幽体コミュニケーションズ、人間と機械の混ざり合いの中で鳴らす音 ウ山あまねとの対バンで届けた新しい音楽体験

幽コミ、新しい音楽体験

 「新しい音楽の空間」にいる――そんな感覚を覚えた夜だった。

 9月18日、京都出身の3人組・幽体コミュニケーションズが、東京・月見ル君想フにてライブを開催した。彼らの7インチシングル『ミュヲラ』リリースツアーの一環として開催されたライブである。このツアーは、9月8日の大阪・心斎橋Pangea公演にはYeYe、9月16日の愛知・KDハポン公演にはグソクムズと、会場ごとにゲストを招いた対バン形式で行われてきたが、東京公演にゲストとして登場したのは、ウ山あまね。『ミュヲラ』の7インチでは「ショートショート」のリミックスを手掛けているソロアーティストである。

ウ山あまね
ウ山あまね

 最初に演奏したのは、ウ山あまね。ステージ上のテーブルにラップトップとシーケンサーを置き、それを目の前にした本人はエレキギターを抱えて歌う、という筆者は初めて見るスタイルの演奏で、そして、その演奏は素晴らしかった。テーブルの上を起点に発せられるエレクトロニックなサウンドと、ウ山がその手で掻き鳴らすギター、そして彼の声が混ざり合うことで生まれる、異形、だがエモーショナルで高揚感のある演奏。「ハイパーポップ」と言ってしまえばそうなのだが、そうしたジャンルで簡単に片づけてしまうのがもったいないと思うほどに、人間と機械が混ざり合いながら新しい肉体を、新しい言語を、新しいコミュニケーションの在り方を獲得していくようなその姿には感動させられた。そして、この「人間の肉体と機械が混ざり合いながら新しいものを生み出している」という感覚は、次に登場した幽体コミュニケーションズの演奏にも当てはまるものだった。

paya

 ウ山の演奏に続いて登場した、幽体コミュニケーションズ。ステージの上で、いしし、吉居、payaの3人が向き合うようにして座るのが幽体コミュニケーションズのライブにおける基本的なスタイルである。以前、この独特なスタイルについてインタビューで質問した時、payaは「客席を向いて歌うのが恥ずかしいから」と冗談交じりに語っていたが、もっと大きな必然性によって、彼らはこのスタイルを選び取っていったのだろう、とこの日のライブを観て感じさせられた。

幽体コミュニケーションズ
いしし

 ステージ下手に座るいししは、膝の上にボーカルエフェクターのようなものを乗せて、その上にそっと手を乗せた状態で歌う。彼女は時に民族楽器のようなものも奏でる。中央に座る吉居は、足元や周囲をエフェクターに囲まれて、秘密基地の中に陣取ったような状態でギターを弾く。そして、ステージ上手に座るpaya。彼も足元にエフェクターを置き、曲によってはギターや他の楽器も奏でるのだが、それ以上に、彼はその躍動感のある身体的なパフォーマンスが魅惑的で目を引いた。その3人が向き合って、音楽を生み出していく。客席を向いていないから、その音楽は「放たれる」というより「渦巻く」という感じでステージ上に立ち上がり、演奏が進むごとに巨大になっていくその渦に、私たちも巻き込まれていく。

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