Lamp、断続的な活動の中でバンドを続けるための秘訣 『ランプ幻想』などの制作エピソードも

Lamp、マイペースにバンドを続ける秘訣

サウンド面でのターニングポイント迎えた『ランプ幻想』

Lampインタビュー写真(撮影=林将平)

──通算4枚目のアルバム『ランプ幻想』(2008年)に収録された「ゆめうつつ」は、2021年にTikTokの動画で使用されたことをきっかけにバズを生み、Lampの中でも最も再生数の高い楽曲となりました。

染谷:この曲は、たとえばドノヴァンの『The Hurdy Gurdy Man』収録の「Peregrine」や「Teas」、ビートルズの「Blue Jay Way」、スタックリッジ「32 West Mall」とかマイケル・ゲイトリー「The Way Your Love Is Going」なんかを意識しながら作りました。自分たちとしては良くできた曲だしめちゃくちゃ気に入っているんですけど、まさかこんなに多くの人に気に入ってもらえるとは思ってもいなくて(笑)。TikTokで流行る音楽はビートが強かったりキャッチーなフレーズがあったりするものが多いと思うのですが、コロナ禍で1人で家にいる時に音楽を聴く人が増え、そういう状況で聴いてもしっくり来るものを探すようになったのかなと勝手に予想してます。自分たちの楽曲がコロナ禍の新しい生活様式と相性が良かったのかもしれない。

──アルバム『ランプ幻想』は、当時どのように作られたのでしょうか。

永井:僕らはサウンド的なターニングポイントがいくつかあって。最初に大きく変わったのが、この『ランプ幻想』の時。それまでのアルバムは全て同じエンジニアさんで、彼の自宅に楽器や機材を持ち込みレコーディングを行ったんですよ。さっきも話したように、全ての楽曲にリバーブとディレイをたっぷりかけるのが好きな方で。

染谷:当時僕らはそれとは真逆の、デッドなサウンドにしたかったんだけど。

永井:とにかくマイケル・ジャクソンが好きなエンジニアさんだったので、ローファイにしてもらえなかったんですよね(笑)。僕らはまだ若かったので、「本当はこうしたいんだけど」みたいなこともうまく言えなかったし。そういう状況を、一旦リセットしたのが『ランプ幻想』だった。

榊原:「こんな暗いアルバムを出してしまった」みたいな気持ちもあったし、実際リリース後のライブでも演奏できる曲がほとんどなかったんです。でも、これを聴いてLampを好きになってくれた方は、きっと今後も聴いてくれるだろうなという感覚はすごくありました。なので、このアルバムは当時からずっと大好きなんですよね。

永井:その頃になると、もはや「売れよう」みたいな気持ちもほとんどなくなっていて。音楽シーンとか外部の声とか一切考えずにやりたいことをやろうと思って作った最初のアルバムです。そういう意味では今までよりも内省的だし、当然ウケも悪かった。

──『ランプ幻想』は当時、僕の周りでもいいと言っている人が多かった印象なのですが。

永井:きっと10人くらいですよ(笑)。僕らの体感としてはそんな感じでした。ラジオでもかからないし、雑誌から取材の依頼もこないし、「やっぱりダメなんだな」みたいにがっかりした記憶しかないです。だから今そうおっしゃっていただいてちょっと意外なんですよね。

Lamp『一夜のペーソス』
Lamp『一夜のペーソス』

──「部屋にひとり」は、今年リリースされた最新アルバム『一夜のペーソス』収録曲。この曲も再生数が高いです。

染谷:ニューアルバムの中でこの曲の再生回数が多いのは、単純にリリース前のサブミットで僕がこの曲を選んだからだと思います。メンバーに相談せず勝手にこの曲にしました。2人とも全く気にしてないと思いますが(笑)。

永井:「部屋にひとり」は、自分にとってはかなり重要な曲ですね。いつも1枚のアルバムに1曲はそういう曲があって、その周りに他の曲がある、という感じです。なので思い入れも強かったし、完成まで持っていくのには時間がかかりました。

染谷:2017年の時点で出来ていた曲だよね。前回のアルバムが2018年なんですけど、前年12月に新代田FEVERで開催したライブで初めて披露している。その時に「歌詞を変えたい」と言っていたけど、結局変えたんだっけ。

