NissyとSKY-HI、それぞれの道で大成した稀有な才能 AAAを起点に拡大、分岐した両者の歩みを辿る
1つの分野で成功を収めることすら非常に難しい、エンターテインメントの世界。しかし、そのような厳しい世界でも、2つ以上の道で長きにわたって活躍を続ける稀有なアーティストが出現することがある。
例えば、男女混合ダンス&ボーカルグループ・AAAで活動していたNissy(西島隆弘)とSKY-HI(日高光啓)は、まさにその「稀有なアーティスト」にぴったりと当てはまる存在と言えるのではないだろうか。Nissyはソロアーティストとして年を追うごとに活躍の場を広げ、2023年3月25日にはついに6大ドームツアーを完遂。SKY-HIは自身のアーティスト活動に加えて音楽事務所・BMSGのCEOとしてもその手腕を発揮し、人気グループ・BE:FIRSTを輩出、3月末には2組目となるダンス&ボーカルグループ・MAZZELのデビュー決定を発表した。そこで今回、改めて類まれなキャリアと才能を持つNissyとSKY-HIのこれまでを振り返りながら、彼らの特異な点に迫ってみたい。
NissyとSKY-HI、2人のキャリアのスタート地点
NissyとSKY-HIは、その輝かしいキャリアを2005年にデビューした男女混合ダンス&ボーカルグループ・AAAからスタートさせた。AAAは2005年9月にシングル『BLOOD on FIRE』でデビューすると、同年末には『第47回輝く!日本レコード大賞』で最優秀新人賞を受賞。デビュー1年後には日本武道館での無料ライブで約1万人を動員するなど、数々の記録を打ち立て、日本の音楽シーンを牽引してきた。
グループ活動の傍らで、SKY-HIは2006年ごろから、Nissyは2013年からそれぞれ得意分野を活かしたソロ活動を開始。そこでも着実にキャリアを積み重ねてきた。
そして、グループはデビュー15周年を迎えた2020年、メンバーの今後の活動や人生を熟慮した結果、活動休止を決定。翌年11月から始まった6大ドームツアーを経て、12月末に当面のグループ活動を終了し、NissyとSKY-HIの2人はソロ活動を本格化させることになる。
高いスキルと考え抜く姿勢で、最高のパフォーマンスを作り出すNissy
Nissyは2013年8月に初のソロ楽曲「どうしようか?」を発表してから、2014年12月に発表した楽曲「GIFT」ではiTunesチャート1位を記録。そして、2016年にリリースした1stアルバム『HOCUS POCUS』では、iTunesアルバムランキング1位と同週間ランキング1位を獲得するなど、数々の記録を打ち立ててきた。また、2018年には男性ソロアーティストとして史上最年少で4大ドームツアーを開催。2022年10月から2023年3月には桑田佳祐や小田和正、福山雅治、星野源などそうそうたるアーティストに名を連ねて5大ドームツアー(結果、追加公演を含めると6大ドームツアー)を成功させ、その活躍の場を次々と拡大させてきた。
ソロ活動においても、そのような大きな飛躍を遂げられたのは、Nissyが1人のエンターテイナーとして圧倒的なパフォーマンススキルを持つからであり、パフォーマンスや作品と真摯に向き合う姿勢が誰よりも強いからだろう。パフォーマンスで言えば、彼は歌もダンスも非常に高いスキルを持つ。リズムを的確に押さえながら、体の細部まで意識の行き届いた豊かな表現力を備えたダンス。芯がしっかりしているからこそ、高音域がクリアに遠くまで伸び、細かなニュアンスまで逃さず表現するボーカル。この2つが最後まで崩れることなく両立したライブは、まさに「圧巻」という言葉がふさわしい時間であり、多くのファンを魅了してやまないのだ。
また、パフォーマンスと向き合う姿勢にも、特筆すべきものがある。ファッション誌のインタビューによれば、Nissyは「365日、24時間ずっと仕事に意識が向いている」という。(※1)そして、楽曲制作や自身のパフォーマンスについて考える上では、「歌という素材をどうしたらより多くの人に楽しんでもらえるか、日常生活の中で励まされたり、癒されたりしてもらえる歌になるかをすごく考える」「レコーディングで言葉のニュアンスを変えたり、納得行くまでこだわり抜いて作っている」そうだ(※2)。
日本でも屈指の力を持つボーカル&ダンススキルと、誰よりも作品やパフォーマンスについて考えぬく姿勢。この2つの“すごさ”がかけ合わさったことで、Nissyの現在の成功があると言えるのではないだろうか。