back number、Mrs. GREEN APPLE、Saucy Dog、マルシィ……夏にこそ聴きたくなる恋愛ソング

back number、マルシィら夏の恋愛ソング

 まだ6月だが長袖の服の出番はすっかり減り、夏の到来を感じている人も多いことだろう。暑すぎてダラけてしまいそうになるけど、せっかくなら、夏の音楽を聴きながらこの季節を目一杯楽しみたい。この記事では「夏に聴きたい恋愛ソング」というテーマで5曲を紹介する。

back number

back number - 高嶺の花子さん (full)

 最初に紹介するのは、ラブソングの名手・back numberが2013年にリリースした「高嶺の花子さん」。四七抜き音階を用いたストリングスのフレーズが印象的なイントロは39秒に及び、リスナー一人ひとりの心の中にある“日本の夏の情景”、ノスタルジーをじっくりと呼び起こしてくれる。この曲の主人公は、好きな人がいるが「自分は相手と釣り合わない」「土俵にすら立てない」という自覚からアプローチできず、〈会いたいんだ 今すぐその角から 飛び出してきてくれないか〉とラッキーを願う男性。歌詞で頻出する〈夏の魔法(魔物)〉とはラッキーを運んでくれる存在だが、しかし彼が夏を理由に浮かれられる時間は長くない。〈悪い意味で 夏の魔法的なもので 舞い上がってましたって 怖すぎる/オチばかり浮かんできて〉とネガティブな思考に陥っているのがコミカルだ。清水依与吏(Vo/Gt)の描く臆病でも恋をする男性像は、10年以上にわたり愛されている。

Mrs. GREEN APPLE

Mrs. GREEN APPLE - 青と夏

 Mrs. GREEN APPLEの「青と夏」は、青い空と白い雲が似合う曲だ。特に突き抜けるようなサビが気持ちいい。サビのボーカルは「ドレミファソ」のリフレインによって構成されているため、印象に残りやすい。加えて「ドレミファソ」の上昇に対してサビ以外では下降形のメロディが多かったり、大森元貴(Vo/Gt)の歌唱やバンドのダイナミクスによってコントラストがはっきりつけられていたりと、サビの威力を上げるための工夫が見て取れる。なぜここまでサビを際立たせるのかというと、そこにメッセージが詰まっているからだ。この曲は、恋する人が自身の気持ちを歌うラブソングではなく、“片想い中の人を応援する人”の目線から歌われるエールソング。ひぐらしの鳴き声や打ち上げ花火の音など季節感のある音を取り入れ、歌詞でも夏のモチーフを羅列しながら、絵に描いたような青春を他人事のように思っている人に対して、今しかないこの夏を謳歌しようと伝えている。〈映画じゃない/僕らの夏だ〉と。

SHISHAMO

SHISHAMO「君と夏フェス」

 SHISHAMOの「君と夏フェス」のリリースは、国内4大フェスの一つ『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』の開催日数が4日間に拡大した2014年。夏フェスが“音楽に詳しい人向けのイベント”から“海や花火と並ぶ季節のレジャー”へと変化していく中、“今なんとなく漂っている時代の空気”をしっかりキャッチし、普遍的なラブソングへと昇華させた作詞作曲・宮崎朝子(Vo/Gt)の着眼の鋭さ、ソングライターとしての腕前に当時感動した記憶がある。好きな人の前でおしとやかでいようとする自分と大好きなロックスターのライブでついはしゃいでしまう自分=見せたい自分と素の自分の対比は、2019年にヒットしたwacci「別の人の彼女になったよ」にも通ずるどの時代でも共感されるテーマだ。楽曲はEメジャーキーから始まるが、1サビでFメジャーに転調し、そのあと元のキーに戻らないのが、高鳴るばかりの鼓動を表しているようで絶妙だ。しかし宮崎いわく「戻るの忘れちゃった」とのことで(※1)、計算では出せないミラクルもこの曲には宿っている。

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