ライブ・コンサートチケットの“平等”な販売方法はあるのか 日韓アイドルの例を参考に考える
世界で2位の音楽市場を持つ日本だが、現代の音楽ビジネスにおいて大きな割合を占めるコンサートのチケット販売に関しては、世界的に見ても少し特殊なようだ。日本においてファンクラブが開設されているようなアーティストのチケット販売に関しては、独占禁止法の関係などもあるのか、まず最初にファンクラブ会員向けの先行抽選販売が行われ、続いて公式サイトやコンサートのスポンサー企業絡みの抽選が行われた後、最後に一般販売が先着で行われるというスタイルが一般的だ。
しかし、日本以外の各国では「先着順販売」(チケッティングと呼ばれている)が一般的で、例えば日本と同様にファンクラブがあることが一般的なK-POPアーティストの場合、日本以外の公演では東南アジア・北米・欧州のいずれもファンクラブ向けの先行販売はあるものの、それ自体も先着順販売で、会員のみがアクセスできるURLが期間限定で設けられ、それぞれが希望する座席のチケットを購入するという形式が一般的だ。
この2つの方式には、それぞれの長所と短所が存在する。日本がファンクラブ先行として優先的に採用する抽選販売方式の長所としては、チケッティング開始時間にパソコンやスマートフォンを使うことができるか否かや回線状況に関わらず、一旦は“平等”にチケットの入手機会が与えられる点だ。最近は前方が確約されたプレミアム席の販売も行われるケースもあるが、座席の位置もプレミアム席が購入できるか否かも基本は運次第なので、幅広い生活様式の人たちにとってある程度の“平等性”が担保される。「チケッティングに時間を割くことが難しい」「座席はどこでもいいからとにかく公演を見たいファンクラブ会員」層にとっては最も機会が広く開かれていると言えるだろう。
抽選方式の短所としては、最速で行われるファンクラブ先行で決済されずにキャンセルとなった座席が他の抽選販売や一般発売に出回ることもあるため、「結果的にファンクラブ先行より良席(≒前方)の一般販売席がある」ということも起こりうる。抽選となると、公演を見るだけではなく「絶対に前の方でなければ嫌だ」(=そのためなら何でもする気持ちがある)という一部のコアファンダム層にとっては自分の頑張りだけではどうにもならない部分もあり、これが結果的にプレミアムな値段でのチケット転売や良席の闇取引という自体を招くこともあるという部分だろう。また、抽選でのチケット当選者対象でアップグレード抽選を行うというやり方ではなく、あらかじめS席やプレミアム席などの席の種類が複数用意され、その中で各自抽選が行われる場合、数が少ないプレミアム席の方が競争率が上がる可能性もあるため、「金額を積んだとしても前方を希望する熱心なファン」の方が抽選に溢れてしまい、結果的にチケットすら取ることができないという事態も起こりかねない。
一方、先着販売の長所としては、「チケットを押さえるために他の予定を全てキャンセルして購入に集中できる」「見たいエリアが絶対に決まっている」という熱心な層にとっては、先着順で理想とする席が購入できる可能性が高い(少なくともそれに向けて努力は可能)という点ではないだろうか。そういった層は複数の席をカード決済以外の支払い方法で一旦押さえ、不要となった席はあとでキャンセルする(支払いを完了させない)ケースが多いため、「座席はどこでもいい」という層もリアルタイムで追っていればキャンセルのタイミングで一旦売り切れたチケット購入のチャンスが後からでもやってくる。
短所としては、言うまでもなくリアルタイムでネットに張り付く必要があるために、購入機会の制限があること、そして近年、피켓팅(血ケッティング)と言われるような血で血を洗うような人気公演の場合、ファンクラブをはじめとした先行前売りで完売したり、回線の速さが購入可否に直結するなど、“平等”ではない点が多いことだ。韓国内でも回線の速いネットカフェでスタンバイしたり、コロナ禍前まで国外のファンの中には回線的にどうしても不利になりがちな自内を出てチケッティングのために渡韓する“渡韓チケッティング”を行うファンも珍しくなかった。