MUCC YUKKE×NIGHTMARE 咲人初対談 お互いへの印象や『悪夢69』で受けた刺激を明かす
結成25周年イヤーの集大成として、12月28日にアルバム『Timeless』をリリースするMUCC。過去アルバム8作品と向き合い、全4本に及ぶ再現ツアーを2022年10月から開催。そのグランドファイナルとなる初の東京国際フォーラム ホールA公演も12月28日に開催する。濃密なアニバーサリーイヤーにおいても、8月に行なわれたNIGHTMAREとのツーマンツアー『悪夢69』は際立ってインパクトが強かった。MUCCのYUKKE(Ba)とNIGHTMAREの咲人(Gt)の初対談がここに実現。出会いからツーマンの思い出、双方のバンドの印象や互いに受けた刺激について掘り下げていく。(大前多恵)
『悪夢69』でのコラボステージから受けた刺激
――まずはお2人の出会いからお聞かせください。
咲人:実は、プライベートでお会いしたことはないんです。昔、雑誌でMUCCさんとNIGHTMAREで表紙に登場した時にお会いしたのが初で、もちろん認識はしていましたけども。ミヤ(Gt)さんとはギタリスト会とか、逹瑯(Vo)さんも飲みの場でたまたまお会いすることがあったんですけど、YUKKEさんはいちばん謎でした。
YUKKE:対バンをしてもお互いに話すメンバーがたぶん違ったんですよね。例えば俺だったらNi~ya(Ba)くんとか、パート別に話していた気もするし。だから、咲人くんとちゃんと話すようになったきっかけは、ツーマンツアー『悪夢69』だったかもしれない。
――MUCCとNIGHTMAREはメジャーデビューが共に2003年。お互いの存在をどのように見ていましたか?
咲人:すごく昔の話をすると、うちのドラムのRUKAが前にやっていたバンドとMUCCさんが、仙台(NIGHTMAREの地元)のライヴハウスで対バンをしていて、その時に知って。「すごい世界観があるバンドさんだな」と思っていたんです。打ち上げに参加させてもらって「怖い人たちだな」と(笑)。ライヴもかっこよくて、初期の頃からずっと聴いています。
YUKKE:MUCCはかなり初期から仙台には行っていて、その頃からもうNIGHTMAREは活動していたんですよ。だから、MUCCの昔を知ってくれているバンドだし、年齢は少し下かもしれないですけど、同期な感じはしていますね。
――ツーマンツアー『悪夢69』を経て、YUKKEさんの謎のベールは剥がれてきたんですか?
咲人:ガワは何枚か(笑)。深層はまだ分からないですけど、自分が持っていたYUKKEさんのイメージと、いい意味で違ったというか。こういう言い方は失礼かもしれないですけど……俺の中での“YUKKEさん株”がすごく上がったんです。YUKKEさんの面白さ、エンターテイナー感を知れた、と言いますか。MUCCでライヴをしている時の立ち居振る舞いとか、音のカッコ良さとかはもちろんあるんですけど、人間的な懐の深さを垣間見た気がしていて。だから、自分の中で今いちばんYUKKEさんがアツいんです。
YUKKE:咲人くんのその気持ちに、実はちょっと気づいちゃったんですよ(笑)。『悪夢69』が終わってから、JAKIGAN MEISTER(咲人のソロプロジェクト)のライヴMCで俺の名前を出してくれているのをSNSでも見るし。サポートキーボーディストがMUCCと同じく吉田トオルさんなので、トオルさんから話を聴いても「咲人くん、たぶん俺のこと嫌いじゃないな」って。どう飽きられないようにするか、ですよね(笑)。
――『悪夢69』のファイナルでは、YUKKEさんがNIGHTMAREの「With」にゲスト参加。独自アレンジを加えた「With with YUKKE」は最高でしたよね。
YUKKE:めちゃめちゃ楽しかったな~。
咲人:楽しかったですね。ちょっと悔しさすらありました(笑)。
YUKKE:全然違うパートのメンバーがボーカルとしてセッションに参加する、というところから面白かった気はします。対バンの前にラジオでNIGHTMAREのメンバーと一緒になる機会があって、「『With』を歌いたい」なんて冗談で言ったのがきっかけだったんですけど。
咲人:「With」が好きと言ってくださったのもうれしかったし、ステージ上で他のバンドのメンバーさんと何かを一緒にやることがウチらはあまりなかったので、純粋に楽しみでワクワクしていて。始まったらのっけから「持っていかれた!」という感覚でした。ギターソロにYUKKEさんが語りを重ねていたんですけど、集中しすぎたのか、その後の歌に入れていなかったのが俺的にはポイント高くて(笑)。多くを語らないクールな性格の方なのかな? という印象があったのが、蓋を開けたら「とんでもないな、この人」っていう。
YUKKE:(笑)。俺としては、自分に対して咲人くんがこんなに興味を持ってくれることがまずは意外。でも、あのセッションは意外とおふざけでやっていたわけではなく、ここで初めて言うかもしれないし冷めちゃう話かもしれないですけど、結構練習したんですよ。アドリブはなくて、「どうしたら盛り上げられるかな? 記憶に残るものができるかな?」と戦略を考えたし、語りのところも「どうやったらいい感じで中途半端になるか?」という練習をしました。
咲人:じゃあ、あの歌に入れなかったのも計算ですか(笑)?
