MUCC ミヤ、シド 明希、キズ 来夢……プロデュースや配信ライブなど、ソロ活動で生み出す新たな価値
日々変化する音楽シーンを追っていると、バンドとしてだけでなくアーティストが個人で活動することで新たな価値を生み出す瞬間に立ち会うことがある。中でも印象的だった、MUCC・ミヤ、シド・明希、キズ・来夢の3人の最近の活動をピックアップして紹介したい。
MUCCのギタリストでメインコンポーザーをつとめるミヤは、所属事務所が制作したスタジオの監修を個人で担当。こだわりの機材を取り揃え、配信用にリニューアルを施した結果、団長(NoGoD)やゆうや(シド)らと共に行なった実験的番組『XXX STATION』の配信や、MUCCメンバー4人によるリハスタの生配信など、ハイクオリティな配信で視聴者を楽しませた。そもそも探求心が強い音楽家であるミヤは、これまでにもバンドの枠にとらわれない自由な個人活動を行なってきた。個人名義でのDJ活動や、イベントライブ『COMMUNE』のオーガナイザー、ハンドメイドイクイップメントブランド『矢口渡邉電線』の立ち上げ、そして他アーティストの楽曲プロデュースやエンジニアとしても活躍している。表舞台に立つアーティスト活動のみならず、プロデューサーやエンジニアといった裏方の職人的なポジションも、ミヤの音楽活動における大きな柱の一つと言っても過言ではない。
また先述した『COMMUNE』は、2015年から2016年にわたって開催された大規模なライブイベントで、D'ERLANGERやPlastic Treeなど90年代から活躍するレジェンド的なバンドから、DEZERT、アルルカンなど今のV系シーンを盛り上げるバンドまで、世代を超えたアーティストたちを一挙に集結させた。これまではライブを通じて大御所と若手世代を繋ぎ、シーンを盛り上げてきたミヤだが、7月21日には後輩バンドであるアルルカンの配信ライブ『シネマティックサーカス』のサウンドプロデュースを担当した。今後はプロデューサーとしても後世に大きな影響を与えていくに違いない。
逆に、アーティストとしてもっと音楽を発信していきたいという高いモチベーションからソロ活動をスタートさせたのは、MUCCの直属の後輩であるシドのベーシスト・明希である。2015年にソロアーティスト・AKiとしてデビューして以来、コンスタントにツアーを開催してきた彼は、6月17日に5年半ぶりのアルバム『Collapsed Land』をリリース。さらに7月20日にはYOUSAY(ex.THE KIDDIE)やシンガーソングライターのGen、そしてファッションモデルとして活躍するLIAM TAKAISHI(髙石リエム)と共に、4人組の新プロジェクト「UGRA」を始動させ、7月26日にはAKiとして初の無観客配信ライブを開催するなど、このコロナ禍でも怒涛の勢いで活動を展開している。
彼のバイタリティの高さには驚かされるばかりであるが、7月6日に出演した音楽番組『いじくりROCKS!』で「シドでリリースできる楽曲よりも、もっと多くの曲を作りたい。もっとやりたいことを実現させたい」という熱い想いからソロプロジェクトを始動させたと知り、納得した。さらに同番組内では、MUCCのボーカル・逹瑯が「(明希がソロで活動する中で)ベーシストとしてだけでなく、ボーカルとしてステージに立っていたからこそ、配信も一人でやれる度胸がついたのだろう」と彼を評価する場面もあった。明希の音楽に対する熱量が、彼の活動において良い循環を生み出していることがわかる。