「BONBON GiRL」のバズで注目、新世代アーティスト SARMとは? クリエイターも支持する音楽性と特徴的なボーカル
SNSでのバズにより、過去にリリースされた作品が突然日の目を浴びることも珍しくなくなってきた。昨年から今年にかけてTikTokで人気となった「BONBON GiRL」もその一つである。「BONBON GiRL」は2020年10月にリリースされたSARMの3rdシングルで、J-WAVEのNEXTブレイクソング「SONAR TRAX」にも選ばれ話題となり、それから約2年経った昨年8月にもSpotifyバイラルチャートにランクイン。これを受けて今、SARMに注目が集まっている。
SARMは特徴的なハスキーボイスが魅力のシンガーソングライター。ジャズやブルース、ソウルといった音楽をルーツに持ち、それらを現代にアップデートした独自の音楽性を確立している。ライブパフォーマンスにも定評があり、2020年には若手の登竜門として名高い『FUJI ROCK FESTIVAL』「ROOKIE A GO-GO」のオンライン版「LIVE ON YOUTUBE ROOKIE A GO-GO」に出演するなど、今後の飛躍が期待されている新世代アーティストだ。
「BONBON GiRL」が最初に使用された投稿は、ごくシンプルなものだったという。好きな楽曲を紹介するだけのアカウントによる初投稿で、「強い女になれる曲」のテキストとともに曲に合わせてリリックが流れるショートムービーだった。しかし、そこから多くのユーザーに波及。劇場版アニメ『ONE PIECE FILM RED』のMAD動画や、“海外イケメン”の映像に合わせて使われるなどしたことで、投稿が爆発的に増加していく。これにより各種チャートを駆けのぼり、Billboard JAPAN「Heatseekers Songs」では9位まで上昇。この現象は『音楽デジタルマーケティングの教科書 ポストSNS時代のヒットの作り方』(リットーミュージック/著者:脇田敬、山口哲一)にも事例として紹介され、TikTok発のヒット曲として認知されていくこととなる。
そしてこのバズはアーティストの間にも広がっていった。2023年1月に『スッキリ』(日本テレビ系)でマンスリーMCを務めたALIのボーカル・LEOが「ヤバい!!絶対に聴いてほしいアーティスト!」にてSARMを特集。また、亀田誠治やm-floの☆Taku TakahashiもSARMを注目アーティストと公言するなど、音楽関係者からの支持も高まっている。SARMはこのヒット以前から CHICO CARITOやYonYonなどのアーティストの作品に客演として招かれており、ミュージシャンやクリエイターからの評価は高い。そのため一時のバズにとどまらず、その才能がしっかりと世の中に評価されているのだ。
SARMの音楽の魅力は、特徴的なハスキーボイスもさることながら、フックの面白さにある。例えば「BONBON GiRL」で何度も繰り返される〈BONBON〉というフレーズは、一度聴いただけでも耳から離れないような中毒性がある。わずか数秒で視聴者の心を掴むことが求められるTikTokでバズったことが、この曲のキャッチーさが確かであることの証だ。
もちろん歌声の魅力は言うまでもない。とりわけ昨年12月にリリースされた「かわいい男の子」(アニメ『LUPIN ZERO』劇中歌)では、古き良きポップスの雰囲気を漂わせるサウンドの上で、スモーキーかつ優雅な歌唱を披露している。SARMのボーカルの深みを最もよく味わえる一曲と言えるだろう。