HANAの爆発的人気と時代の親和性を読む グループの成り立ちから一貫する“セルフラブ”の精神

 7人組ガールズグループ・HANAが、待望の1stアルバム『HANA』をリリースした。2025年4月のデビュー以降、ノンストップでリリースを重ね、作品ごとに異なる魅力を発揮すると同時に、音楽シーンのさまざまな記録を塗り替えてきたHANA。本作にはプレデビュー曲「Drop」から最新曲「Cold Night」までのリリース楽曲に加え、メンバー全員が作詞曲を手がけた「ALL IN」、マット・キャブと共作した「Bloom」など、全11曲を収録。これまでの軌跡を総ざらいしつつ、新たな表現にもチャレンジした作品となっている。

HANA / Cold Night -Music Video-

現代の価値観とマッチした『No No Girls』のコンセプト

 デビューからわずか一年足らずで頭角を現したHANAだが、改めてその理由を考察すると、歌唱やダンスを含めた圧倒的パフォーマンス力はもちろんのこと、楽曲のキャッチーさとメッセージ性、鮮烈なビジュアル、メンバー個々のキャラクターと、さまざまなポイントが浮かんでくる。なかでも特徴的なのが、“セルフラブ”の精神だ。セルフラブとは、ありのままの自分を受け入れる“自己愛”のこと。情報があふれ、“空気を読む”コミュニケーションが求められる現代では、批判を恐れて自分らしい選択ができなかったり、心に余裕を持てなくなりがち。そんな抑圧された社会に対する手段のひとつがセルフラブを持つことなのだと、最近はその重要性がさまざまな場面で取り上げられている。HANAは楽曲やビジュアルで――もっといえばその誕生から一貫して――“セルフラブ”を体現してきたグループ。爆発的人気の裏には、そんな時代の価値観との親和性も大きいように思う。

 少し振り返ってみよう。HANA誕生のきっかけとなった『No No Girls』(Hulu)は、SKY-HIがCEOを務めるBMSGがプロデューサーにちゃんみなを迎えて始まったガールズグループオーディションプロジェクト。このプロジェクトに掲げられたのは、「No FAKE -本物であれ-」、「No LAZE -誰よりも一生懸命であれ-」、「No HATE -自分に中指を立てるな-」という3つの“No”。参加者募集にあたっては、身長、体重、見た目や年齢を問わないとされていた。これは、身長、体重、見た目、年齢に縛られ、アーティストへの道を諦めざるを得なかった才能が数多くあることを逆説的に表してもいた。誰かに「No」を突きつけられれば、人はどうしても自分を否定してしまう。だからこそ、はじめに「No HATE」が呼びかけられたことが、参加者がセルフラブを会得する第一歩となったのは間違いない。

【No No Girls】Ep.01 / Prologue - What's No No Girls-

 そしていざオーディションが始まると、参加者たちは自分を見つめ直し、強さとも、弱さとも徹底的に向き合い、成長していった。たとえばCHIKA。圧倒的なボーカルスキルがありながら、見た目や体型を理由に悔しい思いをたくさんしてきた彼女が、4次審査でちゃんみなにかけられた「いい加減にしろ。自信のない感じはもうここまでだよ」「過去のCHIKAを讃えてほしい」という言葉を体現するようにして、最終審査のソロステージでちゃんみなの楽曲「美人」に挑戦したシーン。自身の経験を語る冒頭から渾身のパフォーマンスに至る流れは圧巻で、彼女が『No No Girls』を通し、いくつもの壁を突破してきたことがひしひしと伝わってきた。また、韓国出身のメンバーであるJISOOは、母国で音楽活動に挑戦しながらも、年齢を理由にチャンスを与えられなかった過去を持つ。人一倍ストイックな性格から、レコーディングに臨んだ際に、自分の歌声に納得いかないと涙ぐむシーンに胸を打たれた視聴者は多かったことと思う。本心をさらけ出し、思いを昇華したのが功を奏したのか、オーディション後半では目に見えて才能が開花。最終審査のソロステージでは、自然体で楽しそうに歌う姿を披露した。

【No No Girls】Ep.15 / Final Round -No No Girls THE FINAL-

視聴者にも共有される“セルフラブ”の物語

 こうして振り返ると、『No No Girls』はガールズグループのオーディションでありながら、企画そのものがセルフラブ性を獲得するための装置であり、視聴者は参加者がいかに“目覚めて”いくかを目撃していたと言い換えることもできよう。そして、その体験は、視聴者自身のセルフラブをも自覚させたはずだ。『No No Girls』を通じ、セルフラブの物語が共有され、伝播していく。観る者にとってはその楽曲やメッセージに共感すること自体が、自分を肯定することと同義になる。HANAはいわばセルフラブの伝道師として、この時代に求められる存在でもあるのだ。

 自分の心と体は誰のものでもなく自分のものなのだと力強く宣言した「My Body」、着飾らずありのままの自分でも愛してくれる人は必ずいると背中を押す「Blue Jeans」――。HANAが繰り返し伝えるセルフラブのメッセージは、『No No Girls』があったからこそ、誰かに指示されたものでも作られたものでもないと、確信できる。その言葉や振る舞いは自然体で堂々として、媚びずに強く、自分たちの信じる“美”にまっすぐだ。

HANA / My Body -Music Video-

 百花繚乱のガールズグループ戦国時代において、HANAは何にも似ていない個性で、シーンの代表格に上り詰めた。しかし、彼女たちの物語はまだ始まったばかり。3月からは初の全国ホールツアー『HANA 1st TOUR 2026 “Born to Bloom”』を全17都市25公演で開催予定で、その快進撃はとどまるところを知らない。自分を愛することから生まれる計り知れないパワーを体現し歩み続けるHANAに、改めて敬意を表したい。

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