ACIDMAN、映画『ゴールデンカムイ』主題歌による新たな追い風 旧友 玉木宏も登場した一夜

ACIDMAN、旧友 玉木宏も駆けつけたワンマン

 現在公開中の映画『ゴールデンカムイ』の主題歌として、3年半ぶりとなるシングル『輝けるもの』をリリースしたACIDMANが、2月6日にTOKYO DOME CITY HALLにて『New Single Release Live「輝けるもの」』と題して、一夜限りのワンマンライブを開催した。結成27年目にして、新たな追い風を感じながら、ACIDMANの3人はどんな思いでライブに臨んだのか。約2時間の熱演をレポートする。

photo by Victor Nomoto - Metacraft

「今回の主題歌がきっかけで初めて僕らのことを知ってくれた人もいるかもしれないし、なかには『ライブがあるなら』って来てくれた人もいると思います。はじめまして、ACIDMANと言います。いろいろな曲をやっています」「激しい曲だけじゃなくて、ポップな曲もあるし、バラードもいっぱいあるし――伝えたいことはひとつなんですけど(笑)。僕のMCは難しいと感じるかもしれない。宇宙の話や命の話をし始めるから重たく感じるかもしれないけど、だんだん『あれ? めちゃめちゃ大事なことを言ってるんだ!』って思ってもらえるはずです」

大木伸夫(photo by Taka"nekoze photo")
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 序盤の6曲が終わったタイミングで、大木伸夫(Vo/Gt)はスタンディングのアリーナはもちろん、3階まであるバルコニー席もぱんぱんになった客席に向かって、そんなふうに語りかけた。この日、いきなり1曲目に披露した最新シングル「輝けるもの」のインタビュー(※1)でも、「これを機に名前しか知らない方とか、昔は好きだったけど今は聴いていない方とか、あとはまったく知らなかった方とかに気づいてもらえたら嬉しいです」と大木は語っていたが、冒頭に掲げた大木の言葉から、この日彼らはACIDMANを初体験する観客に対して、代表曲を中心にACIDMANがどういうバンドなのか知ってもらうためのセットリストを組んだんじゃないかと仮定してみる。すると、ACIDMANが実は得意としているダンサブルなアプローチをアピールした序盤、バラードを中心にじっくりと聴かせ、バンドが持つスケールと深い世界観を印象づけた中盤、そして3人が一丸となったタイトな演奏でライブバンドの底力を見せつけた終盤というプロットが浮かび上がってくる。

佐藤雅俊(photo by Taka"nekoze photo")

 「最高の1日にしよう!」(大木)――バンドが持つ衝動をストレートに表現した「輝けるもの」から一転、浦山一悟(Dr)がドラムをツチドチツチドチと鳴らした「ストロマトライト」、さらに「波、白く」「Rebirth」と繋げていった序盤の流れは、4つ打ちのキックに合わせ、観客が跳ねた「FREE STAR」のアンセミックな光景に見事結実。早くもひとつつ目のハイライトシーンが生まれたことを感じさせたが、実はこの序盤にはもうひとつ、巧みなアレンジセンスとともに3人それぞれのプレイヤビリティを見せつけるパートでもあったように思う。

浦山一悟(photo by Taka"nekoze photo")
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 たとえば、「波、白く」のブレイクを効果的に使ったリズムアレンジやサンバ風になる間奏を挟んでハードコアおよびプログレとも言える展開を見せるバンドの演奏は、「輝けるもの」のイメージが大きくあったであろう初めて生でACIDMANを観る者の度肝を抜くという意味では、絶妙の選曲だったはずだ。また、銃声を表現しているようにも聴こえる「輝けるもの」の2番のAメロにおける浦山のスネアワーク、大木が軽やかに奏でるファンキーなギターリフを縫うように佐藤雅俊(Ba)が「Rebirth」で指弾きするベースフレーズ、大木がループペダルを使って、フレーズを重ねた「FREE STAR」「アルケミスト」のギターリフ――アンサンブルのなかでそれぞれに際立つ3人のプレイも序盤の見どころ、そして聴きどころだった。

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 コードをかき鳴らすギターリフと跳ねるベースラインが掛け合う「リピート」は、フォーキーな曲調をポップに聴かせるリズムアレンジが秀逸だ。胸に染みるメロディを歌う大木のやさしい歌声も心地好い。演奏する3人の背後に映し出された日差しと木々の緑をモチーフにした映像も含め、ハートウォーミングなポップソングにオーディエンスはうっとりと耳を傾けている。そういう曲が徐々に熱を帯びながら、最後には演奏が白熱してしまうんだから油断できない。

 この日、バンドがステージのバックスクリーンに歌詞を含めたさまざまな映像を映し出しながら演奏したことはすでに書いたとおりだが、心を持ってしまったロボットの孤独と絶望を描いたMVをそのまま投映した「2145年」は、悲しい曲調とショートムービーを思わせるMVのストーリーが相まって、観客の胸を打つ。

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 そして、人生の儚さと、だからこそ今を精一杯大事に生きようという人生の真理を大木が語りながら、ともにバラードの「愛を両手に」「世界が終わる夜」を重ねていく。タイトなアレンジで曲の魅力を際立たせた前者に対して、後者では逆に同期で鳴らしたストリングスの音色も使いながら、曲が持つ儚さと表裏一体の美しさを最大限に表現する。そして、間奏から手数が増え、白熱していく3人の演奏に観客は身じろぎもせず、じっと聴き入るしかない。最後、ステージの3人に釘づけになった観客と一緒に大団円を迎えた轟音の演奏は、この日のもうひとつのハイライトだったと言ってもいい。

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 「ここからもっと盛り上がって、もっと上を目指していくぞ!」。大木が声を上げ、浦山のキックの連打から突入した後半戦は、「夜のために」から彼らが一丸となったことを思わせるタイトな演奏で、アップテンポのロックナンバーをたたみかけていく。観客が「ハイ!ハイ!ハイ!」と声を上げながら拳を振ったアンセミックな「ある証明」では、「みんなで叫びましょう!」という大木の言葉に応え、観客全員が大木とともにシャウトする。

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 この日いちばんの盛り上がりを作り出したバンドの熱演に拍手喝采が送られる。しかし、まだまだ満足できないのか、「まだまだ行くぞ!」という大木の雄叫びを合図に唸り声を上げるように鳴る佐藤のベースリフからなだれこんだのは、ACIDMANのパンクロックナンバーとも言えるであろう「造花が笑う」。サビでは佐藤も浦山もシャウトする。その後も「夜のために」「ある証明」とたたみかけ、さらなる盛り上がりを作り出す。ある意味、力業とも言えるバンドの演奏に、あらためてライブバンドとしてのACIDMANの底力を感じたのは筆者だけではないだろう。

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