『呪術廻戦』第2期ED、羊文学「more than words」と崎山蒼志「燈」に共通する“青春”描く映像 それぞれが歌う関係性

 現在放送中の『呪術廻戦』(MBS/TBS系)。その「渋谷事変」でエンディングテーマを担当しているのが羊文学である。オープニングテーマのKing Gnu「SPECIALZ」はじめ、作品が広く知名度を獲得するとともに楽曲にも注目が集まることが多い。7月から放送された「懐玉・玉折」では崎山蒼志の「燈」、今回の「渋谷事変」では羊文学の「more than words」がエンディングテーマに起用されており、前者は五条悟と夏油傑、家入硝子、後者は虎杖悠仁、伏黒恵、釘崎野薔薇の“青春”がエンディング映像として描かれている。本稿では『呪術廻戦』第2期を彩るエンディングテーマに注目したい。

 『週刊少年ジャンプ』(集英社刊)にて連載中の『呪術廻戦』は、これまでにシリーズ累計発行部数8000万部を突破している芥見下々による大人気コミックス。初の映画化となった『劇場版 呪術廻戦 0』は、全世界興行収入265億円を突破するなど国内外で大ヒットを記録した。『呪術廻戦』第2期「懐玉・玉折」では、後に最強の呪術師となる五条と最悪の呪詛師と呼ばれる夏油の過去が描かれ、現在放送されている「渋谷事変」では渋谷を舞台に虎杖、伏黒、釘崎ら呪術師と夏油や真人ら呪詛師・呪霊たちの過去最大規模の決戦が繰り広げられる。個性的なキャラクターや呪術師による迫力のあるバトルシーン、緻密に練られたストーリー展開などが本作の見どころで、ダークファンタジーながらコミカルな演出も挟まれており、視聴者を飽きさせない。

 「懐玉・玉折」でエンディングテーマを担当したのは崎山。「夏油傑というキャラクターの積み重なった経験と苦悩の果てに生まれていく心情の変化、それを取り巻くキャラクターたちの夏油への思いがテーマの楽曲です」(※1)と崎山が語っているように、「燈」はかつて高専時代を共ににした良き相棒でもあった五条と夏油の関係性が夏油の視点で描かれている。〈僕の善意が壊れてゆく前に君に全部告げるべきだった〉と夏油の告白のような歌詞から始まる冒頭。もちろん告げたかった相手は五条だろう。『劇場版 呪術廻戦 0』では乙骨憂太と敵対するキャラクターとして描かれていたが、「懐玉・玉折」では五条に信頼を寄せる夏油の姿が描かれた。〈何処にでもあるようなものがここにしかないことに気づく くだらない話でもよくて赤らめた顔また見せて〉といったサビの歌詞は五条と夏油、双方の願いと解釈することもでき、そうした夏油の伝えたくても伝えられない思いが崎山の繊細なソングライティングに乗せて届けられる。

崎山蒼志 Soushi Sakiyama / 燈 Akari [Official Music Video]

 一方現在放送中の「渋谷事変」エンディングテーマは羊文学の「more than words」。タイトルの意味は直訳すると「言葉以上のもの」。「渋谷事変」では虎杖にとって大切な伏黒と釘崎の3人の関係性が描かれており、「more than words」はまさに3人の言葉以上のつながりが丁寧に歌われているように感じる。羊文学は『週刊少年ジャンプ』2023年40号にて「監督から、どん底の現実に直面する虎杖の『帰る場所』になれるエンディング、とリクエストを頂きました。さすがの私も、どんな深い絶望なのか、そしてどうしたら彼に手を差し伸べられるのか、悩みに悩み、結局、この曲にたどり着きました」とコメントを寄せていた。この言葉を踏まえて改めて「more than words」を聴いてみると、虎杖が抱えている葛藤や悩みを赤裸々に言葉に乗せながらも、虎杖にとって伏黒と釘崎の存在は暗闇を照らす光でもあるという希望が浮かび上がってくる。ラストに塩塚モエカ(Vo/Gt)のファルセットで歌われる〈give you more than words〉は誰よりも仲間を大切にしてきた虎杖の“誰かのために”という思いやりであり、3人の信頼関係がひとつの言葉に集約されているように感じる。

羊文学 - more than words (Official Music Video) [TVアニメ『呪術廻戦』「渋谷事変」エンディングテーマ]

 また、〈この先は何一つ譲れない 全力で(I get it now) どんな暗闇だって照らすライト あなたがいること〉と歌われる後半の流れは虎杖と五条の関係性を示しているかのよう。虎杖にとって五条は尊敬する先生であり、五条にとって虎杖は大切な生徒なのだ。「渋谷事変」では五条が獄門疆に封印され、虎杖ら呪術師の仲間たちが封印された五条を助けるために渋谷駅へと一堂に会するというシーンが描かれていくが、圧倒的な力を持つ五条が教え子の虎杖、伏黒、釘崎に対して「期待してるよ 皆」と未来を託すシーンはお互いの存在を“希望”と歌う歌詞ともリンクしている。

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