YOSHIKIが『プロフェッショナル』で見せた繊細な一面 ストイックさの裏にあるものも明らかに
2022年の今、ロックバンドやロックアーティストは、そこまで遠い存在ではないのかもしれない。SNSが普及し、アーティストによっては直接的なコミュニケーションを取ることもできるようになったし、プライベートな部分を積極的にみせていくスタンスのアーティストも増えている印象を受けるからだ。音楽的な部分においても、昔に比べると技術やツールがコモディティ化し、バズを志向するため「誰もが真似しやすい」音楽を生み出すアーティストも少なくない。つまり、カリスマ性よりも親しみやすさが求められ、そこを目指す人が増えてきたように感じるわけだ。
そんな中において、今なお飛び抜けたカリスマ性を発揮するアーティストがいる。それがX JAPANのリーダーとしても名高いYOSHIKIだ。先日、『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK総合)の拡大版として「YOSHIKIスペシャル」が放送された。1時間弱の番組の中で、YOSHIKIのカリスマ性を感じる部分がいくつもあった。
取材はコロナ禍に入る前、3年半ほど前から行われており、まず印象的だったのは番組冒頭からストイックに音楽に打ち込むYOSHIKIの姿。番組中、寝る間も惜しんで黙々と練習するYOSHIKIの姿が何度も見られた。YOSHIKIは必ずしも多作のアーティストではないが、なぜコンスタントに作品をリリースしない(あるいは、できない)のかが、その映像を観ただけでもよくわかるほどだった。圧倒的な音楽へのこだわりがあり、パフォーマンスに対して一切の妥協がないことが示されていた。
また、単純に練習にストイックなだけでなく、その練習への向き合い方にシビアさを感じる瞬間がいくつもあった。例えば、番組冒頭ではピアノを弾いているYOSHIKIにカメラが近づくだけで「気が散る」とされ、一定の距離をとることを求める場面があった。あるいは、練習部屋から取材班を締め出してYOSHIKIが部屋の中にこもってしまうという場面も。番組ではパーティに出席する姿や、大衆の前でライブを行う姿もオンエアされたが、シーンとして印象に残ったのは、一人で懸命に音楽やパフォーマンスに向き合うYOSHIKIの姿だった。
このように、YOSHIKIは「ストイック」という印象をもって番組が進行していくが、中盤に差し掛かると、YOSHIKIの「厳しさ」の背景にあるものも見え隠れする。幼少期の父親の死、バンドの解散、親しい仲であったhideの死、最愛なる母の死と、番組内では親しい人間との別れのエピソードが改めて明かされ、そこで生じるYOSHIKIの感情の変化を感じる場面が挿入される。そこで感じるのは、YOSHIKIの繊細さであった。
思えば、YOSHIKIが作り出す音楽はいつも破滅的でもあり、甘美的でもあり、独特のバランス感覚で成立する、新しいジャンルのパイオニア的な側面もあった。なぜ、そのようなキャリアを築くことができたのかといえば、きっとYOSHIKIがどこまでも繊細な人間であり、「普通の人」よりも見える・気づくものが多いがため、自分の理想が高くなり、そこを埋めるために己に対してストイックになったーーそんな風に感じるのだ。