永井:変えた。とにかくここ5年くらい、ずっとこの曲を完成させられなくてモヤモヤしていたんですよ。でも今年の3月くらいに染谷さんから、「そろそろ完成させて」としつこく言われ(笑)、それでようやく仕上げることができました。

ルーティン活動がないバンドを続けていくために必要なこと

Lampインタビュー写真(撮影=林将平)

──ところでLampは他のバンドのようなルーティンで活動しているわけではないし、新作『一夜のペーソス』も数年ぶりに制作されたわけじゃないですか。

染谷:そもそもライブをほとんどやらないので、普段一緒にスタジオに入ったりすることもない。会う用事が少ないですよね。ただ、3人のグループLINEでは毎日のように他愛のない話が、特にここ(榊原と永井)ではよくやっている(笑)。なので、一緒にいるような感覚ではありますね。

榊原:私からすると彼らは毎日会っていました(笑)。当時、大陽と永井はバイト先が近くて。神保町の古本屋です。「◯時に交差点で」みたいなLINEを毎日のようにしていて。私はそれを見て「あ、また一緒にいる。ずるい」って思ってた。

染谷:一緒に昼ごはんを食べたりね。5年くらい前まで古本屋で15年くらいアルバイトをしていて、そういう意味では長い時間、永井とも一緒に過ごしていますね。

──断続的な活動で23年も続けてこられたのはなぜだと思いますか?

染谷:僕から見ると2人はあまり前に出たがらないタイプだし、自分から「こういうことがやりたい」とも言ってこないんですよね。その上、僕が考えた企画とかあらゆるオファーをまあほぼ嫌がるので(笑)、とにかく「無理強いをしない」ということは気をつけています。一方、僕は結構思い込んだら通したいタイプなので「どうしてもこれはやる!」と言ったことは2人を引っ張ってでも実現しちゃいます。それでなんとかアルバムを完成まで持っていったりツアーをやったりしているんです。2人はそういうところは僕を理解して歩調を合わせてくれてますね(笑)。

榊原:大陽のおかげでLampは続いていると言ってもいいかもしれない。バランスがいいんだと思いますね。彼のようなアグレッシブなタイプと、なんとなくついていく永井と私、みたいな。

──いい塩梅で引っ張ってくれているというか。

榊原:そうですね(笑)。そこは結構、考えてくれているんだと思います。

染谷:大変ですけどね、こういう人たちをずっと引っ張っていくのは(笑)。さっき、「部屋にひとり(Alone in My Room)」を完成するよう、僕が永井にしつこく言ったという件ですが、もうそれこそ10回、20回と言い続けるんですよ。いくら言ってもやらないから(笑)。それが一番大変で、今後の活動で「永井をどう動かしていくか」が最も悩ましいところなんですよね。

永井:いや、僕もわざとやらなかったわけではなくて、「できなかった」が真実です(笑)。できることなら毎年アルバムを出したいくらいの気持ちなんですけど、やっぱりそれは無理ですよ。俺からすると染谷さんみたいな人がちょっとおかしいんです(笑)。ほんと、常に曲を書きまくっていてすごいなと思うけど、同じようにはやっぱりできない。

──2000年代の作品がストリーミングなどを通じて今の若い世界中のリスナーに聞かれるようになり、それで新作を出すとなったときに音楽の作り方、届け方が変わったところはありますか?

染谷:バンドをやり始めた時から「売れた/売れなかった」で音楽を作るスタンスや信念みたいな部分は変わったらダメだなと思っていました。もちろんリスナーが増えることも、再生数が上がることも良いことです。ただ、音楽を作るときにそういうことは全く考えません。結果的にたくさん聴かれている僕らの楽曲も、ヒットさせるとか再生数だとかを一切気にせず純粋に音楽のことだけを考えて作ったわけですし、今回も同じように音楽と真摯に向き合いながら作りました。届け方に関してもそうですね。特にプロモーション活動などやってこなくてもこれだけ広まった経験があったので、今回も別にやらなくていいと思ったんです。新作に関しても今後少しずつでも広まっていけばそれで良いと思っています。

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