K-POPアーティスト、“大規模公演は必ず満席”の時代は終わり? ドームクラス成功に必要なものとは
コロナ禍による渡航やライブにおけるさまざまな制限が完全に解除された2023年、日本では数多くの大型ライブが開催された。国内の屋内会場としては最大規模の収容人数を持つ東京ドームでは、SEVENTEEN・BLACKPINKといった中堅からStray Kids・aespa・ENHYPENのように初の単独ドームコンサートを成功させた若手、すでにドーム公演常連の東方神起や、アジア最大を謳う音楽アワード『MAMA(2023 MAMA AWARDS)』まで多くのコンサートが成功に終わった。一方で、さまざまな事情でチケット販売開始したものの中止になった公演や、コンサートの数が増えた結果、満員とは言えない客入りの公演もみられるようになった。
そもそも、K-POPアーティストが日本で多くの公演を開催する背景には、韓国内での公演場所の不足やファンダム規模の限界といった問題もあるだろう。さらに、韓国から近く、「K-POP」のファンダムが定着しており、東京以外の地方にも会場が充実している日本は事務所にとってビジネス的な好条件が揃っていることは大きいと思われる。加えて、日本国内のK-POPアイドルのファンダムは長年複数のアイドルを応援する「雑食」と言われるファンが韓国よりは浸透しているという文化的な背景もあるのではないだろうか。一番好きというわけではないグループだとしても楽曲を気に入れば音源を購入したり、コンサートに行ったりという「K-POPというジャンルそのものへのファン活動」が一般的だったり、あるいはある程度独自のスタイルを確立している事務所の場合は「その事務所のアーティストであるならコンサートに行きたい」というファン活動のスタイルや、単純に事務所の後輩だから応援したいというような「事務所推し」も珍しくはない。
韓国の場合K-POPアイドルのコンサートに行く観客は「そのグループのことを一番好きなファン」がほとんどとされているが、K-POPアーティストを“アイドル”として受容すると同時にK-POPの曲そのものを一種の音楽ジャンルとみなし、純粋なエンタメとして消費する層が珍しくない日本では、K-POPのコンサートに行く観客は必ずしもそのグループが一番好きというファンだけではないはずだ。むしろそのようにアイドル自体ではなくK-POPという文化そのもののファンが一定以上の規模で存在していることによって、さまざまなグループが大規模公演を開催することが可能とも言える。
一方で、特にK-POPでは客層が女性アイドルに比べるとファンダム層中心になりがちな男性アイドルの場合は、ドームクラスでもチケットが取れないというレベルは例外としても“ファン未満”の客層を惹きつけるような内容が求められると同時に、一定規模のコアファンダム=毎回必ず来てくれる・複数公演入りたがる層を育成していく必要がある。そのためには、新規ファンの拡大にだけ目を向けるのではなく、既存のファンダムを保ち、勢いを萎えさせない・気力を奪わないようなやり方も重要になってくるだろう。