SARMが語る、アーティストとしての目覚め 「Ai ga shitaino」に込めた祈りのようなメッセージ
SARMが、11月1日に新曲「Ai ga shitaino」をリリースした。「AI」と「愛」をかけたタイトルとなった同楽曲では、その名の通り“愛”について歌われている。リアルサウンドでは、楽曲のリリースを機にSARMにインタビュー。音楽活動を始めた経緯から、TikTokのUGCを中心に「BONBON GiRL」がヒットした当時の心境、そして「Ai ga shitaino」の制作背景や一部AIで生成したリリックビデオ、アートワーク、まもなく開催する恵比寿BLUE NOTE PLACEでのライブについてまでじっくりと話を聞いた。(編集部/取材は10月末に実施)
SARMというアーティスト名は「急に言葉が降りてきた」
──SARMさんが音楽活動を始めたきっかけは?
SARM:小中高生の頃から、廊下だったり教室だったり、気づいたらどこでも歌っていたんです。高校生になって、クラスメイトの子が「そんなに音楽が好きなら、シンガーになればいいんじゃない?」と言ってくれて。「あ、好きなことを仕事にしてもいいんだ」とハッとしたんですね。そこから「私はシンガーになるんだ」と思いながら、日常生活を送るようになって。ある日、街中を歩いていると向こう側から歩いてくる人がいて、“私に喋りかけてくるな”と直感で思ったんですね。もしその人に喋りかけられたら、自分がシンガーになりたいって話そうと決めていて。そうしたら本当に喋りかけてくれたので、「私はシンガーになりたいねん」と言ったら、その方が音楽関係の人だったんです。
──おぉ……すごい展開ですね。
SARM:それをきっかけにその方が、オーガナイザーや関係者の方に「この子をイベントに出させてあげて」と言ってくれて。当時はオリジナル曲がなかったんですけど、ありがたいことにステージに立たせてもらうようになって、アーティスト活動が始まりました。
──当時はどんな曲を歌っていたんですか?
SARM:「ラヴ・イズ・オーヴァー」(欧陽菲菲)とか「Take the 'A' Train」とかアリシア・キーズも歌っていたし、いろいろですね。ジャンルで言うと、ジャズ、ブルース、ソウル、歌謡曲が多かったです。
──そこからの音楽活動は?
SARM:ライブハウスで歌い始めて2、3回目ぐらいの頃に、3rdシングルの「BONBON GiRL」などを一緒に作ってくれたプロデューサーの人と出会ったんです。初めて私のライブを観てくださった時に興味を持ってくれて。私のライブをモニターで観ていたらしいんですけど、“もう話しかけに行かなあかん!”と思ってくださったみたいで、ライブが終わった瞬間にすごい勢いで走ってきて「トラックを作らせてくれへんか?」と言われたので「私も作ってくれる人が欲しいなって思ってた」と返して、そこから長い付き合いが始まりました。
──アーティスト名は初期の頃からSARMなんですか?
SARM:中学生の頃に塾で勉強していた時に、急に“SARM”って言葉が降りてきて「あ、私は今日からSARMだ」みたいな感じになって。次の日、学校へ行って「みんな、今日からウチのことをSARMって呼んで」と言って、そこからSARMです。
──自分のあだ名を自ら普及するのがいいですよね。
SARM:(笑)。
──そもそも太陽(SUN)と月(MOON)でSARMって名づけるセンスも、めちゃくちゃ面白いなと思いましたよ。それも中学生で。
SARM:あ、それも後々分かったんですよ。最初にSARMという名前が降ってきて、それを自分に名づけて。高校3年生の頃に、美術の授業で卒業作品を描いていたんですけど、それが太陽と月の中に全ての生命……神羅万象を描いてて。その絵がバーンってできた時に「あ、この絵は自分だ! SARMってSUN & MOONだったんだ!」と思って。
──後から意味が合致したってことですか?
SARM:曲を作っている時もそういうことが多いです。「なんだろう、この言葉?」と思いつつ歌詞が完成したら、自分の本質から伝えたかったことに繋がっていた。そういう感じなんですよね。
──これまでどんな音楽を通ってきましたか?
SARM:ジャンルで言うと、最初に血が騒いだのがブルース。ライブバーで歌っていた時も、ブルースとかジャズを歌ってと言われることが多かったですね。その中でも最初はブルースを好んで歌っていました。
──ブルースを歌えるのはどうしてなんですか? 歌を習っていたとか?
SARM:全然習ってないです。ブルースという音楽を知って、ブルースの人の声を聴いていたら「あ、自分だ」みたいになったんです。小学生の頃に「なんでそんな歌い方するの?」と友達に言われたぐらい、昔から歌の癖が強かった。幼い頃から染みついている自分の歌い方や声の感じが、ブルースを歌う方々と同じ気がしたんです。
──あとライブバーのオーナーがジャニス・ジョプリンが好きだったそうで。
SARM:あ、そうです。「君はこれを観た方がいい」と言って、急にパソコンを開いてジャニスのライブ映像を観せてくれたんですけど、それが衝撃すぎて。そのライブ映像がやばかったのもあるけど、込められている熱量が莫大すぎて「こんな人間を見たのは初めて」みたいな。自分も歌でこういうエネルギーを詰め込みたい、と思うきっかけをくれました。
──日本の音楽ではどんなものを聴いていましたか?
SARM:子供の頃におじいちゃんがMDウォークマンをくれたんですけど、その中に美空ひばりさんの曲が入ったMDを入れてくれていて。それをずっと聴いていました。
──SARMさんの好きな昭和歌謡のルーツには、美空ひばりさんがいた。
SARM:そうですね。それもブルース同様に血が騒いで、美空ひばりさんの曲はずっと聴いていました。日本の音楽だと民謡も好きで。ひいおじいちゃんとひいおばあちゃんが三味線で日本全国を回っていたので、そういう影響もあるかもしれないです。
──ちなみに金子マリさんって好きだったりします?
SARM:はい、ライブも観ました! おこがましいかもしれないですけど、その世代の方達と共鳴する部分があるなと思っていて。それが何なのかはハッキリと言えないですけど、なんとなくそう思うんですよね。
──歌を通して自分が伝えたいメッセージは、どの辺りで形成されたと思います?
SARM:10代の頃に書いていたのは、日記というか体験って感じだったんですね。だけど最近になって、自分は愛や光というものを人々に届けたいんだなって自覚した時に、歌詞でもそれを意識して書くようになりました。
──強い女性観を感じるし、「I don't wanna do」のような虐待やパワハラなどで悲しい状況にいる人に対して救いを与えようとするのも、SARMさんの音楽の大きな要素かなと思って。
SARM:そこも最近は変わってきていて。前までは現実的な日記の書き方だったけど、最近は精神的な日記の書き方。伝わりますかね?
──その変化は楽曲を聴くと如実に伝わってきますよ。あまり状況説明などはなくて、まさに精神の愛を歌ってる。特に、愛と平和をテーマにした前作「D♡VE QUEEN」と今作「AI ga shitaino」で今のモードが変わった感じがして。
SARM:そうですね。それこそ「AI ga shitaino」は今までで、一番分かりやすく出ているんじゃないかなって思います。