世界的なK-POP人気の背景で指摘される韓国の大規模会場不足 “K-POP観光”を見込んだ新施設建設も進む

韓国内の大規模会場不足の今

 コロナ禍による多国間移動が難しい時期が落ち着き、海外での公演が通常通り行われるようになってから、K-POPアーティストの日本公演もコロナ禍以前のように活発になっている。特に今年は各アーティストの単独公演に加え、韓国の音楽番組『ミュージックバンク』『SBS人気歌謡』の日本でのライブ公演や、SBS MTVの音楽番組『THE SHOW』初のワールドツアーの日本公演4DAYSなどTV局主催のコンサート、“アジア最大級の受賞式”を謳っているMnetの音楽アワード『2023 MAMA AWARDS』の東京ドーム開催などの大型イベントが発表されている。

 韓国外でのコンサートも活発に行っているK-POPアーティストだが、「海外での人気」とは別に、長年指摘されているのが「韓国内の大規模会場不足」の問題だろう。

 韓国開発研究院(KDI)によると、2019年度のBTSのコンサートチケットパワーは133万枚で世界5位だったにも関わらず、韓国公演音楽市場(2019年基準)の規模は4億4900万ドルで、世界1位のアメリカ(108億8500万ドル)の4%、2位である日本の(29億700万ドル)の16%程度だ(※1)(プライスウォーターハウスクーパース調べ)。これには韓国のライブ会場環境の問題が深く関わっていると思われる。

 現在、韓国では1万人規模以上の公演はソウルオリンピック時に建設された各種体育館や運動場などや野球場、サッカー場を借りて行われている。スポーツ施設を利用したライブ自体は日本を含む世界各地で行われているが、問題は2023年10月現在、1万人以上が収容できる屋内会場が韓国内で不足していることだろう。

 K-POPが世界で人気を獲得し、最も近い海外である日本ではすでに10年前からさいたまスーパーアリーナのようなキャパシティが3万人以上の屋内公演場や、5万人収容可能な東京ドームで多くのK-POPアーティストが公演を成功させてきた。韓国内ではKSPO DOME約1万5,000人、2015年に完成した高尺スカイドームの座席数は約1万7,000人〜2万2,000人で、例外的な屋外スタジアム公演以外はこの程度のキャパが限界とされており、いずれも本来は野球場だ。

【ソウル特別市内の主な公演場】
オリンピックホール(2,452席)
高麗大学校体育館(4,025〜8,057席)
慶熙大学校平和の殿堂(4,500席)
SKハンドボール競技場(5,003席)
チャムシル室内体育館(11,069席)
KSPO DOME(前オリンピック体操競技場)(13,000席)
高尺スカイドーム(17,000〜22,258席)

 大規模な屋内公演場の建設計画は韓国内でも2010年代から度々持ち上がっているが、なかなか進まない理由は韓国内での動員の限界があることとされてきた。韓国で最も動員が多いのはやはり「アイドル」だが、ファンの年齢層が相対的に若年層が多いこと、アイドル以外で単独で大規模な動員が見込めそうなアーティストの数が少ない(PSYやIUなど数組の例外を除く)という韓国の音楽業界特有の問題があり、1万人以上の会場を埋められるアイドルでも、実際の現場では海外からのファンが多い。要は「採算がとれないのでは」という見解が根強いようだ。さらに韓国では様々な点でソウルへの一極集中化が著しい。「文化の地域格差」があるとはいえ、それでも大規模なツアーであれば大阪・名古屋・福岡を周ることの多い日本の比ではなく、現在でも人気のアイドル・アーティストの公演のほとんどがソウルのみ、ごく稀に釜山で開催する程度だ。

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