連載「lit!」第38回:Official髭男dism、Eve、Måneskin……ポップミュージックシーンを射抜く野心的なロックアンセム

Måneskin『RUSH!』

 この連載では、昨年から何度も繰り返してMåneskinについて取り上げてきた。そして、ついに年明けに、全世界的なブレイクを果たして以降の集大成となる新作『RUSH!』がリリースされた。リリースの1週間前、筆者は「これまで私たちが熱狂してきた数々の楽曲たちはまだまだ氷山の一角に過ぎないことを示唆しており、新作の全貌、および、このバンドがこれから辿っていく未来への期待がますます高まる」(※3)と書いたが、実際に今作は4人が誇る自由な発想やジャンルレスなマインド、それらを的確に表現する確固たるスキルを発揮したバラエティ豊かなロックアルバムとなった。

 ハードロック/メタル/ハードコア/パンクをはじめ、今作が内包するジャンルは多岐にわたり、それぞれの楽曲ごとに詳細に語ることもできる。しかし、今作を繰り返し聴く中で最も強く心を動かされてしまうのは、このアルバムが誇る、2020年代のシーンのド真ん中で響き得るモダンポップとしての堂々たる佇まいである。単なる過去のロック史へのオマージュ集ではなく、今の時代を生きるリスナーを熱狂させるために理知的にチューニングされていて、4人が時代のポップアイコンとなり得たのは、そうしたクレバーさ故の必然なのだと思う。2023年、今作を携えたMåneskinのさらなる快進撃に期待したい。

Måneskin - GOSSIP ft. Tom Morello

Inhaler『Cuts & Bruises』

 現行のUKシーンにおいて、“ロック復権”のムーブメントを力強く牽引するロックバンドの一組がInhalerであり、今回届けられた待望の新作は、眩しすぎるほどに晴れやかな開放感に満ちたストレートなロックアルバムとなった。性急なビートに乗せて艶やかでロマンチックなグルーヴを届ける「Love Will Get You There」や、ポジティブなバイブス全開の爽快なナンバー「These Are The Days」など、ロックンロールのロマンと快楽性をまっすぐに追求した楽曲が並ぶ今作のラインナップは壮観で、全編にわたり轟くメロディアスなギタープレイの美しさに心を奪われる。何より、一切迷いなくロックの王道を邁進する彼らの姿に痺れる。

 Inhalerは、デビュー当時こそ、“U2のボノの息子がボーカルを務めるバンド”というイメージを持たれることも少なくなかったが、今やそうした色眼鏡で彼らのことを見る人はいないだろう。また今作には、アンセミックな歌のメロディが光る楽曲が多く、特にスタジアムロック的な壮大なスケール感と疾走感を同時に誇る「When I Have Her On My Mind」は圧巻。言うまでもなく、今作の楽曲たちは、ライブのステージ上で鳴らされることでロックアンセムとしての真価を発揮するはず。8月の『SUMMER SONIC 2023』における来日公演に期待したい。

Inhaler - When I Have Her On My Mind (Official Lyric Video)

※1:https://realsound.jp/2023/01/post-1226177.html
※2:https://twitter.com/oO0Eve0Oo/status/1611642354326450177?s=20
※3:https://realsound.jp/2023/01/post-1231584.html

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