Diosにとっての本来の創作活動 『CASTLE/Re:BUILD』Billboardツアーで示した“再建”という向き合い方

Dios、Billboardツアーで示した“再建”

 3月に横浜、大阪、東京と3カ所のBillboard Liveで開催されたDiosのライブツアー『Dios Billboard Live 2023 “CASTLE/Re:BUILD”』。同ツアーは、たなか、Ichika Nito、ササノマリイというDiosのパーマネントメンバー3人に加え、ベースにオオツカマナミ、パーカッションにさのみきひとという二人のサポートメンバーを加えた、Diosとしては初となる5人編成でのツアーだった。『CASTLE/Re:BUILD』という印象的なツアータイトルのもとにあるのは、Diosが昨年リリースした1stフルアルバム『CASTLE』の存在である。昨年行われた同作のリリースツアーは3人編成によって、アルバムの繊細でメランコリックな世界を表現していたが、早くもバンドはそこで生み出したものを、ベースとパーカッションというリズム隊を加えた、より肉体的なアンサンブルによって「再建」しようと企てた。それが今回のBillboardツアーである。

 こうした「再建」の試みは、ライブに限った話ではない。Diosは今年2月に、『CASTLE』収録曲のうち5曲を外部リミキサーに託したリミックス作品『Re:CASTLE』も発表している。これらの「再建」の動きは、Diosにとって創作活動がどのようなものかを表しているとも言えるだろう。作品をリリースし、ツアーでお披露目したらそれで終わり、という定型化されたルーティンに埋没することなく、彼らは破壊と再構築を繰り返しながら、幾度でも自らの作品と出会い直すことができる。ひとつの作品は、馴染みある友人のような親密さと、見知らぬ他人のような底知れなさを同時に抱きながら、何度でも私たちの前に現れる。この先、時代の消費の在り方が「より速く、より新しいものを」とDiosに求めたとしても、彼らは素知らぬ顔で、極めてマイペースに、自らの作品を深く深く、掘り進め続けるのかもしれない。その姿は、とても魅力的だ。

 私は今回のツアーの、3月27日に行われたBillboard Live Tokyo公演の、21時に開演した2ndステージ(ツアーは各会場、1日2公演行われた)を観ることができた。Billboard Live Tokyoは決して小さな会場ではないが、しかし、観客と音楽との距離感がとても近い会場である。観客は着席し、ゆったりと飲食を楽しみながら音楽を楽しめる。客席から溢れる物音なども会場の空気を形成する一部となる。このBillboard live Tokyoの「近さ」と、5人編成のDiosによる演奏は、見事にマッチしていた。最初にステージに上がったササノが奏でるピアノの旋律に導かれるようにして、Ichika、オオツカ、さの、たなかがステージに登場すると、1曲目に演奏されたのは「劇場」。リズミカルで力強い演奏は、しかし、決して過剰な大仰さには近づかず、人間の温もりを優しく感じさせる。激しくも心地いい抑揚と、鮮やかな音の重なりを伝えるその演奏は「原始的」とでも形容したくなるほど、有機的だ。人と人が音を響かせることの根源的な喜びと美しさを感じさせる演奏に、客席からはハンドクラップも巻き起こる。その光景は、緊迫感を持ちながら精緻に世界観を構築していた昨年の3人編成ツアーで見せたものとは全く違う、新たなDiosを冒頭から印象づけた。

たなか
ササノマリイ
Ichika Nito
オオツカマナミ
さのみきひと
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たなか
ササノマリイ
Ichika Nito
オオツカマナミ
さのみきひと
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 約90分に及んだライブで、バンドは全17曲を披露。セットリストは『CASTLE』収録曲をメインとしていたが、その中で、「フライディ・チャイナタウン」(泰葉)、「Overdose」(なとり)という今若い世代に人気の楽曲たちのカバーも披露。カバー曲は昨年のツアーでも披露しており、観客としては嬉しい試みである。そして何より、この日は新曲が3曲も披露されたことも大きなトピックだ(今年のはじめ、Diosの3人は箱根で作曲合宿楽曲制作合宿を行ったらしい)。ライブ後に渡されたセットリストによれば、「渦」、「王」、「LOVELESS」と、それぞれ名づけられた新曲たちは、感情や自然の動きを音像化したような深みとスケールの大きさを感じさせ、音源化されるのが非常に楽しみになるものだった。

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