみたいなスタイルでオケをちゃんと出す担当がいたらまた別だったかもしれないけど、打ち込みだけだと厳しかったです。特に三人だけで『FANKS intelligence Days』が始まってから、映像やライティングも全部シンクロすることができたので。もちろんマンパワーは必要ですけれども、せーのでポン出しすればちゃんとテンポも合うんです。そういう技術的な進歩があったし、三人をサポートする演出も相当いろんなことができるようになったのは大きいと思います。FANKS(ファンの名称)が飽きるのは嫌だし、自分たちが飽きちゃうのも避けたいと思っていたのですが、実際振り返ってみても「なんか今日つまらないな」という日はツアーを通して1日もなかったです。

宇都宮:歌だけでなく、いわゆるパフォーマーとしての部分も含めると、観に来てくださる皆さんに「どうやったら二時間弱のライブを楽しんでもらえるだろう?」と考えたところは多少あって。一般的なバンドだと観客のところへ行って煽るとか、ドラムとコミュニケーションしたりできるんだけど、二人が弾いているだけだと行く場所が少ないんですよね(笑)。だから観客に向けるしかないというか、パフォーマーとしてすごく試されている感じがありました。

木根:僕は飽きている暇なんかない(笑)。とんでもないくらいいろんなことをさせていただいてたんですけども、やっぱり楽しかったですね。ある曲ではウツと二人でアコースティックギターを弾いて、哲っちゃんのところに行ってシンセサイザーをワーッと弾きまくるんだけど、次の曲ではアコギに戻るみたいな。こういうのがやっぱりTMなんだって感じますね。

小室:FANKSの方たちからすると、ステージがすごく近かったし、より親しみを持ってもらえたのかなって。僕らとFANKSの方が助け合っていたところもあったと思います。嬉しいことにどこも満員で、「席が空いてるな」とか余計なことを何も考えなくてよかった(笑)。

木根:一番ありがたいことでしたね(笑)。

小室:なんの心配もしなくていいっていうのは本当に楽しめますよね(笑)。

宇都宮隆
宇都宮隆

ーー機材トラブルのようなリスク面での心配もなかったのですか?

小室:それはあります、いくらでも。技術を投入している分、コンピュータ上でやることも、30周年の時よりも膨大に機材は増えているので。振動にも過敏に反応しますし、機材はどれも繊細なんです。けど、トラブっていてもやれたところもありますし、なんとかできちゃったという。

ーー個人的に印象深かったのが、今回のツアーの低音の響き方が30周年のときとは段違いに異なりました。バスドラの圧倒的な重低音に特にこだわっていたと思うのですが、コンサートで初めて体験するロー感でした。

小室:そうですね。聴感上では通常聴こえない低周波……Hzで言うと一番低いのは20Hzぐらいなんですけど、ステージ上だともう足とかがくすぐったくなる振動ですね。

宇都宮:僕のところが一番ひどいんだ。Kアリーナ(横浜)のときにマイクスタンドが振動で倒れそうになっちゃって、やばいと思って支えるために持っているみたいな(笑)。

ーーそんなに揺れましたか!

小室:Kアリーナは特に。僕一人で前日に行って、(低音域が)どこまで出るのかを試してもらって、「もうちょっと、もうちょっと……」と調整して、最終的には「できるところまで出してください」と言ってましたね。特にエンディングは通常、無音で皆さんにありがとうみたいなことを喋りますが、今回は重低音が鳴ってるところで僕たちはあえて何も言わなかった。普通なら違和感があるんですけどね(笑)。ただ、幸い二人が何も言わないことをOKしてくれたので、思い通りにはなりましたけど。低音域は多分、海外のアーティストさんよりも出していると思います。

ーーそれはまさに今のテクノロジーだからできたという部分ですね。

小室:そうですね。元々の音源の中に低い音の成分が入ってないと、いくら下を出そうと思っても出せないですから。スピーカー、PAシステムは出せる音がこの範囲っていうのが決まっちゃっているので、今までは入れていても削られていたんです。そこは自分たちの演奏を客席で聴きたかったぐらいですね。

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