ももいろクローバーZ、なぜ彼女たちは『QUEEN OF STAGE』=“ステージの女王”になれたのか? 等身大のまま手にした強さ
“しおりんの素の表情を切り取ったジャケット ”
“「飾らない、素のままの自分」をテーマにした、ピアノ主体のバラード”――。
9月16日、ももいろクローバーZのX(旧Twitter)のオフィシャルアカウントでこのように紹介された、玉井詩織作詞の楽曲「Sepia」(9月20日配信リリース)。同曲は、2023年にスタートした玉井のソロプロジェクト「SHIORI TAMAI 12 Colors」の企画「12カ月連続ソロ曲配信リリース」の第9弾である。
〈見上げた空は 澄んだ青で〉〈立ち止まったはずの 赤い/信号も 見ぬふりで〉〈黄色い線の内側で 小さくなってた〉と信号機の色をモチーフにしながら、さまざまなシチュエーションに置かれた人物の心境を描き出し、〈まっさらな 心のパレットに/色をくれた あの日の出会い〉〈まっさらな 心のパレットに/色をくれる いつかのキミと 描きたい〉と自分の世界を色づかせてくれる人/存在の大切さを歌い上げることで、玉井がまたひとつ、大人の階段を登ったような印象を受けた。
実際、玉井には大切な存在がいるのだろう(それは決して決まった形に限らず、友人、ファンにも当てはめることができる)。楽曲から伝わってくるのは、そういった人たちに対する彼女の素直な気持ち。それが冒頭の紹介文に表れている。
ももクロは結成当初より、グループや個人のリアルな成長を多くの人に見届けてもらう活動形態をとっている。代々木公園けやき通りでの路上ライブ(2008年7月)、念願だった『NHK紅白歌合戦』への初出場(2012年12月)、女性グループとして初となる国立競技場での単独公演(2014年3月)など、必ず目標を立てて一つひとつクリアしていった。ライブ会場のスケールに関しては日本のアーティストとして最高地点に到達しながら、2022年には高城れにが結婚するといった、プライベートな部分でも“成長”する姿を見せている。ももクロはそうやって、活動歴、年齢など、その時々の「等身大」を私たちに見せ続け、それが大きな魅力となっている。まるで「現在進行形のアイドルドキュメンタリー」を追っている感覚だ。
プロデューサー兼マネージャーの川上アキラも、雑誌『Quick Japan vol.112』(2014年/太田出版)のなかで「“ちょっと足りなかったのかな”って反省するべき所が出来たら、それをいの一番の目先の目標としてやる」「スピード感をもって、常に追求し続けることが大事なんです。そして、失敗を隠さずにそれすらもきちんと見せていくこと。人間の一番本質の部分、リアルで人間くさい部分を出しなさいっていう教え方はしているつもりです」と、素の自分を見せる必要性について説明している。
一つひとつ段階を踏む様子や人間としての成長など、リアルな部分を見せることで得られるもの、それは「説得力」だ。たとえば映画『ロッキー』(1976年)や『キック・アス』(2010年)もそう、『ドラゴンボール』シリーズもそう。主人公たちが汗水垂らして肉体を酷使する地道なトレーニングシーンを挟み込むことで、強さに説得力が生まれる。ももクロもまさにそれに当てはまる。象徴的なのは、百田夏菜子の代名詞的パフォーマンス「エビ反り」だろう。百田の「エビ反り全盛期」は、それこそ日を追うごとに飛躍を遂げていた印象だ。きっと数値的にもジャンプ力は上がっていただろうし、何より迫力がすごかった。何度も、何度も飛び続けて、肉体としてたしかな説得力ができ上がっていった。
今年7月から始まった15周年を記念したツアーで、「QUEEN OF STAGE」=「ステージの女王」という威風堂々としたタイトルを冠することができるのは、そうやってももクロが長年培った説得力の賜物でもあるのだ。