電気グルーヴ、[Alexandros]、奥田民生……福島に根付く2年目の大型フェス『LIVE AZUMA 2023』を観て
PARK STAGEまで目を向けるとMONKEY MAJIKのステージにHUNGER(GAGLE)が登場しての「This Is The Night」、Shin SakiuraのライブにFurui Rihoが参加していたが、すでにコラボをする形で出演がアナウンスされていたのがAwich+SOIL&”PIMP”SESSIONSだ。AwichがSOIL&”PIMP”SESSIONSをバンドメンバーに迎えた特別編成で、「Queendom」を皮切りにSOILとのコラボ曲「Heaven on Earth」といったナンバーで“QUEEN OF STAGE”としての貫禄を見せつける。いわき市に友達が住んでいるというAwichが、沖縄から一人で飛行機に乗り初めて旅をしたのが福島だったと振り返った後、福島の子どもたちの未来を思い選曲した「TSUBASA」では、Awichの祈りのような優しい歌声が福島の夜空を包み込んでいた。
AwichはKアリーナ横浜での自身初のアリーナワンマンライブが直前に控えているなかでの出演だったが、Chilli Beans.、iri、水曜日のカンパネラ、Kroi、KANA-BOONと2024年に日本武道館での公演が予定されているアーティストが多くいたのも印象的だった。さらに言えば、羊文学が横浜アリーナ、ハンブレッダーズが大阪城ホールという例もある。羊文学は昨年開催直前に出演キャンセルとなってしまったが、今年ひと回りもふた回りもスケールアップした、思いのこもったライブでリベンジを果たしてくれた。
残念ながら今年はKANA-BOONが直前になって出演キャンセルに。当日は出演予定だった時間に「シルエット」「ないものねだり」「ソングオブザデッド」といったKANA-BOONのライブチューンが球場に響き、多くのファンの拳が上がっていた。谷口鮪がすでにSNSでリベンジを誓っているが、来年はとびきり気合いの入ったステージを見せてくれるはずだ。
なお、今回会場にKANA-BOONの曲が流れたのは、一通のメールがきっかけにあった。そこに書かれていたのは、『LIVE AZUMA 2023』でKANA-BOONのライブを初めて観るのをずっと前から楽しみにしていた子供たちに、フェスでの楽しい記憶を残してあげたいという親御さんからの思いのこもった内容であり、心打たれた主催チームがアーティストサイドの了承のもと設けた特別な時間だった。
今年は昨年に比べ親子連れの姿も多く見られ、特にきゃりーぱみゅぱみゅといった世代を問わずに楽しめるアーティストでは、球場後方で自由にはしゃぎ回る子供たちの姿が見られた。イヤーマフの貸し出しもあり、家族で参加できるフェスとして徐々に浸透している実感が筆者にはある。山形や茨城といったナンバープレートは東北、北関東のような県外からのフェス参加者を可視化していたが、一方で気軽に参加できるフェスとして地元に認知、定着しつつあることも表していたのではないかと思う。もちろん、開催場所が標高の高い吾妻連峰の麓ということで、昼と夜の寒暖差が激しいことは誤解のないよう、ここにきちんと記しておかなければならない。
フェス全体では、アート・グルメ・マーケットを主軸としたエリア「PARK LIFE 2023」の出店数が昨年に比べて増加。なかでも会津地酒支援プロジェクトとして販売された限定ボトル「冩樂×LIVE AZUMA 純米吟醸」は即完だったと聞いている。昨年に続き、東北拉麺屋台村も賑わいを見せていた。今年大きく変わったのは、球場のスタンド席が解放されたこと。昨年、ウルフルズのトータス松本がスタンド席にもお客さんを入れればいいのではという旨のMCをしていたが、今年から早速採用された形でもある。食事をとりながら、ゆっくりステージを観られるというのはもちろん、雨避けができるという最大の利点は2日目に存分に発揮され、全体の一部を販売したスタンド自由席は完売した。
多くのアーティストがMC内で福島への愛を伝えていたなかで、最も心打たれたのが田島貴男の言葉だった。Original Loveのアルバム『MUSIC, DANCE & LOVE』から最新型のソウルミュージックを届けた田島は、郡山高等学校の出身。青春時代には仙台などにライブを観に行っていたという彼は、当時このような大きなフェスは福島にはなかったと振り返る。だからこそ、福島の地でフェスが開催されること、今こうしてステージ側に立てていることが嬉しいと田島は笑みを浮かべる。これは個人的な思いになるが、福島市出身の筆者がその田島のエピソードを聞き「一緒だ」と共感するものがあった。田島とはひと回り以上も年齢は違うものの、筆者もまた青春時代に仙台や東京にライブを観に行っていた過去がある。だからこそこうして『LIVE AZUMA』にライターとして参加しているわけだが、田島がオーディエンスに向けて言った「5年後ぐらいにこっちにきているかもしれない」という言葉は決して夢物語ではなく、『LIVE AZUMA』が続いていった先で目の当たりにしたい未来だと思った。
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