絢香 初のシングル1位、紅白初出場……「三日月」が普遍性を帯びた理由
「昔の曲も今の私が歌うと、また違った表現ができる」
一方で絢香はもともと、原点をとても大切にしているミュージシャンでもある。
雑誌『papyrus』(2012年4月号/幻冬舎)のインタビューでは、楽曲「はじまりのとき」(2012年)のミュージックビデオでは幼少期の頃の自分の姿を使用することで「歌うことの楽しさと幸せ」を再認識できたといい、同曲について「“誰にでも、何度でも、はじまりのときがあっていいんだ。自分も新たなスタートを切るんだ…”。そう思い描きながら書いた曲です」と説明。さらに同書では、「The beginning」(2012年)についても「“原点に立ち返る大切さ”でもある」と語っている。
バセドウ病で何度か音楽活動をストップさせるなど、決して平坦ではない道を歩んでいる絢香にとって「原点」はキーワードなのだろう。カバーアルバム『遊音倶楽部~2nd grade~』リリース時の2020年5月12日掲載のインタビュー(※1)でも、彼女はアルバム制作を通して「『やっぱり歌うことが最高に楽しい』と純粋に感じました。私が音楽を始めたすべての始まりはその気持ちからだし、特にカバーは歌うという作業が一番軸にある。だから、歌うことがただただ好きで仕方なかった原点に立ち返れる作業でもあります」と話している。
そんな絢香だからこそ、「三日月」など初期のイメージで語られることに対しても真摯に向き合ったはず。ジレンマを噛み締めながら、彼女はそれを否定することなく、受け入れることで時間を前に進めた。『絢香 15th Anniversary DVD BOOK』のなかでも、絢香はこのように話している。
「その時期を抜けたら『みんなが聴きたいと思ってくれる曲が自分にはあるんだ』という喜びを、感じられるようになりましたね。昔の曲も今の私が歌うと、また違った表現ができるし」
雑誌『papyrus』で絢香は、最終的な目標として「“悲しみも怒りも全部受け入れて愛せたら、とても大きい心でいられるんじゃないか”というのがあって、それはいろんなことがあるたびに想っていたことです」とコメントしている。驚くべき寛容さ。いや、もはや包容力と言ってもよいだろう。
冷え切った手を一人で温めていた絢香は、今
平成の歌姫は、令和になって母親の視線で音楽を紡ぎあげている。
2022年7月にリリースされた「未来へ」は、子どもの未来について歌ったものだ。しかし一方で、子どもと一緒に自分自身も成長しているような、そんな姿を思い浮かべずにはいられない。
「三日月」で〈冷え切った手を一人で温める日々〉と口にした絢香が今、「未来へ」で〈無数のヒカリ あなたを照らし 続く道へ手を取り 歩むは未来〉と歌っているのがなんとも感慨深い。
※1:https://realsound.jp/2020/05/post-550919.html
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