羊文学を支える、元CHAI・YUNA「やっぱり私は踊らせたい」――“核”を大切に歩み出したサポートドラマーの道

【連載:個として輝くサポートミュージシャン】YUNA
2024年までCHAIのドラマーとして国内外で活躍し、解散後は羊文学、Homecomings、Rei、吉澤嘉代子など、幅広いアーティストのサポートをしているYUNA。CHAIのデビュー時からインパクト抜群だったファンキーかつパワフルな演奏に加え、DJとしても活動し、ダンスミュージックを通過したビートの音色や音像へのこだわりを持つ、現代的なドラマーだ。また、その負けん気の強さと持ち前の明るさが、各現場でムードメーカーになっているであろうことも想像できる。CHAIの解散からまだ2年に満たないとは思えない、濃密な日々を過ごしてきたYUNAに、ドラマーとしての信念を聞いた。(金子厚武)
高校時代から目指した夢「ドラムを仕事にしたい」

――2024年にCHAIが解散をして、新しいバンドを組むのではなく、いちドラマーとして活動することはすぐに決まったのでしょうか?
YUNA:すぐにいちドラマーとして生きていきたいと思いました。CHAIをやっていたときも、CHAIのメンバーでありながら、いちドラマーとしての感覚もあったんです。なので、今もその延長線上にいる感覚ではあります。でも、やっぱりCHAIは20代の全てを捧げてきた、私の人生を語るうえで絶対に切り離せない大切な期間だったので、そのCHAIが終わるってなったときに、「本当にドラマーとして生きていけるのかな」とか、「(地元の)名古屋に帰らないといけないかもしれない」みたいな漠然とした不安はずっとあったんです。だけど、そんな時期にたまたまHomecomingsが、前のドラムの成さん(石田成美)が脱退して「サポートを探している」っていう連絡をくれて。そこから私のひとりのドラマーとしての人生が本格的に始まった感覚はありますね。
――石田さんの脱退が2024年2月で、CHAIの解散が3月。そこはタイミングが合致したわけですね。
YUNA:本当にタイミングがよかったです。Reiちゃんもそうだし、ベースのYUUKIと一緒に藤原ヒロシさんのツアーに参加させてもらったり、CHAIをやりながらいくつかサポートをやらせてもらったこともあって、CHAIが解散してから気持ちを入れ替えるというよりは、やっぱり今もずっと延長線上にいる感覚ではあります。
――さかのぼると、高校の軽音部でMANAさん、KANAさんと出会い、CHAIが始まったわけですが、高校卒業後は専門学校に行かれたんですよね。つまり、その頃からバンドもやりつつ、プロのドラマーとして活動する考えがあったと。
YUNA:そうなんです。そもそもドラムという楽器を知ったのは小学校3、4年生くらいで。すごくテレビっ子で、音楽番組をいっぱい観ているなか、ORANGE RANGEさんをきっかけに「あの楽器かっこいい!」みたいになって。ただ、当時はピアノを習っていて、クラシックをやっていたんですよ。しかもピアノはお父さんの知り合いの方に習いに行っていたので、子どもながらに気を遣って、「ドラムがやりたいからピアノはやめる」とは言い出せない自分がいたんです。で、ドラムをやりたい気持ちをずっと抱えながら、小中学校を過ごして、高校進学を機にピアノをやめて、軽音楽部に入ったら、そこでMANA、KANAと出会って。長年ドラムへの思いを温めていたから、いざドラムをやり始めたら、本当に楽しくてしょうがなかったんですよ。しかも通っていた高校の軽音楽部が体育会系で、顧問の先生も厳しくて、「熱い気持ちを持て!」みたいな感じで(笑)。

――大会に出てちゃんと結果を残そう、みたいな?
YUNA:そうですね。なので、高校時代からずっとドラムのことを考えていて、それがすごく楽しかったから、「ドラムを仕事にしたい」と思って、専門学校のドラムコースに進学することを決めました。バンドでやるのか、スタジオミュージシャンになるのか、そういうことはあまり考えてなかったけど、とりあえず「ドラムを仕事にしたい!」みたいな感じで、専門学校に行きながら並行してCHAIの活動をしていました。
――ドラマーとしてのルーツで言うと、過去のインタビューでは、カースケさん(河村智康)、玉田豊夢さん、スティーヴ・ジョーダンさんの名前を挙げていますね。
YUNA:まず高校のときに「ドラムを仕事にしたい」と思ったきっかけが、カースケさんと豊夢さんで。当時はいろんなJ-POPのアーティストの方のカバーをしていて、いきものがかりさん、スピッツさん、aikoさん、木村カエラさん、絢香さん、YUIさんとかの曲をやっていたんですけど、「このドラム好きだな」と思って、紐解いてみると、演奏しているのがカースケさんと豊夢さんなことが多くて。それで私も「こういう気持ちがいいドラムを叩く人になりたい」と思ったんです。
――スティーヴ・ジョーダンさんはいつ知ったのでしょうか。
YUNA:スティーヴ・ジョーダンさんを知ったのは20代半ばで、きっかけはJohn Mayer TrioさんのライブDVDですね。専門学校のときに、課題曲としてめちゃめちゃ洋楽のカバーをやってたんですよ。当時で言うとマーヴィン・ゲイさんの「What’s Going On」とかを聴いて、少し跳ねていて、16分音符が効いていて、ファンキーなものが大好きになって。その派生でスティーヴ・ジョーダンさんも好きになったし、今はVulfpeckさんもすごく聴きます。あとCHAIをやりながら影響を受けたのがBasement JaxxさんとかJusticeさんで、ああいう打ち込みのロー感を生にどう落とし込めるのか、みたいなことを考えてました。
羊文学から始まったサポートドラマーとしてのキャリア

