Vaundy、『紅白』初出場で締め括った音楽家としての“第1章” 想像の余地のない音楽に対する危惧も明かす
僕の曲は“分からない”のが面白い
――では、第1章のVaundyさんご自身についてはどう振り返りますか? 私見ですが、Vaundyさんの歌詞にはアンガーマネジメント的な側面があるように感じるんです。他の人の行いを見て「ムカつくな」と思うこともあるけど、「いや、でもこの人にもこの人にしか分からない悲しみがきっとあるんだろうな」と理解しようとすることで、怒りを鎮めようとしていると言いますか。
Vaundy:そうなんですよね。「不可幸力」はそれが特に表れている曲なんですけど、最初は世界はクソみたいだと言っているのに、急に〈愛で/揺れる世界の中で僕達は/キスをしあって生きている〉って歌い始めるんですよ。つまり、人が幸せになるのも不幸せになるのも全部が不可抗力なんだよっていう曲なんですけど、多分こういう曲を書くことで、「そういうものなんだって俺は自覚しているよ」と自分に言い聞かせているんだと思います。改めて見ると結構清潔な歌詞だなと思うんですけど、「あ、この綺麗事、今ほしかった」というエゴを叶えられるのが音楽なので。
――実際この歌詞の通りに生きられているわけではないけど、そういうふうに生きられたらいいなと思ってはいる、ということですかね。
Vaundy:そうですね。だからアンガーマネジメントっていうのは本当にその通りで。さっきモノ作りは全部デザインだと言いましたけど、僕はすぐにプリプリ怒っちゃうから、自分の心を落ち着かせるためにモノ作りをしているし、だからずっとパソコンをイジってるんです。別に音楽とか映像を作っていない時でも、意味もなく写真の切り抜きをしたりして。で、デザインだからちゃんと問題を解決してあげようということで、自分の心を落ち着かせるための清潔な歌詞も結構多いんですけど、やっぱり人間なので、「そう思っていても、実際に自分はできないんだよね」というのが本質で。つまり怒りをマネジメントできてはいないんですけど、だからこそ、たまーにいい曲が生まれるのかなって思いたいですね。
――ちなみに、これまでに8曲がストリーミングでの総再生数回数1億回を突破しているそうですね。リスナーの数が増えるほど、自分が音楽に込めたものが意図通りに伝わらないケースが増えるんじゃないかと想像しますが、「どこまでいっても分かり合えない」といった感覚はありませんか?
Vaundy:そういう感覚は、最初に曲を出した時から当たり前のようにあります。結局僕が何をどう頑張ろうと、伝わらないものは伝わらない。でも、別にそこにコンプレックスはなくて。むしろ、僕の曲は分からないのが面白いし、僕の意図なんて分かってほしくないと思ってます。作者の意図なんて僕は自分から説明しないし、それはそれぞれが自分自身で感じてほしい。この曲のストーリーをあなたなりに想像して、あなたの主題歌にしてほしい。その時に感じたことが今のあなたの想像力の限界ですよ、という話だと思うし、全員が同じピースを与えられているのに組み立て方の説明書きがないから、完成するパズルの形は人それぞれで全く違うっていう方が楽しくないですか? そのために僕はピースの形を複雑にするし、何ならピースを抜いておくし。
――なるほど。
Vaundy:僕が提供するパズルは絶対に完成しちゃいけない。だから自分でMVを作る時は正解になりすぎないように気をつけているくらいで、例えば「mabataki」のMVも「何? どういうこと?」という感じで終わらせているし、よく分からなかったという人が多いんじゃないかと思います。僕の中では一応解決しているんですけどね。
――最近のJ-POPのトレンドで言うと、シチュエーションを限定したようなラブソングも多いですよね。それについてはどう思いますか?
Vaundy:歌詞が分かりやすくなっていっているし、“僕はあなたと出会って……”というストーリーテリングが多いですよね。何なら“あなた”じゃなくて名前まで出てくる。曲がどんどん具体的になっていっているように思います。そういう曲は、歌詞で歌われているシチュエーションにはぴったり合うと思うんですけど、逆に言うと、それ以外のシチュエーションではBGMにならないので、リスナーの人生の方が、その曲を元にした映画みたいになっちゃう気がするんですよ。だけど僕は、誰かの人生のBGMになればいいと思いながら曲を作っているし、その人生の主人公(リスナー)の邪魔をしない曲を作りたいという気持ちがあるので、聴いた時に「私だったらこう考えるな」とちゃんと思えるような、想像の余地のある音楽を作りたいと思っていますね。実際にそれができているかというと、まだまだできていないと思うから、これからもそこは探求していきたいです。
――想像の余地のない音楽を作ると、リスナーも想像をするのをやめるだろうという危惧もあるんでしょうか? 先ほどのライブの話とも通じますが、人間が持っている力をちゃんと使わないことへの危惧と言いますか。
Vaundy:本当にそうですね。シチュエーションが限定的な曲を聴けばみんな同じ映像を思い浮かべると思うんですけど、僕はそれをいいことだとは思わなくて。それは想像じゃなくて、提供された映像をただビジョンに映しているだけですからね。想像力が育まれなくなるとどうなっていくかというと、今の子どもたちが大人になる十数年後に、クリエイティブの質が下がってしまうと思うんですよね。その流れには抗いたいし、絶対に負けたくない。やっぱり「よく分からないけど、僕だけには分かる気がする。だからほしい」がアートの本質だから。例えば絵画があったとして、それを眺めながら「アーティスティックで最高だよね」と言っている人って、多分、その絵の良さが分からない人からしたら、ちょっとキモいんですよ。でも、その“キモさ”というのは想像力が肥大化したものであって、想像力=相手のことを思う気持ちだから、その感覚は誰しも必要なものなんですよね。それは絶対に大事なものだと思うから、僕たちアーティストが作る音楽というものは、想像の余地がなくちゃいけないんです。
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■ツアー情報
2023年春 全国24本をまわる
大規模ホールツアー 開催中
『Vaundy one man live tour 2023 Spring』
︎詳細:https://vaundy.jp/news/detail/3566
2023年冬開催 自身最大規模となる
5大都市10公演アリーナツアー
『Vaundy one man live ARENA tour』
2023.11.18 (sat) ゼビオアリーナ仙台(宮城)
2023.11.19 (san)ゼビオアリーナ仙台(宮城)
2023.12.02 (sat) 横浜アリーナ(神奈川)
2023.12.03 (sun) 横浜アリーナ(神奈川)
2023.12.09 (sat) マリンメッセ福岡 A館(福岡)
2023.12.10 (sun) マリンメッセ福岡 A館(福岡)
2023.12.16 (sat) 大阪城ホール(大阪)
2023.12.17 (sun) 大阪城ホール(大阪)
2024.01.05 (fri) 日本ガイシホール(愛知)
2024.01.06 (sat) 日本ガイシホール(愛知)
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