20周年迎えた台湾高雄の『大港開唱 MEGAPORT FESTIVAL』 地元の人と世界の人、双方に愛されるフェスを目指して
土井コマキのアジア音楽探訪 Vol.24
今年20周年を迎えた台湾高雄のロックフェス『大港開唱 MEGAPORT FESTIVAL』(以下『MEGAPORT 』)。3月21日と22日の2日間で約20万人が来場しました。
日本からもmiletら多数参加 拍謝少年 Sorry Youth×アユニ・D(PEDRO)コラボも
私にとっては3回目の参加でしたが、今回どうしても見たかったのが2日目のヘッドライナー、落日飛車 Sunset Rollercoaster。東京での来日ワンマンに行けなかったし、いつか台湾で見てみたかったんです。すっかり陽が落ちて心地よい空気の中、サウンドチェックからすでにトロけそう。驚いたのは、こんなに大きなフェスのヘッドライナーだけど、例えば「My Jinji」や「Vanilla」みたいな定番曲を演奏せず、最新アルバムの曲が中心だったこと。最新の自分たちを見てほしいという信念のような自信のような気迫を感じました。もちろん演奏は最高! 韓国のHYUKOHとのコラボプロジェクト・AAAの曲が演奏されたのも予想外! 高雄の海沿いで夜空に突き抜ける高揚感。アンコールなしなのもカッコいい。本当に感動しました。ちなみに同じ頃、韓国のフェスでもヘッドライナーのHYUKOHが同じ曲を演奏していたことをSNSで知り、なんていう奇跡の夜に居合わせたんでしょう。




さて、今年は例年以上に入場制限がかかる満員御礼なステージが多かったように思います。それだけお客さんの「絶対見たい」という熱量が高く、休まずにステージからステージへと飛び回って、ずっとライブを見ている人が多かったということかもしれません。過去2年連続でこのフェスのことを書いていますので概要は省きますが、毎年日本のアーティストも多数出演しています。台湾でも日本と同じタイム感で同じアーティストが聴かれていることが多くて、本当に驚きます。ちなみに今年は、結束バンド、milet、アイナ・ジ・エンド、Hiromi's Sonicwonder、The Birthday、the band apart、Aooo、TOOBOE、BAND-MAID、jo0ji、NEEが出演。日本といえばのアニメ、勢いのあるJ-ROCKバンド、レジェンダリーなアーティストまで、幅広くラインナップされていました。












日本のアーティストはこれだけではありません。『MEGAPORT』には欠かせない存在のバンド・拍謝少年 Sorry Youthは、毎年何か特別な演出を用意している印象があるのですが、今年は直前にコラボ曲「Outta My Way」をリリースしたアユニ・D(PEDRO)も一緒にステージに上がり世界初披露。さらに、アユニ・Dが好きなSorry Youthの曲「你愛咱的無仝款」をアユニ・DとSorry Youthのジャンジャンのツインベースで披露しました。実はコラボ曲をリリースすることは数年前から準備を進めていたのだそう。ステージを去る時にアユニ・Dは、「謝謝」ではなく台湾語の「多謝」と挨拶。色々な壁を超えたお互いへのリスペクトも感じられて、とても素敵なセッションで胸熱でした。
また、ゲシュタルト乙女は「Urban Session」と銘打ったステージだったのですが、日本のダンサー・yurinasiaのチームがダンスでセッションするというまさかの演出。日本の音楽が好きすぎるボーカルのMIKANちゃんが、以前からyurinasiaのダンス動画が好きだったそう。ちなみに2020年には「Nice to 密 you」でのダンスパフォーマンスが投稿されています。さらにサックス奏者も迎えて、いつもよりちょっと大人なムードのクールな「Urban Session」でした。日本のポップカルチャーは世界的にアニメが人気だけど、音楽と音楽の隣にあるダンスというカルチャーがこんな風にセットでしっかり受け入れられていて、めちゃくちゃ嬉しかったです。年々、大きいステージへとステップアップしてきたゲシュタルト乙女ですが、今年は5000人収容可能な高雄流行音楽中心「海龍王」ステージがパンパンで、会場の外にも大行列。ゲシュタルト乙女も、Sorry Youthも私たちFM802のイベント『MINAMI WHEEL』に出演してくれたことがあるので、彼らの音楽キャリアのストーリーの一部になれていたらいいなと思います。




