Vaundyとimase、2000年生まれの2大ヒットメーカーが備える共通項 バズを手繰り寄せる俯瞰の視点と嗅覚

 2020年以降、YouTubeやTikTokなどのSNSをきっかけにブレイクするアーティストが急増した印象がある。その背景には、コロナ禍においてライブも含めアーティスト活動が大きく制限されたこともあるだろうが、結果としてアーティストの活動展開の多様化につながったように思う。コロナ禍以前の動きではあるが、例えば音楽配信サブスクリプションサービスの浸透によって、リリース形態はCDから配信メインへと変化。新曲がひとつあればリリースできるという利便性の後押しもあり、デジタルリリースを主軸に考えるアーティストが圧倒的に増えた。また配信という形態自体も、TikTokやInstagramのリール、YouTubeショートで楽曲の一部を先行配信するなど、この1~2年でさらに多様化している。

 この“供給ルートの変化”を敏感に捉え、ヒットにつなげたアーティストは数多くいる。その中でも、しっかりとライブもできるアーティストが複数出てきたのは、これからの音楽シーンにおいてとても喜ばしいことだ。SNSへの投稿やデジタルリリースの利便性は、じつはアーティストの地力を浮き彫りにするリリース形態だと考える。1曲バズを起こし、何曲かデジタルリリースで結果を残しても、その次に出てくるリスナーの需要に対応できなければ、後には続かない。その次なる需要とは、楽曲や作品、歌詞や気分だけでなく、空間をアーティストと共有するライブである。そこでアーティストの実態と実力を見出せなければ、リスナーがファンにまで至ることは少ないだろう。

 このようなシビアな現実の中で、デジタルリリースの利便性、映像、SNSを多角的に使うことで、着実にステップアップしている2人の男性アーティストに注目したい。

Vaundy LIVE "怪獣の花唄" | 2023.03.26 Vaundy one man live tour "replica" (JAPAN/TOKYO)

 まずは、実力や認知度という意味でも筆頭にあげられるのがVaundyだろう。今や、各音楽配信サブスクリプションサービスの新曲プレイリストや、ヒット曲プレイリストの常連である。2021年から精力的にライブ活動を展開し、2022年には日本武道館2Days公演を大成功に収めたほか、『第73回NHK紅白歌合戦』では白組として「怪獣の花唄」を披露。加えて自身が楽曲提供した「おもかげ」(milet×Aimer×幾田りら)にも紅組として歌唱参加するなど、国民的音楽番組への出演を機にファン層を確実に拡大した。2023年に開催したホールツアー『Vaundy one man live tour 2023 Spring』は全公演のチケットが即完。当初は全22公演であったが、即完を受けた追加公演を含めて全24公演のツアーを完遂した。

【imase】NIGHT DANCER(1st Live『POP OVER』)

 そして、もう1人が新鋭のimaseだ。2020年に音楽活動をスタートさせた彼は、2021年春頃からTikTokにオリジナル曲を投稿し始める。最初は顔出しをせず、イラストやアニメ、イメージ映像などでの投稿だったが、10月頃から打ち込みの機材を操作しながら歌うというスタイルの弾き語り動画を投稿するようになると、再生数が一気にアップ。軒並み100万再生を突破するようになり、注目を集めた。同年12月にデジタルリリースされた「Have a nice day」はSpotify日本バイラル週間チャートで1位、続いてリリースされた「逃避行」はBillboard Japan TikTok HOT SONG Weekly Ranking 1位と、デビュー以前からの注目度の高さがわかる結果を残している。

 そんなimaseが知名度をあげたのは、2022年8月リリースの「NIGHT DANCER」だ。TikTokの踊ってみた動画が国内外でバズり、韓国のボーイズグループ Stray Kidsがダンスチャレンジ動画を投稿したほか、グローバルファンダムライフ・プラットフォームのWeverseでBTSのJUNG KOOKが同曲のカバーを披露し、世界中から注目される1曲に。2023年には地上波テレビで初パフォーマンス、『SUMMER SONIC 2023』などの夏フェス、そして韓国や台湾でのイベント出演など、まさに大車輪の活躍を見せている。なお、10月に東名阪で開催される初のツアー 『imase 1st Live Tour 2023』のチケットも発売と同時に即完している。

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