黒夢、LUNA SEA、DIR EN GREY……“セルフカバー”で向き合い、塗り替える過去の自分たち

 近年、キャリアを重ねたバンドによる初期の音源を再録した作品のリリースが続いている。

 再録は、アーティスト自身が過去の自分たちと向き合う作業にほかならない。そうして生み出されたものにはどんな表現が宿るのか。黒夢、LUNA SEA、DIR EN GREYの楽曲から、“再録”の奥深さを紐解く。

黒夢

 まずは、同時リリースされたばかりの黒夢のリレコーディングアルバム『Drug TReatment 2026』『CORKSCREW 2026』。オリジナル盤のリリースは、『Drug TReatment』が1997年、『CORKSCREW』が1998年。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで時代を切り拓いていた黒夢が作り上げたマスターピースだ。

 “ヴィジュアル系”という言葉が生まれ、華やかなバンドシーンが盛り上がっていた時代を横目に、黒夢はパンキッシュな方向性へ舵を切った。メイクや衣装だけでなく、サウンドも余計なものを削ぎ落とし、どんどんソリッドに進化。清春(Vo)が歌う詞には、社会や音楽業界に対する反骨精神が刻まれていく。アナーキーなムードに加え、実際に清春と人時(Ba)の関係性が険悪だった――という話は今や鉄板ネタだが、とにかく危険でギリギリのテンションが当時の楽曲の魅力のひとつになっていた。

 それから30年近く経過した2026年。2024年に再始動を果たして以降の黒夢は、『CORKSCREW』をテーマとしたツアーのほか、ロックフェスにも出演するなど、怒濤の活動を繰り広げた。再始動の感動や懐かしさを軽く飛び越え、媚びない攻めの姿勢で2020年代のロックシーンを駆け抜けながらのリレコーディングだったわけだ。

 先行配信された「NEEDLESS」から感じたのは、まさに“2026年の黒夢”の鼓動。アレンジやフレーズ自体はほぼ変わっていないからこそ、ライブで鍛え上げた今のグルーヴ感がより際立つ。昔から清春と一緒に歌い上げるような存在感のベースを弾く人時だが、歌に寄り添う優しさを感じるのは、ふたりの距離が縮んだからだろう。何せ、ふたり仲良くYouTubeでトークするくらいなのだから。

黒夢「NEEDLESS 2026」Music Video/Album『Drug TReatment 2026』

 一方で、トゲトゲしさや攻撃性が丸くなった気配はまったくない。年齢を重ねてなお、変わらない反骨精神が今もふたりのなかに息づいていることがわかる。〈昔話好きな/大人から逃げたくて〉〈関係ない 第三者が軽く/僕に関する事 口を出すのが耐えられない〉など、今の清春が歌うからこその毒がむしろ刺激的だ。「2026年の黒夢の記録」というべき作品である。

LUNA SEA

 LUNA SEAは、2023年に『MOTHER』『STYLE』の再録アルバムを発表した。1994年の『MOTHER』には「ROSIER」や「TRUE BLUE」、1996年の『STYLE』には「END OF SORROW」や「DESIRE」といったヒットシングルが並び、ライブでも披露される機会の多い楽曲が収録されている。ライブはLUNA SEAの歴史そのもの。だからこそLUNA SEAの再録盤は、バンドの歴史と時代の流れ、そのなかで積み重ねてきたものが刻まれた作品となった。

 たとえば、『MOTHER』のオープニングナンバー「LOVELESS」。『MOTHER』リリースツアーはもちろん、伝説の10万人ライブ『LUNA SEA 10th Anniversary GIG [NEVER SOLD OUT] CAPACITY∞』や、終幕を迎えた『THE FINAL ACT TOKYO DOME』、一夜限りの復活を遂げた『GOD BLESS YOU 〜One Night Dejavu〜』、直近の東京ドーム公演『35th ANNIVERSARY TOUR ERA TO ERA -THE FINAL EPISODE-LUNATIC TOKYO 2025-黒服限定GIG-』等々、数々のメモリアルなライブで1曲目に演奏されており、それだけ多くのオーディエンスの記憶に深く刻まれている曲と言える。

 再録バージョンを再生した瞬間、ライブの光景を思い出した人も多いだろう。イントロからスペーシーなサウンドが広がるなか、SUGIZO(Gt/Violin)のロングトーンとINORAN(Gt)のアルペジオの音一つひとつが粒立ち、奥行きを持って響き渡る。ドライブ感を持ってビートを牽引するJ(Ba)と、タイトさと華やかなドラムソロで魅せる真矢(Dr)の存在感も生々しい。肺腺がん、声帯の手術を乗り越えたRYUICHI(Vo)の力強い声と訴求力も圧倒的だ。

LUNA SEA - 「LOVELESS」MV

 細かなフレーズや構成自体は変わっていないものの、ミックスを手掛けたスティーヴ・リリーホワイトのセンスもあり、楽曲の深い部分まで感じられるようになっている。逆にオリジナル盤にしかない世界観と完成度を再確認することもできるため、あえて聴き比べて歴史の重みを味わってみるのもオススメしたい。

DIR EN GREY

 独自のスタンスで再録に向き合っているのが、DIR EN GREYだ。再録というより、彼らの手法は“再構築”と呼んだほうがいいかもしれない。曲によってアプローチはさまざまだが、オリジナルのテーマや個性は残しつつ、曲構成そのものを一度破壊し、メロディや歌詞、フレーズから展開まで変わったものもある。自分たちの作品を自ら塗り替えてしまう大胆さは、さすがDIR EN GREYと言ったところだ。

 2024年、メジャーデビューから25周年を記念して発表されたシングル『19900120』では、1999年に3枚同時リリースで話題を集めた「ゆらめき」「残 -ZAN-」「アクロの丘」が再録された。記念盤ということもあり、かつての再構築シリーズよりもオリジナルを尊重したバージョンになっているが、細かい部分に彼ららしいこだわりが詰まっている。
特に興味深いのは「残 -ZAN-」。この曲は、2009年のシングル『激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇』のカップリングとして再構築された際、ダウンチューニングや京(Vo)のグロウルにより、エクストリームメタル/デスコアに近い緻密さと極悪さをもって一度生まれ変わった。

残 (ZAN)

 2024年版は、むしろ原曲に回帰。メンバーそれぞれが鍛え上げた音の重みや説得力でアプローチした結果、原曲の変態的な個性をあらためて味わえるのが面白い。2009年より柔軟かつ多彩になった京のボーカルは、初期の荒々しさも取り込んでさらに鬼気迫る仕上がりに。叙情的な歌唱力を堪能できる「ゆらめき」「アクロの丘」と合わせて聴くと、その表現の幅広さに驚かされるはずだ。

残 (ZAN)

 さまざまな思いを持って生み出される再録作品は、聴き手にもさまざまな感情を呼び起こす。今、その瞬間に彼らが何を表現したいのかを受け取りながら、かたちを変えて受け継がれる名曲を楽しんでいきたい。

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