NCT、7年の集大成が詰まった『NCT NATION』最終日徹底レポート 日本での初スタジアム公演で5万5千人と共に見た無限の可能性

『NCT NATION』徹底レポート

 NCTがグループ初のスタジアム公演を開催。9月9日、10日に大阪・ヤンマースタジアム長居、16日、17日に東京・味の素スタジアムを熱狂の渦に包んだ。普段は個別に活動する「NCT 127」、「NCT DREAM」、「WayV」、曲ごとにメンバー編成を変える「NCT U」による各グループの楽曲をふんだんに盛り込み、全40曲以上、実に3時間半超に及んだ。日本では初の全体コンサートということで、チケットは全日程完売という盛況ぶり。本稿では、ツアー最終日を迎えた東京 味の素スタジアム公演の2日目の模様をレポートする。

 9月後半にもかかわらず晩夏の熱気が立ち込める晴天の下、開放感のある味の素スタジアムを埋め尽くした約5万5千人のシズニ(NCTファンの呼称)。突如、モニターに都市を彷彿とさせるビル群が映し出され、メンバー全20名の名前と「NCT」の由来である“Neo Culture Technology”を囁く機械的な音声が定刻を告げた。

 「INTRO: Neo Got My Back」で幕が上がり、ひな壇に並んで登場したメンバーの姿に、会場は割れんばかりの歓声に包まれる。段を降りて横1列に並んだメンバーが徐々にステージを去り、残された5人――TAEYONG(テヨン)、JAEHYUN(ジェヒョン)、DOYOUNG(ドヨン)、MARK(マーク)、TEN(テン)が、NCT Uの始まりの一曲とも言えるデビューデジタルシングル「The 7th Sense」を披露。息をつく暇もなく、NCT 127が現9人体制初の2ndミニアルバムのタイトル曲「Limitless」、WayVが1stミニアルバムタイトル曲「无翼而飞 (Take Off)」、NCT DREAMが3rdミニアルバムタイトル曲「BOOM」を続けてパフォーマンスし、序盤からNCTの軌跡を感じさせた。

 フラッグ隊をバックに再び集結したのは、「NCT 2018」のメンバー。全員が一頭の虎になったような動きを見せ、猛獣の唸り声がスタジアムに轟く。中央に位置するTAEYONGが鋭い眼差しで牙を想起させる指先を一瞥すると、観客からは歓声が。なかでも、後にNCTに加わったXIAOJUN(シャオジュン)、HENDERY(ヘンドリー)、YANGYANG(ヤンヤン)が登場し、TENのソロダンスへと繋いだパートでは、熱量もヒートアップ。激しいビートに乗せて前後を入れ替わり立ち替わり魅せるダンスが、燃え上がる火柱にも劣らない勢いでスタジアムを揺らしていた。

 タイトなアッパーチューンの後は、変幻自在なユニット「NCT U」パートに突入。美しい夕焼けを背景に、優しい歌声が観客を包む「Interlude: Oasis」や、スタンドマイクで魅せる「WITHOUT YOU」(TAEIL[テイル]は本ツアーを怪我のため欠席、同曲中国語Ver.の歌唱メンバーのKUN[クン]が参加)、「Round&Round」をメインステージで歌い上げると、続く「Know Now」からはトロッコでサイドステージへ移動。ステージ上に置かれた大きなビーズクッションの上に座ってくつろぎながら、観客と視線を交わした。「Vroom」では最後にソロでカメラに抜かれたCHENLE(チョンロ)の顔の横にJISUNG(チソン)が指ハートを作ったり、「Kangaroo」ではカンガルーの動きを模したダンスで楽しそうにステージを動き回ったりと、愛らしい姿が垣間見えた。ステージ上ではRENJUN(ロンジュン)とJISUNGが見つめ合ったり、CHENLEがカメラに向かって自分の唇を指してみたり、YANGYANGがKUNの右肩に顔を乗せて微笑んでみたりと、メンバー同士の素の絡みも視線を奪っていく。

 空の風景の移り変わりが楽しめるのも、スタジアムライブの見どころだろう。暗くなり始めた空に染み渡るのは、ストリングの壮大な音色が聴く人を虜にするバラードナンバー「Coming Home」。頬を掠める涼しい風とともに流れ始めた「My Everything」では、RENJUNとXIAOJUNの、包み込むような柔らかい歌声と切なく煌めく瞳に吸い寄せられる。今回は最年長のTAEILが不在で同い年の2人での歌唱となったが、最後には互いを讃えるように歩み寄り、安心したような笑顔で抱き合う姿が胸を打ったのではないだろうか。続く「별자리 (Good Night)」「From Home」では、パフォーマンスの一部となって輝くペンライトの光が目を引く。モニターに映る星空のような映像とリンクしたり、オレンジや黄緑に切り替わったりと、見惚れてしまうほど美しい景色がそこには広がっていた。

『NCT STADIUM LIVE ‘NCT NATION : To The World-in JAPAN’』

 宵の宴の火蓋を切ったのは、今年6月にTAEYONGのソロとしてリリースした1stミニアルバムのタイトル曲「SHALALA」。彼の薄手のニットと同じ真っ赤なライトが会場を染め上げる。続けて、ファンからも熱い支持を誇るDOYOUNG、JAEHYUN、JUNGWOO(ジョンウ)のユニット・NCT DOJAEJUNGが三者三様のポーズを決めながら登場。純白のスーツに身を包み、真っ赤なステージを背景にして、洋楽のサウンドを想起させるセクシーなナンバー「Perfume」を披露した。DOYOUNGのジャケットの隙間からはたくましい腹筋が覗き、最後まで鳴り止まない声援の熱量が、ボルテージの高まりを感じさせていく。

