連載「lit!」第20回:RADWIMPS、BUMP OF CHICKEN、ASIAN KUNG-FU GENERATION……アニメ×ロックの新たな化学反応

SUPER BEAVER「ひたむき」

 大前提として、この曲は『僕のヒーローアカデミア』の物語のために作られた楽曲であるが、「ひたむき」というタイトルを見た時、これ以上に正しくSUPER BEAVERというバンドの本質を射抜いた言葉は他にないのではと感じた。そして、〈どれだけ面と向きあっても  想いすれ違うかもしれない/じゃあ意味がないと嗤うかい/いや、意志を持って笑いたい〉〈いつだって今日が人生のピーク  超えていけ/踏み出す人の  真ん中にある  決意は未来だ〉といった同曲に散りばめられた数々の「ひたむき」な言葉に触れて、その確信はさらに深いものになった。SUPER BEAVERは、自分たちの音楽を信じる一人ひとりの“あなた”に、誠実に、まっすぐに向き合い続けているバンドだ。また、何度も逆境を乗り越えながら、その度にバンドとしての地力を高め続けている愚直でタフなバンドである。この曲で歌われている一つひとつの言葉たちは、今一度4人のバンドとしての信条を高らかに鳴らした決意表明のように響いていると感じる。まさに渾身の一曲であり、今後、彼らの新しい代表曲の一つになっていく予感がする。

 同曲のサウンドに耳を傾けると、間奏部分にシンガロングのパートが挿入されており、また2番のAメロでは手拍子の音が大々的にフィーチャーされている。そして、アコースティックギターによる落ちサビを経て、ラストに向かって幾度となくテンションを高めていく展開は非常にドラマチックで、シンガロングでラストを締め括る楽曲構成に胸が熱くなる。いつか再び、かつてのようなライブ空間を完全に取り戻すことができた時、この曲は、観客のシンガロングと手拍子が重なることで何倍も何十倍も化けるはずだ。その輝かしい未来のフロアの光景が、はっきりと想像できる。4人は、その日が必ず来ることを信じながら、これからも「ひたむき」にステージの上に立ち続けていくのだと思う。

『僕のヒーローアカデミア』ヒロアカ6期OP映像(ノンクレジット)/OPテーマ「ひたむき」SUPER BEAVER/MY HEROACADEMIA 6th Season OP

ずっと真夜中でいいのに。「夏枯れ」

 ずとまよの各MVは、そのどれもがアニメ作品として秀逸で、それぞれに深く豊かな世界観がある。各楽曲の歌詞と合わせて、それ単体で一つの物語を堪能できる仕上がりとなっていて、そうしたずとまよの楽曲が、他のクリエイターが創り出す物語と重なった時の強度はさらに高いものになる。例えば、映画『約束のネバーランド』の主題歌となった「正しくなれない」は、『約ネバ』という物語の真髄に迫る上でのガイドとしての役割を果たしながら、ずとまよの表現の本質を凝縮した特濃な楽曲(&MV)でもあった。タイアップ作品に寄り添いながら、同時に自身の表現を高い次元で両立させるずとまよチームのクリエイティブ力にはいつも驚かされるばかりで、今回の『雨を告げる漂流団地』の主題歌「消えてしまいそうです」、および挿入歌「夏枯れ」において、そうした手腕はさらに冴え渡っている。

 挿入歌「夏枯れ」の制作において、ACAねは、「季節が暮れるたび枯れるたびに想いを馳せてしまうような作品に浸りながら新たな夏の曲を作らせていただきました」(※3)とコメントしている。実際に同曲は、『雨を告げる漂流団地』の物語が描き出す切ないノスタルジーを最大限に増幅させる役割を見事に担っていて、ACAねが誇るソングライティングの精度の高さを改めて思い知らされる。さらに特筆すべきは、ずとまよのYouTubeチャンネルで公開されている「『夏枯れ』Special Movie」だ。このムービーにおいては、『雨を告げる漂流団地』の映像が大々的にフィーチャーされているが、一方、ずとまよのMVにおけるお馴染みのキャラクターたち(にらちゃん、うにぐりくん)が登場しており、あくまでも、ずとまよの世界観を基軸とした映像作品になっている。つまり、自身のフィルターを通して『雨を告げる漂流団地』の真髄を射抜く作品となっていて、映画のメッセージを多角的に伝えることに成功している。極めて批評性の高いコラボレーションだと思う。映画を観た方は、ぜひ、この「Special Movie」も合わせてチェックしてみてほしい。

ずっと真夜中でいいのに。『夏枯れ』Special Movie (ZUTOMAYO - Summer Slack)

※1:https://realsound.jp/2022/09/post-1138160.html
※2:https://realsound.jp/2022/09/post-1133951.html
※3:https://www.hyoryu-danchi.com/news/detail/?id=44

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