絢香、15年歌い続けた多様な愛の形 ワンオク Takaや三浦大知らも参加する『LOVE CYCLE』レビュー
絢香の新作『LOVE CYCLE』は、様々な視点から愛を描く全11曲の作品集だ。デビュー15周年の記念日である、2月1日にリリースされた。
前作からは約3年3カ月ぶりとなるが、アルバム制作が始まるや、コロナが猛威を振るい始める。ステイホームの日々のなか、「自分が愛するものの存在を、今まで以上に大きく感じた」ことも、作品に影響を与えた。
どの楽曲も、テーマは明確だが、様々なアイデアが惜しげもなく取り入れられている。コーラスワークの豊かさも彼女の特徴だ。絢香はシンガーソングライターだが、貪欲に表現の可能性を模索するクリエイターとしての性格が強い。デビューの頃からデモ作りに熱心だったのもそのひとつ。この15年間は、まさにその歴史だった。
「にじいろ」からは、歌の公益性も高くなる。ティーンの頃こそ想像で歌詞を綴ったが、経験を積み、やがて母となり、愛を捉える間口も拡がっていく。『LOVE CYCLE』が、いわゆる“ラブソング”一辺倒ではないのはそのためだ。
今回のアルバムには、河野圭とUTAのアレンジャー陣や、実力派、新進気鋭のミュージシャンが結集している。その場のアドリブを活かす革新的なツアーを繰り広げた「3-STAR RAW」の塩谷哲と古川昌義の顔もある。時節柄、レコーディングはリモートでの作業が多かったが、逆にそれが、良く練られた“音の往復書簡”として機能し、作品を高めた側面もあった。
アルバムタイトル『LOVE CYCLE』を直訳すれば、“愛の循環”である。「人それぞれに、超えなきゃいけない過去や守るべき未来がある。でも、そのすべてに愛を持って接したなら、良い循環となり、自分もその環に乗っていけるんじゃないか? そんな願いから、このタイトルを思いついた」。先日、彼女はこんなことを話してくれた。
オープニングの「もっといい日に」は、カラフルな音の響きのなか、心を通わせることの大切さを歌い、プロローグにぴったりだ。ラストの「Love for Everyone」は、愛を明日への活力に掲げ、音楽という珠玉の時間から日常へ戻るためのエピローグである。そして再び、「もっといい日に」が聴きたくなる。アルバム自体がひとつの“CYCLE”を成しているとも言える。