藤井風や米津玄師など、2020年代J-POPを支えるサポートミュージシャンの横断的活躍 dawgss、LAGHEADS中心に考察

 dawgssと同じく2022年に初作を発表しているコレクティブ的なバンドとして、LAGHEADSも要注目の存在。ギターの小川翔、ベースの山本連、キーボードの宮川純、ドラムの伊吹文裕は全員30代で、それぞれがソロ作もリリースするなど十分な実績を持ち、こちらもジャズを基盤としつつ、ジャンルをクロスオーバーしながら、すでに様々なフィールドで大活躍をしている。4人が関わるアーティストの名前を並べると、米津玄師、King Gnu、藤井風、Chara、AI、iri、中村佳穂、KIRINJI、WONK、Awesome City Clubから、ずっと真夜中でいいのに。やBialystocksのような新鋭まで、とにかく多彩であり、いかに彼らが現在のシーンで重宝されているかがわかるはずだ。

Drivin' (feat. kiki vivi lily)

 1月25日に発表された2nd EP『Where is “LAGHEADS”?』には高木祥太やMELRAWが参加。また、dawgssがまだSpice rhythmを名乗っていたときに、最初のシングルとして発表した「G.U.N (feat. ZIN)」には小川と宮川が参加していた。素晴らしいミュージシャンがお互いをリスペクトしつつ刺激を与え合うことによって、シーン全体が底上げされていることがこうした繋がりからも伝わってくる。

 そんなLAGHEADSの中でも個人的に注目しているのがドラマーの伊吹で、近年はあいみょんのツアーにも参加し、4thアルバム『瞳へ落ちるよレコード』収録の「初恋が泣いている」には須藤優とともに録音にも参加していて、この2人は4月から始まる秦基博のツアーメンバーでもあったりと、すでにJ-POPシーンのど真ん中で活躍をしている。ともに北海道出身の石若をはじめ、King Gnuの勢喜遊、WONKの荒田洸など、ジャズやヒップホップを背景に持ちつつ、打ち込みで作られた音源を生で再現することにも長けたこの世代のドラマーはやはり抜群に面白い。伊吹は昨年12月に行われた和ぬかの1stワンマンライブ『儚さのオリジン』で、藤井風のツアーにも参加しているベースの小林修己とリズム隊を組んでいて、こうした下の世代との交流が2020年代的なJ-POPをさらに進化させることになるだろう。

あいみょん – 初恋が泣いている【OFFICIAL MUSIC VIDEO】

 様々なプレイヤーがJ-POPを盛り上げている現在のシーンの起点となった存在を改めて考えてみると、星野源やKing Gnuらと並んで、Suchmosを外すことはできない。日本においてはまだインディ的な盛り上がりだったネオソウルやアシッドジャズからの影響を消化し、ミクスチャーかつポップな音楽性で『NHK紅白歌合戦』まで一気に駆け上がった彼らの存在がなかったら、海外との同時代性も視野に入れつつ、セッションの現場で活躍していたようなプレイヤーたちがJ-POPの舞台で日の目を見るようになるには、もう少し時間がかかったかもしれない。2021年に活動休止が発表されたものの、現在はギターのTAIKINGが藤井風を、キーボードのTAIHEIがSTUTSをサポートし、生前のHSUがVaundyのサポートをしていたことも非常に象徴的だ。Suchmosの結成は2013年。10年の節目である今年は、彼らの功績についてもう一度考えるいいタイミングなのかもしれない。

Suchmos "808" (Official Music Video)

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