WurtS、ライブを重ねて解き放たれたダイナミックな姿 シンプルなセットで無敵感を漂わせた『LIVEHOUSE TOUR Ⅰ』

WurtS『LIVEHOUSE TOUR Ⅰ』レポ

 昨年11月に行われたWurtS初のワンマンツアーは、ステージ中央に巨大な卵が鎮座し、その卵が孵化するためには「ライブを全力で楽しむこと」が条件であると告げられるなど、研究者×音楽家を名乗るWurtSならではのコンセプチュアルなライブだった。しかし、『WurtS LIVEHOUSE TOUR Ⅰ』追加公演となるSpotify O-EASTのステージ上に置かれているのは、ドラムとマイクスタンドとギターとベースとDJ卓というシンプルなセット。多くのフェス/イベント出演を経て、WurtSがどんどん解放されていっていることを象徴するようだ。

 おなじみのウサギとサポートメンバー、そしてキャップを目深に被ったWurtSが登場。まずは、抜けの良いバンドサウンドの「ユートピア」からスタートし、サビで超満員のオーディエンスの腕が一斉に上がる。「WurtSです! よろしくお願いします!」という最初の挨拶も実に快活。続く「ふたり計画」では、歌いながらサビ前で右手を突き上げる。「全力でかかってこいよ!」と猛々しく叫び、「僕の個人主義」に雪崩れ込んだ。

 コロナ禍の2021年にネットをベースに本格的に音楽活動を始め、初の有観客ライブを行ったのが2022年4月。以降ライブを観るたびに、バンドサウンドは分厚くダイナミックに、ビートは強靭になっていて、その急速な進化に毎回驚かされてきたが、序盤で早くもそれを痛感する。元来の楽曲の良さに、WurtS自身のタフな肉体性が加わり、パンパンのフロアの熱量も後押しし、無敵感すら漂う。

 WurtSが「最後まで楽しんでいってください!」と言い、「Talking Box (Dirty Pop Remix)」のイントロが流れると、フロアから悲鳴のような歓声が上がる。WurtSに促され、Bメロでオーディエンスは一斉にハンドクラップし、その後は上下にジャンプ。TikTokでのバズの傾向を踏まえ、すでにバズっていた「Talking Box」のインスト部分にラップパートを加えたリミックスバージョンをドロップし、さらなるバズを記録したという研究家・WurtSならではの楽曲は、リアルライブでもキラーチューンになっている。

 『週刊少年ジャンプ』で連載中の『SAKAMOTO DAYS』の作者である鈴木祐斗とWurtSがお互いのファンだったことから実現したコラボ曲「BORDER」は、「『SAKAMOTO DAYS』はアクションもあるんですが、スタイリッシュで映画を観ている感覚にもなる漫画。『SAKAMOTO DAYS』の魅力を伝えたいと思って生まれた曲です」とWurtSが説明してから披露された。無骨なラップ×ビート強めのバンドサウンドに、鈴木も「少し気だるそうな声、癖になるビート、レトロな雰囲気、全てが最高に刺さります!」(※1)と絶賛していたWurtSならではの中毒性をまぶした楽曲のパフォーマンスは、堂々たるものだった。

 WurtSが「ここからもっともっと盛り上がっていきましょう!」と言って、2本のギターの旋律が絡み合う「オブリビエイト」へ。〈yeah yeah〉や〈oh oh oh〉といったキャッチーな歌に合わせてオーディエンスの手が左右に揺れる。WurtSが右手を突き上げつつ〈世界は君のもの〉と歌うと、えも言われぬ全能感が溢れる。さらに、勇ましいギターリフから「SIREN」へ。この曲も〈yeah yeah〉というシンガロング必至のキャッチーさを宿している。間奏でサポートギターとベースに近寄り、3人で同じ方を向いて音を鳴らすWurtS。こういったバンドの一体感もツアー中に培われたものなのだろう。

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