imase、TikTok40億再生のヒット曲を作っても庶民派な価値観 「自分の生活水準を上げたくない」

imase、ブレイク後も庶民派な価値観

価値観が狂うと全部が狂っていっちゃう気がする

ーー歌詞に関してもお聞きしたいんですけど。imaseさんの歌詞は「チル」や「セルフラブ」といったテーマ性を感じるものも多いです。忙しさや溢れるほどの情報に追われてしまいがちな現代ですが、imaseさんはもともと、忙しさに追われることが苦手だったりしますか。

imase:マイペースな性格なので、苦手かもしれません。息抜きがあまり上手くないので、問題を解決するまではストレスを抱えたままのことも多いですね。初ライブが決まってからは、終わるまでずっと緊張していましたし。嫌なことがあったら引きずってしまうこともあります。

【imase】ユートピア(MV)

ーー「ユートピア」(2023年)の〈愛してたいね myself〉〈変わらぬ暮らしがあればいいさ〉なんて歌詞も、すごくimaseさんらしいというか。

imase:この曲はタイアップをいただいて書き下ろしました。自分自身を愛することが大事だよって、自分に向けて歌ってるところもありますね。自分を愛するってなかなか難しいですよね。

ーーそして上昇志向ではなく〈変わらぬ暮らし〉を求めてるんですね。

imase:〈変わらぬ暮らし〉っていうのもまた、それはそれで難しいですよね。例えば今めちゃくちゃ裕福になったとしたら変わらぬ暮らしは難しいかもしれないし、そこから元の生活に戻ったらそれは果たして変わらぬ暮らしと言えるのか……みたいな。そう考えると〈変わらぬ暮らし〉って結構、哲学的ですよね(笑)。

ーー自分の価値観にも関わってくることですよね、さっきおっしゃっていた「タクシーが高いから乗らない」っていうこともそうですし。

imase:何年か後には「全然タクシー乗るでしょ~」とか言い出したりして(笑)。まあ、そんなことはないと思います(笑)。

imase

ーーすごく堅実な価値観をお持ちなのかなと思います。

imase:自分の生活水準を上げたくないですし、今持っている価値観をあまり崩したくないなと思っています。やっぱり〈変わらぬ暮らし〉を大事にしたいし、価値観が狂うと全部が狂っていっちゃう気がするので。そこは大切にしたいですね。

ーーアーティストとして色んなことを経験されている中でも、ひとりの人間として自分はこうありたいというのをちゃんと持ってなきゃ、という危機感がある。

imase:そうですね。常に初心は忘れずにいたいです。

【imase】アナログライフ(MV)

ーーそうしたimaseさんの価値観がしっかりと見えてくるような歌詞がある一方で、「アナログライフ」(2022年)の〈心はモノクロで味気ないわ/腹をすかせていた〉という描写のように、ふわっとした印象の歌詞もあるんですよね。

imase:その時期は、“抽象的なものこそ正義”と思っていたんです。その方が幅広く聴いてもらえるかなと。でも今年に入ってからは、意外とそうでもないのかな、直接的な表現のほうが共感してもらいやすいのかなと思うようになって。制作の時期によって歌詞の書き方や考え方が変わったりしています。当時抽象的な歌詞を書いたもうひとつの理由として、語感を優先したかったからということもあります。でも最近は、語感が少し崩れても歌詞の意味を重視したいときもあったり。そういうところも、成長であり変化だなと思います。

【imase】逃避行(MV)

ーーimaseさんは声の使い方でメッセージの印象を変えることもできる方なんだなと思っていて。例えば「逃避行」(2022年)とか歌詞だけ読むと割とシリアスな内容でも、ファルセットを使った声で重みを減らすこともできる。

imase:ありがとうございます。ファルセットと地声の使い分けはとても意識していますし、それによってシリアスになりすぎないというのはあるかもしれないですね。

ーーちなみにimaseとして音楽活動をする前にもカラオケとかで歌う機会ってあったと思いますが、ファルセットと地声を使い分けたりしてました?

