MUCCのパフォーマンスから感じた、配信ライブの新たな可能性 メンバー4人の絆も垣間見えた公演に
6月21日、『~Fight against COVID-19 #2~「惡-THE BROKEN RESUSCITATION」』と題したMUCCの無観客有料配信ライブが行なわれた。私はこのライブが決して“生ライブの代替品”ではなく、配信という形でしか実現できない、完成されたライブだったと感じている。
この日MUCCは、当初ぴあアリーナMMでのワンマンライヴを開催する予定だったが、コロナウイルスの影響により、急遽生配信ライヴへの変更を決断した。今年で結成23年目を迎えたMUCCだが、配信ライブはこれが初めて。その上、準備に使える時間も恐らく十分ではなかったはずだ。にもかかわらず、クオリティの高さ・熱量、共に圧倒的なものを見せてくれた。配信直後のTwitterでは「#MUCC無観客ライブ」のタグを使った絶賛の声が次々に寄せられ、一時はトレンド入りを果たした。有料配信のため、具体的な演出内容には言及しないが、本ライブを観ての所感を記しておきたい。
ライブ序盤から見せつけられたのは、生配信とは思えないクオリティの高さだ。カメラワーク、照明、映像、音質など、全てが妥協なしのプロの技で完璧に作りこまれている。メンバーのみならず、彼らを支えるスタッフたちの並々ならぬ熱意が伝わってくる出来栄えであった。さらに、無観客ならではの自由な会場の使い方や小道具による演出、配信ライブならではの映像技術など、普段のライブでは観られない、新たなMUCCのステージを見せてくれた。配信後には、リーダー兼ギタリストのミヤが自身のInstagramへ投稿した「チケット代金から考えると、カメラの台数、演出、正直全てがオーバースペックでした。でも今後につなげるため、強気で行きました」というメッセージからも、相当気合いの入ったステージであったことがわかる。
配信ライブにおける難点の一つに、現場の熱量を画面越しに伝える難しさがあると思う。たとえばバンド側が「行けんのか!」と煽ったとしても、パソコンやスマホの向こうにいる観客たちへ生のライヴと同じように熱量を伝えるのは難しく、そこで温度差が生まれてしまう。しかしこのライヴでは、圧倒的なクオリティや新鮮な演出が観ている者を画面に没入させ、メンバーと同じ速度で温度を高めてくれた。そのため、生のライブに近い熱量を感じられたのだ。ゆえに彼らは、生のライブともライブDVDともMVとも違う、配信ライブの“新たな正解の形”を生み出したと言えるだろう。