ゆず、“ゆずっこ”と共に刻む心音=生きている証 40代ラストツアーで描き出した幸福な光景

ゆず、ツアー『心音』レポ

 ゆずにとって初の弾き語りアリーナツアー『ゆず 弾き語りアリーナツアー2026 心音』が、7月26日の神奈川・横浜アリーナでファイナルを迎えた。3月にリリースした最新アルバム『心音』の収録曲を中心に、「夏色」など人気曲はもちろん、路上時代を再現した「雨と泪」など懐かしい楽曲、そして「ツアーお疲れさまのうた」も披露。声優・日髙のり子がAI ヘリオス役で参加した“喜怒哀楽メドレー”や、ルーパーを使った“ファイナルMAX”のコール&レスポンスなど、サービス精神たっぷりのステージで40代最後のツアーを締めくくった。

 「みなさまとたくさんの思い出を重ね、一緒に駆け抜けた長い旅路も、今日ここ横浜でファイナルを迎えます。今日も会場全体で盛り上がっていきましょう!」と、開演前から熱く盛り上げた場内アナウンスによって、恒例のラジオ体操にも力が入ったファイナル。

 会場にドクンドクンと響く“心音”に続いて、逆光を浴びたシルエット姿でふたりが登場し、ライブは軽快なギターと歌による「逆光」で演出に合わせてスタート。続く「1」では、「カモン横浜!」と声を掛け、〈Wow〉と歌う観客のコーラスと手拍子で、会場は早くもひとつになった。

 ふたりの地元の会場である横浜アリーナでの公演回数が87回目と、歴代1位の自己記録を更新した喜びを分かち合うなど、横浜にちなんだ楽曲で楽しませた序盤戦。サビ前に手拍子を合わせるのも楽しい「地下街」。「まだ何者でもなかった時代、道の片隅でがむしゃらに歌っていた時代の曲」と紹介した「ねこじゃらし」は、ノスタルジックなムード。

 「なんの“志”もなかった頃だ!」「今や伝説の!?」など、若い頃の自分たちの写真にツッコミを入れながら、ゆずの弾き語りの歴史を振り返ったMCを経て、路上ライブに立ち返り“生声”で聴かせた「雨と泪」は、大きな見どころのひとつとなった。マイクを通さなくても力強く響くふたりの歌声に、静かに聴き入った観客。横浜松坂屋の写真をバックに、足下にはギターケース、最後の「来週の日曜日にまた会いましょう!」とMCまで当時が再現され、目の前に広がった伝説の光景に、会場の拍手喝采が鳴り止まなかった。

 中盤は、光と影の演出とともにシンプルに聴かせた「ま、いっか」や、ハリセンボンの近藤春菜が出演した楽しい映像とともに「もうすぐ50歳」「もうすぐ30周年」と、ユーモアたっぷりに歌った「日替わり定食」など、アルバム『心音』の楽曲が数多く披露された。岩沢厚治のソロパフォーマンスとして披露された「出発前」では、哀愁を帯びた歌声とギターが胸を締めつける。一方で「消しゴム」では、北川悠仁のピアノ演奏が、アンドロイドが演奏する映像と重なる演出もあいまって、切ない空気が会場を包む。そして「リアル」では一転明るいムードへと変わり、一緒に歌う観客の声と手拍子に「横浜、愛してるぞ!」と応えた。

岩沢 厚治
北川 悠仁

 “喜怒哀楽メドレー”では、観客とのコミュニケーションで幕間の時間も楽しませたAIのヘリオスが、新キャラクター“キドアイラくん”とともに、ゆずの楽曲から人間の心を学ぶというかたちで楽曲が進んだ。“喜”を表現した「種」や「贈る詩」では、ハーモニカやタンバリンの軽快な演奏に合わせて観客の歌声が重なる。“怒”は、アッパーの激しいカッティングに乗せた「傍観者」やスケールの大きな「LAND」で表現。また“哀”は、「踏切」や「からっぽ」で、別れの悲しさが表現された。そして“楽”では、「イロトリドリ」と「ユーモラス」を披露。観客は手を揺らしながら、「ユーモア ユーモア」と、ゆずと一緒に大合唱した。

 このツアーでは、“シンオンクン”と名づけられたルーパー(その場で録った音をリアルタイムで演奏に反映する機材)を使った、新たな手法にもチャレンジ。ツアーを通して会場ごとに異なる掛け声をサンプリングしてきたが、この日はファイナルということで「ファイナルMAX!」という掛け声をサンプリング。ライブでお馴染みの楽曲「手のなる方へ」では、手をXの形に交差しながら「ファイナルMAX!」とみんなで叫んでコール&レスポンスを行い、「少年」は間奏で「Y・U・Z・U」を、喜怒哀楽のいろんな感情で表現。文字通り“楽しさMAX”で会場を盛り上げた。

 ゆずらしいメッセージが込められたライブ終盤。「出会い、別れ、痛み、苦しみ、喜び、いろんなものを乗り越えてきたツアーでした」とツアーを振り返り、「きっとみんなもいろんなものを乗り越えて会場に来てくれたと思うけど、最近あまり褒めてもらえてなくない?」と問いかけ、「だから今日は俺たちが思いきり、みんなを褒め讃えてあげたい。今日ここに集まってくれた1万5622人、一人ひとりを、君を、おまえを、あなたを、褒め讃える曲です。一緒に歌おう!」と、「栄光の架橋」を贈った。目を閉じ胸に手を当て、会場に広がる大合唱に聴き入った北川。岩沢のギターは、力強くみんなの声を支える。そして「みんな、よく頑張ったな!」と、特大のエールで観客を抱きしめてくれた。

 また、「行くぞ! 横浜!」と叫び、拳を掲げながら〈Wow wow〉と力強く声を合わせた「心音」。一転、NHK東日本大震災15年 震災伝承ソング「幾重」は、壮大なストリングスのサウンドを交えて披露され、歌詞に込められたメッセージがまっすぐ胸に響く。MCではツアーが東北から始まったことに触れ、「いろんな場所でいろんな思いで歌ってきて、最後にふるさとで歌えて幸せです」とコメント。

 ライブの最後は、「季節はすっかり猛暑ですが!」と叫んで「夏色」を披露。「ソレソレソレ」という掛け声でひとつになった会場。北川は歌いながら客席に降りて観客一人ひとりとハイタッチ。横浜アリーナのキャラクター・ヨコアリくんも登場し、アリーナ席のド真ん中を陣取って「ファイナルMAX!」を連発した。

 この日はファイナルということで、ツアーを支えたスタッフへの感謝と、「かわいいかわいい“ゆずっこ”ちゃんたち」への思いを込めて、ツアーのファイナルにしかやらない楽曲「ツアーお疲れさまのうた」を披露した。歌詞を「40代最後のツアーでした。50になってもよろしくね!」や「ふたりだけだと楽屋が広すぎた。そろそろバンドも恋しくなってきた」などアドリブで歌い、ふたりの率直な思いに笑いが起きる場面も。そしてツアー日程を全て読み上げ、「全10カ所21公演、総動員数22万人。みんなありがとう!」とコメント。「さよならじゃなくて、ありがとう」という歌詞に感謝の気持ちを込めた。

 相手の胸に、耳を当てなければ聞くことのできない“心音”。それは生きている証。アリーナという会場でありながら、ふたりの心音が聞こえてきそうなほどの近い心の距離感で、生(せい)をまっとうしお互いを褒め讃え合ったライブ。生声歌唱、ルーパーの導入、映像との同期など、たったふたりでありながら、無限の可能性も感じさせてくれた。

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