Official髭男dism「Subtitle」、ドラマ『silent』を終えた後にも聴き直したい歌詞のポイントは?

 川口春奈×目黒蓮(Snow Man)が出演するドラマ『silent』(フジテレビ系)が、12月22日に最終回を迎える。2022年秋ドラマの中でもひときわ話題をさらった本作の内容とともに、主題歌を務めたOfficial髭男dism「Subtitle」もまた、放送期間中大きな反響を呼んだ。最終回当日には、ドラマの舞台・小田急線世田谷代田駅にて同曲が流れるという試みも。ドラマの映像とセットでこの曲を思い出す人も少なくないだろう。多くの人の記憶に刻まれる曲として、放送終了後も長く親しまれることになりそうだ。

Official髭男dism - Subtitle [Official Video]

 『silent』がここまでの支持を集めたのは、温かく切ないラブストーリーという要素以上に、登場人物たちの関係性に丁寧に焦点が当てられたことが大きかったように思う。主人公の青羽紬(川口春奈)が、かつて本気で愛した恋人・佐倉想(目黒蓮)。彼が高校卒業後、聴力を次第に失っていく中で大切な人たちの前から姿を消し、数年後再び音のない世界でかつての恋人・親友・家族と新たな関係性を築くという物語である。人とのコミュニケーションが希薄になりつつある現代において、失いかけていた大切なことに気づかせてくれるような感覚がある作品だった。

 12月15日放送「#10 また何も伝えずにいなくなるのは許さない」の中で、想に手話を教えた恩人であるろう者の桃野菜々(夏帆)、紬が通う手話教室の講師・春尾正輝(風間俊介)が交わした会話がこのドラマの根幹を示しているように感じた。学生時代、桃野と親しくなる中で彼女のことを知りたいと思い手話を勉強し、仕事にすることを目指した春尾。しかし、その間に桃野と心のすれ違いが生じてしまい、しばらく二人は疎遠になっていた。そして、数年ぶりに再会し、春尾が桃野に伝えたのが「言葉の意味を理解することと 相手の想いが分かるってことは違った」「結局は伝えたいとか 受け取ろうとか そういう気持ちがあるかどうかなんだと思う」ということだった。直接言葉を交わし合える環境にあったとしても、互いが相手のほうを向いていなければ本当の気持ちは伝えることができない。そのことに気づいた春尾が、桃野とようやく心を通わせることができた瞬間だった。

 「Subtitle」においても、サビ前の歌詞にあるような〈伝えたい伝わらない〉というもどかしさが、様々な表現によって描かれている。〈火傷しそうなほどのポジティブの 冷たさと残酷さに気付いたんだよ〉〈失敗作を重ねて 重ねて 重ねて 見つけたいんだいつか 最高の一言一句を〉というフレーズからは、伝えたいという熱量だけが空回りしてしまっている一生懸命な曲中の主人公の姿が思い浮かぶ。しかし、曲終盤〈君の胸を震わすもの 探し続けたい 愛してるよりも 愛が届くまで〉というフレーズがあるように、言葉で伝えるよりも心を通わせることの大切さに到達している点もドラマの展開と一致しており、最終回目前、あるいは物語が終わりを迎えた後に1曲通して聴くとまた違った感慨を覚えるのではないだろうか。紬と想は本当の意味で心を通わせることができるのか、しっかり見届けたい。

 そして、年末の大晦日には『第73回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)に出場するOfficial髭男dismが「Subtitle」を披露することも発表された。ドラマを終えた後も2022年を代表する1曲として盛り上がりが続いていくだろう。

ヒゲダンの歌詞はなぜグッとくる? Official髭男dism「Pretender」を軸に特徴を読み解く

メジャーデビューからわずか1年ほどで、バンドシーンの最前線に躍り出たOfficial髭男dism、通称・ヒゲダン。月9ドラマ『コ…

Official髭男dism「I LOVE...」レビュー:歌詞やメロディでヒゲダンが伝える“逡巡”こそが面白さに

「Pretender」「宿命」などのヒットシングルで着々と人気を拡大し、アルバム『Traveler』も好調なOfficial髭男…

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる