Mrs. GREEN APPLE、藤井 風、[Alexandros]……歌詞の一人称で浮き彫りになる多彩な表現とメッセージ
最後に、[Alexandros]の楽曲についても言及しておきたい。川上洋平(Vo/Gt)が書く各曲の歌詞は、〈私〉〈僕〉〈俺〉〈自分〉〈己〉というようにさまざまな一人称で綴られ、夏目漱石の『吾輩は猫である』をモチーフにした「Cat 2」のように猫目線で〈我輩〉という一人称が使われているレアなケースもある。なかでも、川上の抒情的な筆致が特に色濃く滲んでいるのが、一人称に〈私〉を用いた楽曲たちだろう。たとえば、初期の一曲「For Freedom」では、矢継ぎ早に繰り出される英詞のなかに〈誰かの優しい言葉でなく 激しいだけの嘘の言葉でなく/「私は 私だ」って言える事が 何にも変えがたく心地良いんだ〉という、ロック名詞選を編纂するとしたらきっと上位にランクインするであろう渾身のパンチラインが〈私〉という一人称で飛び出す。ほかにも、「Starrrrrrr」の〈どこまでも私は私だから 貫いて誰に何を言われようとも〉をはじめ、〈私〉を主語とした力強いパンチラインを持った楽曲が非常に多い。「Girl A」のように、曲中の登場人物である〈彼女〉の台詞〈“私がいなくたって/あの空が堕ちたって/あなたは生き続けるだろう/無邪気なあの朝に/いたいけな夜に/二度とは戻りはしないだろう”〉が挿入される歌もあり、一聴すると、まるで小説のようなストーリー性が深い余韻をもたらしてくれる。
[Alexandros]には、私小説のようなリアリティ、ロマンチックさを内包する楽曲も多い。「Leaving Grapefruits」の〈思い出してみればあなたはそんな私を連れ去った/痛い程強くつむっていた 瞼/恐る 恐る 開けたの/知ってた?〉という一節は、まさに川上節が見事に冴え渡った極上の名歌詞だと思う。美しいメロディラインとも相まって、切実な感傷が手に取るように伝わってくる。同曲や「あまりにも素敵な夜だから」をはじめ、ロマンチックな心情や切実な恋愛感情を熱さとクールさを兼ねたロックサウンドに乗せて高らかに鳴らされる楽曲は多く、川上の豊かな文学性には驚かされる。
なお、[Alexandros]がサウンドを、詩人/小説家の最果タヒが作詞を手掛けた「ハナウタ」という楽曲があるのだが、この歌では〈ぼく〉という一人称が用いられている。川上の筆致とは異なる最果タヒによる書き方でもあり、愛や孤独の輪郭を浮き彫りにしていく一曲だ。



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