仮面ライダーに欠かせない主題歌の魅力 『555』×ISSA「Justiφ’s」はじめ、物語と深くリンクした歌詞を読み解く

 Vシネクスト『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』が2024年に期間限定上映され、あわせてBlu-ray&DVDが発売されることも決定した。本作は2003年に放映された『仮面ライダー555(ファイズ)』(テレビ朝日系)の正統な続編であり、TVシリーズ最終回から20年後が舞台となることがアナウンスされている。

 『仮面ライダー555』に限らず、仮面ライダーの世界観を支えている要素の一つに主題歌がある。作品にあわせて書き下ろされ、あるときは物語のテーマを端的に示し、またあるときは脚本の内容が楽曲に歩み寄ったりと、作品そのものと相互補完的な関係を構築していくことが多い。本稿では『仮面ライダー555』続編制作決定にあわせて、仮面ライダーシリーズの主題歌を何曲か取り上げながら、本編との関連性やその魅力について考察していく。

 まずは冒頭でも触れた『仮面ライダー555』の主題歌、ISSA「Justiφ’s」について語っておきたい。この曲は冒頭1行で、本作が何についての物語なのかを正確に射抜いている。

 本作は「夢を持たない青年・乾巧(半田健人)は旅の途中、特殊な変身ツール『ファイズギア』を持つ少女・園田真理(芳賀優里亜)に遭遇。異形の怪人『オルフェノク』に襲われたことをきっかけに、仮面ライダーファイズとして戦い始める」(※1)物語だが、アクションシーン以上に比重が置かれているのは、なりたい理想と現実のギャップに葛藤する姿や、殺めた命を思い苦悩する様など、個人単位の小さな人間ドラマに他ならない。〈広がる 宇宙の中 Can You Feel?/小さな地球(ほし)の話をしよう。〉というフレーズで始まる「Justiφ’s」は、こうした物語の構造全体を正しく捉えていると言えるだろう。

ISSA「Justiφ’s」

 2002年の作品『仮面ライダー龍騎』(テレビ朝日系)の主題歌である松本梨香「Alive A life」もまた、作品のテーマを正確に描き出した楽曲だ。

 「戦わなければ生き残れない!」をキャッチコピーに、最後に生き残った1人として願いを叶えるため、ライダー同士がバトルロワイヤルを繰り広げる内容が話題になった本作。〈どんな危険に傷つくことがあっても〉〈生きている激しさを 体中で確かめたい〉といったフレーズは、生きるためには殺さなければならないという一見矛盾した、しかし世界のどこでも起こっている出来事を反映するかのようだ。

 また、純粋な願いだけを切り取った歌詞は主人公・城戸真司(須賀貴匡)の視点とも、昏睡状態の恋人を救うために戦う秋山蓮(松田悟志)の視点とも、はたまた物語のキーマンである神崎士郎(菊地謙三郎)の視点とも取れる。割れた鏡に映るものと同様、さまざまな角度から何度でも読み解ける楽曲だ。

仮面ライダー龍騎 第01話[公式]

 物語が歌詞の内容にダイレクトに寄り添った例として、2017年の『仮面ライダービルド』(テレビ朝日系)の主題歌であるPANDORA feat. Beverly「Be The One」も取り上げておきたい。この曲はTVシリーズの主題歌だが、曲名をそのまま冠した『劇場版 仮面ライダービルド Be The One』という作品が2018年に公開されているのだ。

 相棒を奪われた主人公・桐生戦兎(犬飼貴丈)によるミニマルと呼んでいいほど孤独なロードムービーが展開される様子は〈今夜も真っ直ぐ一人の足跡たどって〉というフレーズとリンクするし、クライマックスでは「ひとつになる」と訳せる「Be The One」に相応しい展開が待ち受けている。

PANDORA feat.Beverly / Be The One

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