YUKKE:そういう練習はしていった(笑)。あとは、NIGHTMAREのメンバーが喜んでくれたらいいなっていう気持ちでしたね。
咲人:あのステージから、自分たちに足りないものを学んだ気がしていて。セッションであれば自分は「どれだけクオリティの高い演奏をするか」とか、当たり前の方向に行っちゃうんですけど、YUKKEさんが今おっしゃったみたいに「どうやったら楽しんでもらえるか?」という思考がなかったな、と。目から鱗が落ちた感があってすごく勉強にもなりました。
YUKKE:もちろん、土台がしっかりしているNIGHTMAREというバンドがある上だからできるわけで。でも、いい形になって良かったな、とは思っています。
――咲人さんはMUCCの「娼婦」を弾きたい、と志願されたとか。『悪夢69』でのセッションはどういう経緯で決まったのですか?
咲人:あれはたしか……大阪公演の後に打ち上げがあったんですけど、YUKKEさんのセッションは決まっていて、「MUCCさんに参加するのは誰にしよう?」「やりたい曲ある?」と聞かれて、「『娼婦』を弾きたいですね」という話をさせてもらった記憶があります。
――ステージ上でMUCCのメンバーに次々と絡んでいく、咲人さんのダイナミックなステージングが目を惹きました。
咲人:正直、人様の空間に入っていくのは、気持ち的には恐怖感もあるんです。でも単純に、MUCCの世界観の中に入っていける楽しみもあって。実は舞い上がりすぎて若干間違えてしまったんですが、一瞬でもバンドの一員になれた気がしてすごく楽しかったです。
――MUCCは対バン経験が豊富ですが、NIGHTMAREとのツーマンは他とどう違いましたか?
YUKKE:ここまでガッツリと一緒に撮影をしたり、1本じゃなくてライヴを数本やったりする絡み方は珍しくて。『悪夢69』みたいなタイトルをわざわざ掲げることも普段はあまりないんですよね。だから、この看板で次は別の絡み方を見せたいと思うし、可能性がある二組で、今後も想像しやすいですね。お客さんからも「また観たいです」という反響がすごく多くて、自分もロスになりましたし、来年でも再来年でもまたやってみたいです。
――反対にこれまで対バンをほとんど経験してこなかったNIGHTMAREですが、『悪夢69』はバンドに何をもたらしたと思われますか?
咲人:メンバーそれぞれ感じ方は違うと思うんですけど、俺の場合は、自分たちに足りないものとか、「こうしたら面白くなるんじゃないか」という案を思いついても、いろいろな事情があって実行できないことも多くて。でも、あのツーマンをやらせてもらったことによって自分のマインドの根底の部分が少し変わった気がしています。時間を経て、それがバンドに何かをもたらせるんじゃないのかな? と。あとはやっぱり、セッションだとか、一緒に何かをやる楽しさとか、メンバーを入れ替えてコピーをするとか、ああいうのも含めて改めて音楽やバンドの楽しさを 再確認できました。純粋に音楽を楽しんでいた中学生の頃のような気持ちに戻れて、「あぁ、こういう感覚を忘れてたな」みたいな。NIGHTMAREは今ツアー中なんですけど(※取材は12月上旬)、ライヴのリハが終わった後の短い時間、メンバーで最近はLUNA SEAのコピーをやっています。
YUKKE:今は、バンドマンが皆やりがちかもしれない(笑)。
――『悪夢69』のアンコールでは、BOØWYの「Dreamin'」、LUNA SEAの「END OF SORROW」と「WISH」を完全コピーされていましたね。
咲人:YUKKEさんとミヤさんがそれぞれJさんモデルと布袋(寅泰)さんモデルを持って出てきた時に、「うわ、 そこまでやるか!」と思って(笑)。
YUKKE:MUCCはセッションで本気になりがちだと思います(笑)。お客さんを楽しませたいし、ツーマンの相手にびっくりしてもらいたい気持ちもあるのかも。
――咲人さんはご実家にSUGIZOさんモデルを取りに行くかどうか迷った、とMCで話されていました。
咲人:自宅にもあるんですけど、実家に置いてあるほうのモデルが、今回YUKKEさんが使っていたあのJさんモデルとのマッチングとしては良かったんですよね、あの時期のものなので。でも、そのために実家に戻るのは時期的に厳しくて、泣く泣く。ご本人に許可をいただいて本物を借りるには、さすがに急すぎましたし。