『MEGAPORT』制作スタッフに聞く、20年の歩み
ここからは、フェスの制作スタッフのフェイフェイさんにインタビュー。『MEGAPORT』の歴史についてお話を聞いてみました。
フェイフェイ:1回目の『大港開唱 MEGAPORT FESTIVAL』は2006年に開催されたので、今年20周年です。台北で開催されていたフェス『野台開唱 Formoz Festival』の主催チームが、プロモーションのプレイベントで高雄に立ち寄った際、高雄には空き地が多いことに気づいて。当時のイベントは台北に集中していたし、高雄でも大きな音楽フェスができるんじゃないかと思ったのが始まりです。私はその頃はまだスタッフではなかったんですが、当時は高雄流行音楽中心(ミュージックセンター)も建っていなかったし、会場周辺は今のような観光地ではなかったんですよ。ステージは3つで、お客さんは800人くらいだったんです。


土井:路面電車のライトレールもなかったですよね? そこから20万人も来場するフェスに成長して、町のインフラも発展してきたなんてすごい。フェスと町が一緒に成長したんですね。逆にその頃から変わっていないものってありますか? 日本のアーティストが出演するようになったのは、いつ頃からですか?
フェイフェイ:日本のアーティストは初年度からenvyや、ゆらゆら帝国が出演してくれましたよ。
土井:あとはSNSにみんながコメントして盛り上がっている「女神アーティスト」が気になります。毎年どんな風に選んでいるんですか?
フェイフェイ:実は、主催側からの発信ではないんです。初年度から毎年、お客さんやメディアの皆さんが、そう言って盛り上がってくれます。
土井:自然発生なんですね。去年は満島ひかり、今年はmiletが発表になった時に、「女神きたー!」みたいなコメントがSNSで見られましたよね。このワードが初年度からあったっていうことですか?
フェイフェイ:そうです。初年度の女神は謝金燕Jeannie Hsiehで、今年の「女神龍」ステージの初日のトリとして特別に出演してくれました。普段だったらなかなか出てもらえません。20周年だから特別です。
土井:特別といえば、『MEGAPORT』は毎年アーティストたちのコラボレーションが多いですよね。Same Sam but different(鄭敬儒 Samjoo x 山姆 someshiit x 楊世暄 Sam Yang)が、知的でカッコよかったです。
フェイフェイ:コラボレーションは、アーティストから持ち込まれる企画もあれば、私たちからオファーする企画もあります。Same Sam but differentは、元々仲良しの三人が何かやろうとしていたんですよね。それって良い企画だし、ぜひ『MEGAPORT』で実現してほしい! とオファーをしたんです。そんなふうに『MEGAPORT』がアーティストにとって、やってみたかったことの実現の場所になることも多いです。




土井:アーティストにとってもお客さんにとってもフェスにとっても、みんなにとって幸せで、意味深いですね。あとは、前情報を持たずに見て強烈だったコラボレーションは、李竺芯(Siri Lee) ft. 妮妃雅(Nymphia Wind)。衝撃的でした。
フェイフェイ:妮妃雅(Nymphia Wind)は世界チャンピオンのドラァグクイーンです。独自のスタイルで台湾を世界に発信した人なんです。李竺芯(Siri Lee)は台湾語を使ってフレンチポップを表現しています。『MEGAPORT』も、もっと台湾の文化を発信したいと思っているので、コラボレーションしませんか? とこちらから持ちかけたんです。