imase:いや、全くです。ロックっぽい、地声を張る歌い方をしていました。でも自分で作る曲にはローファイやR&Bのような歌い方のほうが合うなと思い、そっちに寄せていきました。

ーー「NIGHT DANCER」(2022年)でのブレイク以降、国内外で色んな経験をされたと思いますが、中でも印象に残っているのはどんなことですか。

imase:フェスに出演したことは印象深かったです。あんなに多くの人の前でライブをしたことはなかったですし。「曲は聴いたことあるけどimaseってどんなライブをするんだろう?」と思って観に来てくださった方が大半だったと思いますが、そういう方々が楽しんで一緒に歌ってくれたりしていて、すごく嬉しかったです。

LE SSERAFIM (르세라핌) 'Jewelry (Prod. imase)' LIVE CLIP

ーー最近ではLE SSERAFIMのライブで、imaseさんが書き下ろされた「ジュエリー (Prod. imase)」(2023年)をメンバーと観客がアカペラで歌う場面もありました。それもまたすごい経験ですよね。

imase:そうですね。他アーティストへの楽曲提供も初めてでしたし。僕もライブを観させていただきましたが、自分が書いた曲を自分以外のアーティストが歌っていて、さらにそれをファンの方々が歌ってくれるというのは、圧巻の光景でした。楽曲提供のお話をいただいたときはすごくびっくりしました。でもそれも、韓国での「NIGHT DANCER」バズがあってのことだと思うので、人生何が起きるかわからないなと感じています。

ーーそんなimaseさんの今後の活動目標ってどういうものですか。

imase:日本語でも国内外問わず多くの方々に聴いてもらえるような曲を作りたいです。藤井 風さんを筆頭に、海外でも日本語の曲を聴いてもらえる機会が増えてきていると思います。そこに面白さを感じていますし、挑戦したいなと思っています。

ーー韓国やタイでもファンの方がimaseさんの曲を日本語で歌ってくださっているのが嬉しいですよね。

imase:本当にありがたいですし、嬉しいですね。

imase
ーー国内外でバズを起こすimaseさんのポップな感覚って、どういう日常の中で培われているものなんですか。

imase:昔から良くも悪くもミーハーなところがあるんです。そういう感覚は、多くの人にとってのポップな感覚に近い気がしています。でも、そこは変わりやすかったりもすると思っていて。活動当初は自分のナチュラルなポップさだったと思いますが、今は「今度はこういう曲が作りたい」とか「こういうものが求められている」とか、色々な想いが出てきて。それに、自分がより音楽に詳しくなって好きな系統が変わってくるとポップの感覚も変わってくる気がします。そんな中でも、もともとミーハーである自分のポップなバランス感は大事にしたいですね。

ーーちょっと撮影を拝見しただけでも、お茶目さやユーモアのある方だなと思いました。制作においてもノリや思いつきを活かすことも多いですか。

imase:多いと思います。最近それって大事なことだなと思うようになりました。「これだ!」って決めつけずに違う見方をしてみると、良いものや新しい発想が生まれたりするので。活動を始めたばかりの頃は、音楽制作に関して知識もなにもなかったからこそできたこともあって。地声を張ったロックな曲のスタイルでずっとやっていたら、今のスタイルって絶対にできなかったと思うんですよ。なので音楽を作り始めたばかりの頃の軽やかさは、今も大事にしたいなと思うところなんですよね。

ーーちなみに最近はどんな音楽に興味がありますか。

imase:ハイパーポップとかテクノとかが好きで。特にFrost Childrenというハイパーポップデュオの曲をよく聴いています。あとは高校のときによく聴いていたEDMを聴き返したり。NewJeansさんも好きだし、秋元薫さんの「Dress Down」とか……結構バラバラですね(笑)。星野源さんの「生命体」は今日すでに4回聴きました! 僕にとって星野源さんの存在ってやっぱり大きいです。

ーー今回はまさに変化の真っ只中にいるimaseさんにお話をお伺いできて良かったです。

imase:今は新たな楽曲を制作中です。3年後の自分がどうなっているかが想像つかないですが(笑)、これからもがんばります。

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