 中盤には、NCTの固定ユニットがステージを彩る。トップバッターを飾ったNCT DREAMはデニムやTシャツといったカジュアルな衣装に身を包み、「Broken Melodies」「ISTJ」を立て続けに披露。HAECHAN(ヘチャン)がクマの耳を作ってみたり、MARKとCHENLEが肩を組んだりと、のびのびと歌う姿が際立つ。雰囲気を一転、力強いパフォーマンスで魅せる「ISTJ」では、MARKの「Tokyo, scream!」が観客の叫声を誘った。

 MCでは、「ロンちゃんです! 東京楽しんでますか?」(RENJUN)、「皆さんの猫ちゃん、CHENLEです!(猫耳ポーズを決めながら)」と、NCTでもとりわけキュートな魅力を持つふたりが挨拶したり、JAEMIN(ジェミン)が「僕の名前はJENO(ジェノ)です」と笑顔でジョークを放ち、他のメンバーに「君の名前はJAEMINです!」と突っ込まれたりする場面も。一見クールな末っ子・JISUNGが「僕はモチモチちーちゃんです」と挨拶をし、「伝えたい言葉があるんですけど……今日は月が綺麗ですね」と、昨夜から準備していたという威力の高い一言を放つと、歓声を上げる観客とは対極に、怪訝な顔で月のない夜空を見上げるHAECHANがモニターに映し出されて笑いを誘った。

 ほかにも、生配信を見ているシズニをHAECHANが「羨ましいでしょ?」とSっ気のある表情で煽ってみたり、RENJUNとJENOが「一生懸命応援してくれてありがとうございます、力になります」と日本語のカンペを熱心に読んだりと、“ドリム”の空気感が満載のMC。次の曲を尋ねた流れで、今年3月にカバーして反響を呼んだRADWIMPSの「なんでもないや」をアカペラで披露するRENJUNと、それを至近距離で見つめるJAEMINのやり取りも、ファンには堪らない光景だっただろう。一連の流れを静かに見守っていたMARKが、最後の最後でHAECHANに「次は、MARKさんの『Child』です!」と巻き込まれていたのも微笑ましかった。7人は爽やかなメロディが特徴のポップチューン「Best Friend Ever」でステージを後にした。

 続いてバトンを受け取ったのは、中華圏のメンバーが所属するWayV。「Kick Back (Korean Ver.)」のギターサウンドがロックに鳴り響くなか、黒地に金の刺繍をあしらったスーツ姿で登場した6人は、吹き上がるスパークも相まって異世界から来たような存在感を放っていた。一挙一動が美しく帝王の風格すらあるTEN、正面からぶつかり合うKUNとXIAOJUNなど、個性溢れる面々が魅了するなか、ステージが紫色に染まる。そして始まった怪しげな雰囲気を醸し出す「Love Talk」では、ジャケットを脱いだXIAOJUNが襟元を緩めたり、KUNが解いたリボンの先で唇を拭うような仕草を見せたりと、魅惑的な表情が炸裂。一方で、ハードな曲中にうさ耳ポーズを仕込んでいたWINWIN(ウィンウィン)がMCで「僕もプレゼントを持ってきました!」と首元からハートのシールを取り出したり、無茶振りされたXIAOJUNが「このドラマがとても好きです!」と恋ダンスを踊り出したりするなど、愛らしい一面も溢れ出る。KUNがRemixしたことでも話題になった「Phantom (English Ver.)」では、歌い出しのYANGYANGがひな壇頂上の玉座に片足を立てて歌唱。腹筋が見えるだけだったTENのジャケットは、曲が終わる頃には全開になり、会場からは歓声が降り注いだ。

 3グループのトリを飾ったのは、NCTのなかでも攻撃力の高いHIPHOPサウンドが特徴的なNCT 127だ。黒と赤の中華風衣装を身にまとい、グループの代表曲のひとつともなった「영웅 (英雄; Kick It)」と日本デビュー曲「Chain」で会場中のテンション感を一気に高めていく。MCでは、この日は怪我のために欠席となっていたTAEILについて触れ、「穴を埋められるようにパフォーマンスします」「TAEILヒョンに届くように拍手をもらっていいですか?」と観客に呼びかけたYUTA(ユウタ)。パフォーマンス中にもTAEILの立ち位置はしっかりとひとり分が空いており、8人は確かに彼の存在を感じながら踊っていた。本ツアーに参加できなかったTAEILにも、メンバーとシズニの想いはきっと届いていたと思う。また、DOYOUNGが「皆さん知っていると思いますが、僕たちNCT 127は10月6日に『Fact Check』でカムバックします」と5thフルアルバムのリリースを予告。JUNGWOOも「ぜひ楽しみにしていてくださいね」と期待値を高める。加えて、YUTAが「近々日本でコンサートができたらいいね、なんて……」と今後の日本公演を予感させると、この日いちばんの大きな歓声がスタジアムを震わせる。その一連のやりとりをJOHNNY(ジャニー)は笑顔で見つめる。この大きな歓声の余韻そのままに披露した「질주 (2 Baddies)」で“イリチル”の本ツアーラストステージを締めくくった。

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