SKY-HI&ØMI、同学年プロデューサーが語りあった日本のエンタメの課題 「輸入があるのに輸出がないのは相当危ない状況」

SKY-HI&ØMIが語りあった日本のエンタメの課題

 続いてのトークテーマは「アーティストとのコミュニケーション方法」。彼らに限らず、90年代後半から2000年代以降に生まれたいわゆるZ世代やα世代と接することが増えたという人は、働く世代にも多いだろう。ここでは、価値観の異なる世代とのコミュニケーションの秘訣が語られた。

SKY-HI、ØMI

 SKY-HIは「自分はいろんな正解を肯定する人でいたくて。プロデュースもコミュニケーションだと思っているので、会話をしながら『まだ誰も知らないあなたのかっこよさを一緒に探してみよう!』という方向が近いかな。もちろん『これだ!』というのを否定はしないけど、プレゼントを渡すんじゃなくて一緒にショッピングに行く、みたいな感覚」「安易な否定は当然嫌な気持ちになるけど、安易な肯定も暴力のような気がする」と独特の感性でコメント。後輩と接する機会の多いØMIは「この14年間で色々なことを経験したけど、自分が全く経験していないことをただ『こう思う』とは言えないんだよね。Z世代の子達の感覚と我々世代の感覚って圧倒的に違って、自分の経験値や物差しで答えを提示するのは違うなと僕も思う。こういう可能性もあるんじゃない? とか、こういうことがもっとあったらいいよね、とアプローチの仕方はすごく気をつけています」と答えた。

ØMI

 続いては、「海外への挑戦と課題」について。ØMIは日本全体の課題でもあるとし、「日本では各プロダクションやレーベルが単体で海外にアクセスするケースが多いけど、それではアーティストやプロデューサーのクオリティも上がらないし、思考も変わっていかない。SKY-HIくん筆頭で旗を振ってやってくれているようなことが国内からもっと出ていくことで、シーン全体の層を引き上げるのがすごく重要。それが、日本のエンタメが海外にアクセスする一つのやり方なのかなと感じます。参加するグループの既存の海外ファンの方達が『D.U.N.K.』を観に来日することにも繋がるよね」とコメント。

 SKY-HIはここ数年でK-POPアーティスト・俳優が来日して収録イベントやアワードが開催されることが増えていることに触れ、「輸入が行われているのに輸出がないので、貿易としては相当危ない状況」とコメント。「あまり軽々しく言うといけないですが、日本のエンタメには新しい経団連みたいなものがあってもよいのでは、と思っています。国からも『日本のエンタメの海外展開がうまくいっていないように感じるけど、どう思いますか』と意見を聞かれることがあって、でも単体で聞いて打ち返していっても、抜本的な改善が図られる可能性は低いと思うんですよね。なので、『D.U.N.K.』はまずいろんな事務所さんに参加していただきたいし、そこで関係性を育んで、輸出への足掛かりをみんなでつくっていきたい」と展望を述べた。

SKY-HI

 ØMIは輸出をしなくても国内で成立することが日本のエンタメの良さでもあると言い、「日本にはライブができる会場がとてつもなくあることにすごくびっくりされるんです。全国にアリーナ、ホール、ライブハウス、さらにはドームやスタジアムもあって、これだけエンタメができる環境が整っている国ってほとんどない。特に韓国の子達は、全米ツアーと同じくらい日本ツアーへの志をすごく高く持っているし、韓国エンタメ業界全体が輸出志向でずっとやり続けてきたことが、今のZ世代中心のK-POPファンの獲得に繋がっている」と語り、SKY-HIが取り組んでいる『D.U.N.K.』のような場所の必要性を話した。

ØMI

 最後に、「今回お話しした全てが今後の自分の課題であり、やるべきことなのかなと。自分が思っている今後の課題が日本のエンタメの課題に直結していることを感じられた」(ØMI)、「まさしく、課題はチャンスとニアリーイコールですよね。解決策を考え、トライ&エラーをし、その先でプロデューサーやアーティストはもちろん、日本という国自体にも大きなリターンをつくることができる。そういう愛すべき課題だと思っています」(SKY-HI)とそれぞれコメントした。

 ともにグループ・ソロでアーティストとしてのキャリアを積み、30歳頃をターニングポイントにプロデューサーとしての道も歩み始めたSKY-HIとØMI。今回のトークセッションを通じ、ダンス&ボーカルグループシーンのみならず、日本のエンタメ業界全体を新たな切り口から盛り上げるべく、高い視座を持って国内外を見つめているという共通点を感じた。二人の口から語られたビジョンはどのような形で実現し、「日本から世界へ」を体現していくのだろうか。激動の時代に追い風を起こすためのヒントは、もう目の前にあるのかもしれない。

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