ももいろクローバーZ、なぜ彼女たちは『QUEEN OF STAGE』=“ステージの女王”になれたのか? 等身大のまま手にした強さ

 一方で書籍『ももクロ流』(2014年/日経BP社)のなかで、川上は「『紅白歌合戦』に出場して、ももいろクローバーが次の段階に進んだなと実感したのは事実です」「これまでは“等身大”のももクロを見せていこうと考えていましたが、これからは“エンターテインメントで魅せる”ももクロを見せていかないと、と思ったのです」とフィクション性を取り入れることについても言及していた。

 たしかに、佐々木彩夏は等身大を軸にしながらフィクションも並行してどんどん絡めることでアイドル性をさらに高め、“あーりん”を確立していった気がする。川上の言葉を借りるなら、“あーりん”の存在そのものがエンターテインメントのようである。

佐々木彩夏 【LIVE】行くぜっ!怪盗あーりん
(from 『AYAKA NATION 2022 in TOKYO GARDEN THEATER』)

 雑誌『BUBKA』2019年4月号(白夜書房)のなかで佐々木は、自身の髪型について「23年間、一度も染めてこなかった」「ももクロをはじめてからは、やっぱりファンの方が私に何を求めているのかが大事だから、みんな、黒髪でロングを求めているんだろうなって」とし、さらに一度ショートカットにしたことを振り返りながら「求められている私じゃなかったのかなって」「でも、それでいいんですよ。“自分のための、なりたい私”は2つ目の人生で存分にやればいいわけで」とアイドルである限りは徹底して「作り込む」と話している(ちなみに、佐々木の言う「2つ目の人生」は結婚以降を指す)。

 ただ、“あーりん”はすべてにおいてフィクション的な存在では決してない。まず鏡に映し出すのは「本当の自分=佐々木彩夏」である。そして「アイドルとしての自分=あーりん」へとメイクアップしているのだ。

 玉井の楽曲「Sepia」で打ち出された「飾らない、素のままの自分」という言葉。ただメンバーそれぞれ、人間的に成長するにつれて、その「リアルさ」はいい意味で違いが出てきている。

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