SKY-HI&ØMI、同学年プロデューサーが語りあった日本のエンタメの課題 「輸入があるのに輸出がないのは相当危ない状況」
日本最大級のクリエイティブフェスティバル『J-WAVE INNOVATION WORLD FESTA 2023』(通称:イノフェス)が、10月13日から3日間にわたり開催。今回で8回目を迎える『イノフェス』では、毎年、各界の先駆者によるトークセッションや人気アーティストによるライブパフォーマンス、テクノロジー体験エリアなどを展開し、テクノロジーと人間が調和した世界を考える次世代フェスとしての存在感を確立している。
初日に注目を集めたのが、BE:FIRSTやMAZZELが所属するBMSGの代表であるSKY-HIとLDHによるオーディション『iCON Z ~Dreams For Children~』のガールズグループ部門およびそこから誕生したMOONCHILDのプロデューサーを務めるØMI(三代目 J SOUL BROTHERS)によるトークセッションだ。今年の『イノフェス』のテーマである「The Future is Now」の文字通り、まさに今、何足ものわらじを履いて日本のエンターテインメントに取り組んでいる二人の同学年プロデューサーが、「日本の音楽シーンの今と未来」を幅広い視点から語った。
先日MAZZELとMOONCHILDが出演した『Rolling Stone Japan LIVE 2023』でも会っていたという二人。ØMIはMAZZELのパフォーマンスを観た感想について「完成度の高さや、SKY-HIくんのDNAが入っているのを感じ取れた」と述べ、「彼らがいい表情とかをした時に、横で(SKY-HIが)『イェーイ! 今のやばい!』みたいなリアクションを毎回取っているのも印象的でした。俺はどちらかというと親心で見ているんだけど、喜怒哀楽をともに感じているのがSKY-HIくんのスタイル、人間性なのだなと」と自身との違いにも言及。これに対しSKY-HIは「僕はオーディション段階からずっとそうですね。いいパフォーマンスを見られたことが嬉しくて、テンションがあがっちゃって。自分がプロデュースしている方々の人生を一緒に背負わせてもらっている以上は“自分ごと”です」とコメントした。
今回のテーマの一つは「プレーヤーとして感じてきたエンタメの課題」。まずはあらためて、それぞれがプロデューサー業を始めたきっかけを明かした。
30歳になる2017年頃から起業を考えていたというSKY-HI。「本当はこういう風にやりたいけど世の中に求められてない気がする」という相談を受けることが増え、今まで自分が苦しんできたのはこの人たちを救うためだと思い、起業と同時にオーディションの開催を発表したのがプロデューサー人生の起点だったそう。
一方、ØMIもソロ活動を本格的に始めた2017年頃、人から相談を受けることが増え、LDHの一事業として自身がプロデュースする「CDL entertainment」をスタートさせた。その延長線上にプロデュース業やオーディション『iCON Z』があり、MOONCHILDを立ち上げるに至ったという。ガールズグループのプロデュース業を手がける理由について、「日本にはガールズグループが育ちにくい環境があって。巨大な女性アイドル文化がつくられてきた歴史はあるけど、違ったスタイルでグローバルスタンダードな音楽をやっていけるグループがもっと出てくるべきじゃないか、なんでここまでそういうグループがないんだろう、と以前から自分の中でも疑問だった」と明かした。
SKY-HIも、「日本では、Aという強烈な成功体験が生まれた時にA’やA’’はうまく行きやすいけど、その成功のフォームから外れたBは成長しづらいんだよね。“大企業病”が日本のエンターテインメントで起こってしまうのが非常に不健康だと思っていたので、自分と同世代であるØMIくんのような方がガールズグループのフォームに違う角度からの提案をするというのは、すごく素敵なことだと思いました」と頷いた。
続けてØMIはSKY-HIによる、垣根を越えてダンス&ボーカルグループが集結するプロジェクト『D.U.N.K.』に言及。「日本のエンタメ界は凝り固まっている部分があるけど、そこに一つ強烈なアクセントを入れてくれているなと、見ていて刺激をもらいます」と話した。これに対しSKY-HIは「健全な競争は絶対に存在していた方が良いので、同業他社の活躍は大切なことだと強く思っています。さらに、今は東アジアの人口や経済がすごく伸びていて、エンターテインメント領域でもアジアが注目されている。でも悲しいことに、アメリカから見ると、日本は経済動向も消費の動向も特殊すぎて“東アジア”に括れないんだよね。独特の形を持っているとも言えるんだけど経済的にも明らかに下向きなので、東アジアが大きく伸びている時にその競争に参加できていないのはすごく危険な状況」と危機感を抱いていることを明かし、「どんなグループの消費者動向を見ても、昔とファンクラブの年齢層が全然違う」「若ければいいってものでもないけど、国の生産力が落ちていくのは間違いないので、やっぱりエンターテインメントの輸出入を大事にしたいですよね」と語った。