土井:なるほど、毎年、台湾語で音楽を作っているアーティストや、先住民族アーティスト、女性アーティストなどへのリスペクトを感じます。意識してピックアップされているんですね。
フェイフェイ:『MEGAPORT』には女性スタッフも多いし、多様性があるスタッフたちがいろんな文化を紹介したいと思っているので、自ずと出演アーティストも多様なラインナップになります。無料エリアの「NGOビレッジ」でも、そういったことについて考えられるようにしています。他にも、メンタルヘルス、環境問題、戦争についてなども考える機会を作っています。
土井:やはり、作る側に多様性があると、生まれるものも多様性があるんですね。シンプルな理論ですが、さまざまな個性がちゃんと反映されるって、特に今の日本では簡単ではないように感じます。経済効果が大きなフェスになればなるほど、ハードルが上がる一面がありそうです。毎年、パレードみたいな賑やかなグループの行進に遭遇するんですが、なんだこれはってびっくりしている間に通り過ぎていくんです。あの人たちは一体……?
フェイフェイ:黑狼人肉戰車那卡西ですね。パフォーマンスアートのアーティストで、ステージから飛び出して、お客さんを巻き込んで練り歩くんです。毎年のことなので、お客さんも巻き込まれるのを楽しみにしていて、参加したくて鳴り物など楽器を持ってくる人たちもいます。『MEGAPORT』らしいアーティストで、去年はポスターアーティストにも選ばれました。
土井:いつか参加してみたい気もします。あとはヘアアレンジのブースも参加してみたいですが、アレンジどころか、丸坊主に剃ってもらってる人もいますよね?
フェイフェイ:「大港頭」という今年のメガポート限定ヘアスタイルメニューが用意されるんです。モヒカンとか(笑)、その売上がチャリティ活動にもつながったり。

土井:何年か前に女の子の友達がヘアアレンジをしてもらって、後先考えず、持っていた台湾ドルの現金を全部募金箱に入れてしまって、そのあとは私たちにお金を借りることになってました。でも『MEGAPORT』は、ライブ以外にも、巻き込まれるのが楽しいイベントがたくさんですね。今年新たに挑戦したことはありますか?
フェイフェイ:地元の人にも参加してもらいたくて、市場塩埕第一公有市場(塩義市場)周辺で『有塩人大舞台』という前夜祭のようなイベントを開催しました。小学生がSorry Youthの楽曲を吹奏楽で演奏したり、PUZZLEMANがフィンガードラミング(MPC)を市場の地元の人たちに教えて一緒に演奏するパフォーマンスをしたり、アーティストだけではなく、市場でずっと暮らしている人たち、高雄のお爺さんや子供達もパフォーマンスをしたんですよ。
土井:高雄の町と一緒に成長してきたフェスが、次に目指すのは、もっと町の人たちと一緒にフェスを楽しむということなんですね?
フェイフェイ:そうです。それから、お客さんの6〜7割が他の土地から高雄に遊びにくる人なので、その人たちに高雄のことをもっと知ってもらいたいんです。
土井:今後のビジョンはありますか?
フェイフェイ:今は、海外アーティストがアジアツアーをするときに、なかなか台湾は開催地になりません。もっと海外アーティストが台湾でパフォーマンスをする場所になりたいですし、世界中の人が遊びにきてくれるフェスになりたいです。時々、海外で開催するのはどう? と聞かれることもあるのですが、『MEGAPORT』を海外で開催するよりも、海外の人に台湾に来てもらいたいんです。インターナショナルなフェスに成長していきたいです。
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特に日本とは行き来が多い台湾の音楽シーン。ここ数年、メガポートは日本からチケットを購入しやすいように、日本から日本語で日本円でオンラインで購入できる別枠で準備してくれています。初めての海外でのフェス参加におすすめですよ。日本と同じだなと共感する部分と、違いに驚いて感動する部分があります。ぜひ会場で浴びてください!



