――ジャンルを絞って聴いたり練習していたわけではなく、当時からいろんな音楽に触れていたわけですね。
YUNA:そうですね。高校のときに聴いていたのはJ-POPとかJ-ROCKなんですけど、専門学校ではジャズ、ロック、ポップス、インストゥルメンタル――全ジャンルを網羅するカリキュラムになってて。なので、一旦全部やってみる、みたいな感じ。その時期にいろんなジャンルに触れながら、「私はやっぱりJ-POP、J-ROCKのドラマーなのかも」とか、いろんなことを思いながら学校に通っていた気がします。
――カースケさんや玉田さんにしても、それぞれのルーツを持ちつつ、J-POPのいろんなフィールドで活躍していて、その姿に憧れたわけですよね。
YUNA:そうなんですよね。専門学校のとき、「スタジオミュージシャンになるなら何でもできないとダメだ」みたいなことを学校の先生に教わったことがあったので、私は基本的に負けず嫌いな性格なので(笑)、何でもできるようになりたいと思っていました。たとえば、ジャズのレガートとか「こんな速いテンポでやったことない」と思っても、「難しい」とか「できない」とは絶対に言いたくなくて。それを言ってしまったら、そこで諦めちゃう気がしてたんですよ。なので、「別に難しくないし、絶対やってやる!」みたいな感じで、気合いを入れてやっていたのを覚えています。すごく燃えてましたね(笑)。
――比較的最近好きになったドラマーで言うと、どんな名前が挙がりますか?
YUNA:The Pocket Queenさんが大好きです。ゴスペル系の音楽ももともとすごく好きで、ゴスペルチョップスを叩いてる方を見たときに、もう目から鱗というか、「どうなってるの? かっこいい!」と思って。そこでThe Pocket Queenさんのグルーヴやフォームも含めて、すごくかっこいいなと思いました。

――近年ライブの本数がいちばん多いのは羊文学のサポートかと思います。どんなきっかけで参加することになったのでしょうか?
YUNA:元々CHAIと羊文学は同じ事務所で、CHAIのライブを羊文学のみんなが観に来てくれたり、富山で対バンしたりしていて。CHAIの解散が2024年の3月で、(フクダ)ヒロアくんの休養が発表されたのがその年の5月の頭だったんです。私が最初にサポートをさせてもらったのが5月中旬の『ラブシャ』(『SPACE SHOWER TV 35th ANNIVERSARY SWEET LOVE SHOWER 2024』)で、CHAIが解散して2カ月後には羊文学の後ろにいさせてもらってました。今思うと不思議な感じがしますね。
――サポートで参加した当初は、どんなことが記憶に残っていますか?
YUNA:私は純粋に楽しかったっていうのがいちばん強くて。初めてのゲネプロの1曲目、サウンドチェックみたいな感じで「永遠のブルー」を演奏したときに、モエカちゃんがこっちを向いて、「楽しい!」って言ってくれたのが嬉しかったです。そのタイミングではまだモエカちゃんとも(河西)ゆりかちゃんともじっくり話をしたことがあるわけじゃなかったんですけど、もっとたくさんコミュニケーションを取りたいと思ったし、サポートドラマーとして、どう向き合っていくかを最初に考えさせられたタイミングでもありました。
――羊文学のライブは基本的に3人の音だけで成立していて、昨年の日本武道館のような大きな会場でも、不足感がないのが素晴らしいなと思います。
YUNA:それは私も思います。歪みの重厚感もすごいし、同録を聴くと自分でも「この音、3人で出してるんだ」みたいに思う瞬間はありますね。ドラムで言うと、去年はRogersっていうメーカーのドラムセットを使わせてもらっているんですけど、それはローディーさんとドラムテックさんが共同で買ったドラムセットだそうで。ちなみに、最近はGretschに変わってます。あと、ドラムテックさんと「こっちのシンバルのほうが広がりがあって素敵かもしれない」みたいな細かい話し合いをして、今のシンバルの並びになっていたり、そういう過程を経て今の音ができていて。去年のアルバム(『D o n’ t L a u g h I t O f f』)に入ってる「そのとき」と「未来地図2025」ではシーケンスを使ってたりもするんですけど、基本的には「3人の音でやる」っていうところもすごくかっこいいなと思いながら、いつもモエカちゃんとゆりかちゃんの背中を見てますね。
――ライブで演奏するのが好きな曲/楽しい曲を挙げてもらえますか?
YUNA:楽しい曲はいっぱいあるんですけど……ハッとした曲で言うと、『12 hugs (like butterflies)』に入ってる「honestly」は、初めてやらせてもらったときに「これやったことないビートかも」と思って。淡々とストイックに進んでいくんですよ。フィルインがいっぱい派手にあるというよりはビートに徹していて、叩いてるとたまに途中でゲシュタルト崩壊しちゃうときもあって(笑)。モエカちゃんに聞いたら、「honestly」のビートはLogicのAIが作ったものをそのままヒロアくんが叩いたものらしくて。「だから難しいんだ!」って、すごくハッとしましたね。毎回モエカちゃんのデモにはベースとドラムのベーシックが入っていて、そこには明確なビジョンがちゃんとあってかっこいいなと思ってます。




















